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[No.1666]

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「表紙」2017年03月30日[No.1666]号

父娘日和

父娘日和 51


陶芸家 松島 朝義さん
モデル、豆腐よう生産者 松島 よう子さん

伝統でつながる絆

 県内外で高い評価を得ている陶芸家の松島朝義さん。釉薬(ゆうやく)を使わずに土と火にこだわった作品作りを40年以上続けている。色の違う泥状の土を器の上で混ぜる独自の手法「墨流し手」を用いた大皿や茶碗、壺、オブジェ、酒器などが陶房に所狭しと並ぶ。娘のよう子さんは東京を拠点にモデルとして活躍する一方、豆腐よう生産者の顔も持ち、父の南蛮甕(がめ)で漬ける豆腐ようを県内外に販売している。ものづくりに真摯(しんし)に向き合う姿勢は父親譲りだ。



独学で陶芸の世界へ

 現在首里に工房、恩納村に窯を構えて作陶に励む松島朝義さん。もともと焼き物とは無縁の生活を送っていた。高校卒業後、国費・自費の留学生として東京の大学に進学。法律を専攻した朝義さんは、在学中は復帰前の沖縄闘争に身を投じた活動家でもあった。

 焼き物の世界に入ったのは27歳のとき。骨董(こっとう)市で出合った喜名焼に魅せられたのがきっかけだ。大卒者を弟子に迎える陶芸家はいなかった時代。どこにも属さず、独学で陶芸を学ぶ道を選んだ。以来、土探しから窯焚きに至るまで全ての工程を1人でこなしている。

 「使えない土はない」という朝義さんは、沖縄の土と火そのままの魅力を引き出す作品を追求してきた。約20年前から始めた独自の技法「墨流し手」は、焼き物に向かない土や失敗した土を水で溶き、器に滑らせ模様を作ることを思い付いたことから誕生した。

原始的な技法を追求

 1982年には沖縄で一番古い様式といわれる穴窯を2カ月かけて自ら建てた。穴窯は炎がまっすぐに器に当たり、電気やガスの窯のように炎を調整できない。「均一に焼き上がらなければ不良品という人もいるが、完璧に温度を調整され焼かれているものは、土の質感が消されて、どこかで無理しているような感じがする」と語る。火の当たり具合で異なる表情を見せる土に魅力を感じるという。

 毎日のように陶芸漬けの生活を送る朝義さん。東京を拠点にモデル活動をしている娘のよう子さんは、そんな父を帰省の度に散歩に連れ出す。「私がいないときは一日中家から一歩も出ない。小さいころから作陶しているかご飯を食べているところしか見たことない」と笑う。

 東京の大学に在学中、20歳で人気女性誌「non︲no(ノンノ)」の専属モデルとしてキャリアをスタート。現在も化粧品カタログや女性誌で活躍する。

秘伝の味受け継ぐ

 母方の先祖が琉球王朝時代から豆腐ようの作り方を代々伝承してきたという家系で、よう子さんは小さいころから豆腐ように親しんできた。「祖母が亡くなり、今は伯母が受け継いでいるが、継ぐ人がいない、もったいないと思った」と豆腐よう作りを始めたきっかけを話す。約10年前から帰省のたびに「古式豆腐よう与儀」を営む伯母の与儀華江さんから指導を受け、2015年に「豆腐よう松島」として独立。現在豆腐ようを仕込みに3カ月に1度のペースで沖縄に帰省している。

 機械を使わず、伝えられた秘伝の製法を用いる。島豆腐を天日干しにして父の南蛮甕に漬け込み発酵させる。気温や湿度を見ながら素材と向き合う、手間がかかる作業だ。東京に製品を送り自ら管理し販売している。沖縄での仕込みにこだわるのは「同じ材料を使っても沖縄で作るのと味が全然ちがう」という経験からだ。

 父と同じくすべてを1人でこなすよう子さん。飛び込み営業も経験し、追い帰されたこともある。それでも現在、ネットでの販売の他に都内の4店舗が商品を扱ってくれるようになった。

 「モデルは消費される側。クライアントやヘアメーク、カメラマン、洋服があってこそで、自分だけで仕事を作れない。ものを作ることで精神的にバランスがとれた」という。

 朝義さんの陶房の片隅には小さな器がたくさん入った箱があった。豆腐ようのための器だ。よう子さんが豆腐よう生産を始めたと聞いて作り始めたものだ。今まで娘の生き方に口出しをしたことのない父の思いが垣間見える。

 「モデル業と豆腐よう作りの両立に今後も打ち込んでいく」というよう子さんに、「死ぬまで陶芸を続ける」という朝義さん。父娘は時流に流されず、昔ながらの伝統の技に磨きをかけていく。 

(坂本永通子)

(おわり)

プロフィール

まつしま・ちょうぎ
 沖縄生まれ。1973年中央大学法学部卒業。74年作陶を開始。79年第2回現代沖縄陶芸展銅賞受賞。85年第7回沖縄県工芸公募展最優秀賞受賞。90年第21回現代沖縄陶芸展無鑑査認定。98年第45回日本伝統工芸展入選。2000年第20回西日本陶芸美術展大賞受賞。07年第41回沖縄タイムス芸術選賞大賞受賞など受賞歴多数。03年日本工芸会正会員に認定。

まつしま・ようこ
 那覇市生まれ。大学入学時に上京し、在学中にモデルとしての活動をスタート。ファッション誌「non-no」の専属モデルを経て、女性誌や化粧品カタログなどで活躍。8年前から伯母に豆腐ようの作り方を習い、2015年「豆腐よう松島」として独立。県内外で豆腐ようを販売している。

松島朝義陶房 ☎ 098-885-8595
豆腐よう松島HP http://tofuyo.shop-pro.jp/
よう子さん所属事務所HP
http://www.front-ag.co.jp/models/m_yoko.html

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松島 朝義さん 松島 よう子さん
作品を背に並ぶ松島朝義さん(右)と娘のよう子さん。子どものころは父の陶房に入れてもらえなかったというよう子さん。東京の住まいでは父が制作した器を使っている=那覇市首里当蔵の松島朝義陶房
写真・村山 望 
松島 朝義さん 松島 よう子さん
幼稚園入園式の日に写真に写る朝義さんとよう子さん
松島 朝義さん 松島 よう子さん
同じ場所に並ぶ現在の2人
松島 朝義さん 松島 よう子さん
島豆腐を天日干しするよう子さん
松島 朝義さん 松島 よう子さん
朝義さんの器の上に載った豆腐よう。口に入れると泡盛の豊かな香りとまろやかな味が広がる
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