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[No.2086]

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「島ネタCHOSA班」2025年05月08日[No.2086]号



 この間ホームセンターで「おきなわ黒糖防災缶」なるものを見つけました。沖縄産の防災グッズって珍しいなと思いつつ、市販の黒糖とは何が違うのでしょうか?ぜひ調査お願いします 

(那覇市 甘党男子)

沖縄黒糖を使用した防災グッズ!?

 5月10日は黒糖の日!ということでこの質問を採用させていただきました。それにしても「おきなわ黒糖防災缶」ですか。黒糖が防災食として使われているなんてワクワクしますね。さっそく調査員は話を聞きに、那覇市壺川にあるJA会館に向かいました。

黒糖には賞味期限がない!?

 迎えてくれたのはJAおきなわ農業振興本部マーケティング戦略室の栢野英理子(かやの えりこ)副室長と萩原欣(はぎわら やすし)さん。

 商品誕生のきっかけは2020年。沖縄本島で台風9号が猛威を振るった一方で、沖縄黒糖を生産する8つの離島は台風被害を逸れ、サトウキビが想定を上回る豊作となったといいます。

 「喜ばしい一方で、サトウキビは時間がたつと劣化してしまうため、新鮮なうちに搾汁・加工する必要があるんです。全国での需要が年間7 0 0 0〜7 5 0 0 ㌧のところ、9000㌧台というのが4年続き、JAの倉庫も流通在庫もあふれそうでした」と栢野さんは当時を振り返ります。

 さらにそのタイミングでコロナ禍が直撃し、土産品や贈答品としての流通も激減。JAおきなわは「この在庫を宝の山と捉え直そう」と、黒糖本来の価値に立ち返りました。

 「食品原材料としての黒糖には賞味期限がないんです。しかも栄養価が高く、アレルギーの心配もない。防災に使えるのではないか?」

 そんな発想から生まれたのが加熱や水なしで食べれる「おきなわ黒糖防災缶」でした。加熱加工により雑菌の繁殖を防ぎ、従来の黒糖が1〜2年の保存期間だったのに対し、最大4年の保存期間を実現。現在は5年保存を目指し、官能試験や耐久テストも進行中です。

 「避難所では甘いものが心の支えになる。しかも、カップ麺など炭水化物中心の食事でミネラル不足に陥りがちなんです。黒糖には鉄分やカリウムなどが含まれていて、体調管理にも役立ちます」と栢野さんは語ります。

地元のものを備える

 防災用黒糖に使われているのは、JAおきなわが管轄する5つの島(伊平屋、伊江、粟国、小浜、与那国)で作られた黒糖のブレンド品。「5つ星プロジェクト」と名付けられたその取り組みは、豊かな甘さと島々の個性を融合した、まさに”宝の味“。石垣市や県内の介護施設などでの導入も進んでおり「地元のものを備える」という安心感も評価されています。

 「保存期限が近づいたらおやつとして食べてください。黒糖は調味料としても万能ですので料理に使うのもオススメです」(萩原さん)

 「昔から離島の産業を守っている黒糖が、県民の安心や、いざという時のお役に立てたら、こんなにうれしいことはないですね」(栢野さん)

 非常時に心を落ち着ける一粒として活躍するおきなわ黒糖防災缶は、県内のJ A おきなわファーマーズマーケットやAコープで発売中。黒糖が果たす役割はかたちを変え、沖縄から静かに広がり始めていると思った調査員でした。



JAおきなわ農業振興本部マーケティング戦略室
那覇市壺川2‐9‐1(JA会館)
☎098‐831‐5167(担当・栢野)

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“沖縄黒糖を使用した防災グッズ!?"
(左から)JAおきなわ農業振興本部マーケティング戦略室の栢野英理子副室長と萩原欣さん
“沖縄黒糖を使用した防災グッズ!?"
「おきなわ黒糖防災缶」の中身。お年寄りや子どもでも食べやすいように小粒サイズでやわらかく加工しています
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