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[No.1713]

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「島ネタCHOSA班」2018年02月22日[No.1713]号

宮良言葉が学習できる番組

 「メーラムニ」(宮良言葉)の学習者向けポッドキャスト番組があると聞きました。アメリカ人と宮良出身者が作っているそうです。ぜひ調べてください。

(宜野湾市 ハンクさん)

宮良言葉が学習できる番組!?

 「メーラムニ」(宮良言葉)とは石垣市宮良で話されている言葉。学習者向けの「ポッドキャスト」(インターネット上で音声番組などを配信するサービス)があるとは初耳です。さっそく制作者のもとを訪ねてみました。

現地調査重ねて

 出迎えてくれたのは、クリストファー・デイビスさんと半嶺まどかさん。宮良言葉の学習者に向けて、昨年5月13日に番組を開始し、これまで8回配信してきたといいます。番組名は「おーりたぼーり」。宮良言葉で「いらっしゃいませ」という意味だそう。

 自らを「言語学オタク」と呼ぶアメリカ出身のデイビスさんは沖縄に来て約6年。琉球大学法文学部国際言語文化学科の准教授として、八重山語を研究しています。日本語はもちろん、しまくとぅばも話します。

 父親が石垣市宮良出身の半嶺さんはフィンランドのラップランド大学大学院の博士課程に在籍中。言語教育を勉強しているといいます。二人とも言語学の専門家です!

 宮良言葉に興味を持ったきっかけは?

 「アメリカで日本語をテーマに博士論文を執筆中、沖縄には独特な言葉があると知り興味を持ちました」とデイビスさん。その後来日し、京都大学で宮古島の池間の言語を研究していく中で、八重山言葉に出合い専門的に研究するようになったそう。

 一方、半嶺さんは、「英国スコットランドの大学院で言語教育法を学んでいたときに、琉球の言葉が少数言語であることや消滅の危機にひんしていることを知り、ショックを受けた」といいます。

 琉球諸語の中でも宮良言葉を含む八重山語は特に危機的状況にあるそう。デイビスさんも危機的な状況にあるのをじかに感じ、何かできることはないのかと考えていたときに志を同じくする半嶺さんに会い、この活動を始めるようになったとか。

 教材などはたくさんあるのでしょうか?

 「沖縄本島の言葉については入門書はありますが、八重山語に関してはほとんどありません」というデイビスさん。宮良言葉の場合、本島の言葉に比べると教材は少ないといいます。

 自ら資料を作っているという二人は、実際に現地に赴き調査をしていると話します。「6年前から現地の話者に協力してもらい、音声や動画を録りためてデータにしてきました。言い方や文法が分からなければ、現地に確かめに行きます」とデイビスさん。

 頻繁に石垣島を訪れているというデイビスさんと半嶺さん。地道な作業を続けているんですね。

教材制作が目標

 二人は宮良言葉を実際に子どもに教える活動もしているといいます。昨年は現地の小学校を訪れ、ディズニー映画「アナと雪の女王」の主題歌「レット・イット・ゴー」を宮良言葉に訳して吹き替えの歌を披露したそう。

 「子どもたちは、何も指導しなくても字幕を見ながら自分から進んで一緒に歌っていました」とデイビスさん。「子どもたちは先入観がなく、純粋に興味を持ってくれます。子ども向けの歌や、童話なども、音声と文字をまとめて小学校に寄付したいです」と半嶺さん。

 番組内でも歌などのコンテンツも増やしていきたいと考えているそうで、次回のエピソードでも歌を紹介する予定だそう。

 「将来的には宮良言葉や他の八重山の言葉の教材を作りたい」とデイビスさんは意気込み、「音声を聞きながら学べるような教材にしたい」と半嶺さんも続けます。

 工夫を重ね継承の努力を始めた二人。「けーらなり、みしゃろーるんねーら?(みなさん、こんにちは)」のあいさつで始まる番組では先生役のデイビスさんと生徒役の半嶺さんがほのぼのとした語り口で宮良言葉を紹介していきます。みなさんも二人の思いに触れてみては。



おーりたぼーり

http://ryukyulang.org/ooritaboori/



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宮良言葉が学習できる番組
クリストファー・デイビスさんと半嶺まどかさん
宮良言葉が学習できる番組
番組を収録中の二人。番組は約20分。半嶺さんが作った手書きの台本に沿って進めていきます
宮良言葉が学習できる番組
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