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[No.1712]

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「島ネタCHOSA班」2018年02月15日[No.1712]号

山水画のような風景の集落

 本部半島の山の上に本部町字大堂(うふどう)という小さな集落があります。二つの池があり、周りはでこぼことした小山に囲まれ、まるで中国の桂林のような山水水墨画の世界です。池のほとりにたたずむと沖縄ではないような不思議な空気感があり、一度訪れると忘れられません。この集落について調査をお願いします。 

(那覇市・椿五十朗さん)

山水画のような風景の集落!?

 「水墨画の世界に入り込みたい!」とワクワクしながら調査員は車のアクセルを踏み込み、いざ出発です。

本部町大堂集落へ

 まずは、今回訪れる集落について確認しておきましょう。本部町の北側で今帰仁村と接する大堂集落は18世帯43人が暮らす山の上の集落です。四方を山に囲まれた盆地で、北山王の居城だった今帰仁城跡よりも高い標高に位置しています。

 そしてなんと言ってもカルスト地形が特徴的。カルスト地形とは石灰岩が雨水や地下水に侵食された地形の総称で、それぞれに特徴的なシルエットを楽しませてくれます。

 隣接する山里地区から大堂地区に広がる標高150〜200メートルの一帯は国内唯一の円すいカルスト地形。2000年には県教育委員会が「ランクⅤ」(世界的な重要度)の地形であると報告しています。

 山々にはそれぞれ名前が付いています。昔、本土に行く人々を山の上から見送った「タビウクイモー」、この場所にお城を造ろうとしたことがあったから「ウフグシクムイ」、腰を曲げた老人に見えるから「クシマガヤームイ」など、キャッチーなネーミングセンスが光ります。

 集落内には「ヤマラー」「イチンモー」と呼ばれる2つの池があります。地域の方によるとヤマラーは1940年前後に、イチンモーはそれよりも前からあったそう。イチンモーはもともとは本部と今帰仁の境界として掘られた意味合いもあったようです。現在の境界線は別の所に引かれています。

 県道115号は、このカルスト地形を縫うように通っており、その雄大な景色を楽しむことができます。寒くて海には入れないこの時期、皆さんもドライブや散策をしてみては? カルストの山々にはおしゃれなカフェもたくさんありますよ。

花と緑に囲まれた盆地

 いよいよ現地に到着した調査員。公民館ではニコニコした表情がすてきな字長の具志堅良子さん(63)が出迎えてくれました。具志堅さんの紹介で、集落巡りのスタートです。

 集落の主産業は農業。キクやサトウキビ、野菜類の他、肉牛の生産も盛んです。

 ちょうど公民館近くの農場で作業をする若い夫婦がいました。名護市に住む石川清竜さん(29)。地元の大堂で数カ月前にキク栽培を始めました。リラックスして、地元でキクに向き合う日々を過ごしています。農家のお父さんへの「親孝行のつもりで」とほほ笑み、「とにかく仕事を覚えている段階です」と話します。未来の大堂を担う頼もしい人材ですね。

 清竜さんの弟の清嗣さん(27)もまた、夫婦で協力しながら母牛と仔牛を合わせて約100頭を育てています。ここで育った牛たちの大半は肥育前の素牛(もとうし)として県外に出荷され、それぞれ大きくなっていきます。仕事の楽しさとして「仔牛が無事に産まれた時」を挙げた清嗣さん。大堂から巣立った仔牛が国内外においしさを届けています。

 「大堂には、人より牛が多いですよ」と笑うのは、集落に住む上間宏さん(65)。

 上間さんは山々に自然に増えて咲き誇る山ユリの美しさに魅せられ、5年前からある祭りを企画、運営しています。その名も「もとぶカルスト 山ゆり祭り」。毎年4月下旬から5月中旬まで、雄大な山々に約5千輪の花々が咲き誇る時期に合わせ、その美しさを楽しむ祭りです。

 「定年した後、どんどん自然に増えていくユリを見てきれいだなぁと思ってですね」。大堂に生まれ育って60年以上経っても、地元の魅力を発見し続ける気持ちは色あせていません。

 ことしの山ゆり祭りは5月3日(木・祝)に開催予定。大堂と山里の両地区内6カ所に、花見ポイントもばっちり用意されています。花や緑に360度囲まれた盆地ならではの景色を堪能したいと思い、集落を後にした調査員でした。



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山水画のような風景の集落
大堂地区のドローン写真。四方を山に囲まれた独特の地形であることが分かります=2017年夏ごろ(上間宏さん提供)
山水画のような風景の集落
大堂の山々にはその特徴から名前が付いており、一番右はタビウクイモー、右から2番目はマングシク
山水画のような風景の集落
大堂で飼育される母牛
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