沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1685]

  • (金)

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「島ネタCHOSA班」2017年08月10日[No.1685]号

お米のギフト、沖縄だけ

 沖縄では、お中元やお歳暮の品にお米をよく贈りますよね。これまで当たり前だと思っていたら、県外出身の同僚に「お米をギフトとして贈るのは沖縄だけだと思う」と言われました。本当なんですか!?

(宜野湾市 ウェイクアップ大工さん)

お米のギフト、沖縄だけ!?

 お米、ギフトでいただくとうれしいですよね。旧盆が近づくと、贈答用の化粧箱に入ったお米がスーパーなどに並ぶのも、おなじみの光景です。

 でも、これって沖縄だけの習慣なの? だとしたら、なぜ沖縄でこんなに広まったのでしょうか? 。

銘柄米がきっかけに

 この謎を解明すべく、調査員が訪れたのは、浦添市勢理客の沖縄食糧株式会社。お米が目覚めて踊りだすあの天気予報の提供元としておなじみですね。

 出迎えてくれたのは、米穀部米穀課主任の識名盛史さん。

 「沖縄食糧には、よく県外の業者さんがいらっしゃるのですが、皆さん、お米をギフトとして贈りあう光景を珍しがりますよ。本土の業者さんで、お米のギフトを取り扱っているという方にはまだお会いしたことがありません」

 うーむ、やっぱり沖縄だけの習慣でしたか!

 「沖縄食糧が、ギフトとしてお米の販売を始めたのは、昭和57(1982)年。じつは、この時期に、ササニシキやコシヒカリといった銘柄米が販売できるようになったんです。それまでは政府米しか販売できなかったので、銘柄米を食べたいと思っても、買えなかったんですよ」

 なんと! でも、やっぱりおいしいお米、食べたいですよね。

 「おっしゃる通り、ニーズはあったんです。それで、銘柄米が販売できるようになったタイミングで、ギフトとしていいお米を贈りたいという要望に応える形で贈答用のお米が登場したようです」

包装方法にも工夫

 銘柄米の流通開始とともに登場した贈答用のお米。ただ、贈答用として売り出すには、クリアしなければならない課題があったといいます。

 「ひとつには、化粧箱に入れるためには、真空包装を行わなければなりませんでした。もうひとつは、高温多湿の沖縄で、長期保存を可能にしなければならなかったんです」

 うーむ、確かに。贈答用のお米がすぐ劣化したら困りますもんね。

 「そこで、沖縄食糧は製造メーカーと協力で、『冬眠包装』という技術を開発し、特許を取得しました。これは、お米の袋のなかに炭酸ガスを詰めるという技術です」

 炭酸ガスを入れるとどうなるんですか?

 「炭酸ガスを詰めて一晩置くと、お米のタンパク質が炭酸ガスを吸収し、袋の中が真空状態になるんです。実際にその処理を施した袋を見てください」

 と、識名さんが示した袋を見ると、確かに袋の中には空気がなく、カチコチに固くなっています(右の写真参照)!

 「そのままだと凸凹がありますが、成型機にかけることで、きれいな長方形になります。沖縄食糧では、成型機を導入してから、化粧箱を少し小さくできました」

 化粧箱は組み立て式。人の手で丁寧に組み立て、化粧箱にお米の袋を詰める作業も手作業で行っているそう。

 「旧盆の時期は、1カ月ほど前から社員総出で包装作業に励んでいます」

 社員の皆さんの頑張りがお米のギフトを支えているんですね。

 「県外では、親戚や身近な人がお米を作っている場合が多く、日常的にもらうことも多いようです。一方、沖縄では、お米を作っている農家が少なく、お米が貴重品だったのも、贈答品になった要因ではないでしょうか」

 お米へのあこがれが形になった、お米のギフト。今年は誰に贈ろうかなぁ〜、と考えながら帰路についた調査員でした。



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お米のギフト、沖縄だけ
識名盛史さん
お米のギフト、沖縄だけ
お米をギフトとして発売を開始してから間もないころの化粧箱。紅型模様をあしらい、はなやかです。当時は、紙製の取っ手がついていました
お米のギフト、沖縄だけ
炭酸ガスを詰め、一晩置いた状態の袋(右)。炭酸ガスがお米のタンパク質に吸収された結果、真空状態となり、カチンコチンに。成型機にかけると、左のようにきれいな長方形になります
お米のギフト、沖縄だけ
現在の化粧箱。組み立て式の取っ手がつき、より便利になっています
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