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[No.1553]

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「島ネタCHOSA班」2015年1月22日[No.1553]号

山の中に「山」という文字

 以前、島ネタCHOSA班の「謎の建物(2014年10月23日掲載)」を読んでから、ずっと気になっていることがあります。沖縄自動車道の名護向け、石川インター手前から見える山の斜面に、ポツンと建つ建物のことです。漢字の「山」に似た建物ですが、いつか確認したいと思っていましたが調べてください。

(那覇市 島ネタ大好物さん)

山の中に「山」という文字!?

 山の中に謎の建物ですか? い〜ですねー。心霊スポットは苦手だけど不思議な形の建物や、こんな所にこんな建物がという、ちょっと変わった建造物が大好きな調査員。さっそく現場へ向かいました。

「山」を探して山道を行く

 依頼者によると、建物は沖縄自動車道の石川インター手前に見えるというので、確認のために車を走らせていると、あった、ありました。高速道路に架かる高山原橋を過ぎた所の、正面の山に白い建物が。確かに「山」という字に見える建物です。

 高速道路は駐停車禁止なので絶好の撮影ポイントを探すことから始めます。目標は車を走らせながら見える場所。ということで高速道路に架かる橋を探したところ、嘉手苅橋、伊波橋、冨祖原(ふそはら)橋の3つを確認しました。

 石川インターを下り、まずは嘉手苅橋へと向かいます。調査員の車にはナビはついておらず、地図と勘だけが頼りです。静かな集落を抜け山道に向かうと「ヌチシヌジヌガマ」という案内板がありました。戦時中、地元住民が避難して1人の犠牲者も出さなかったガマ(洞窟)だそうですが、そこへは寄らず小高い丘に向かい、何とか橋を見つけました。しかし、イメージ通りの写真は撮れません。

 次に向かった伊波橋は住宅街を通り、畑を抜けた所にありましたが、そこでも理想の写真が撮れません。しばらく車を走らせると、畑が広がり牛や豚の鳴き声が聞こえる畜産農家が多い地域に出て、目指す冨祖原橋が見つかり、メーンの写真撮影も成功です。

正体は意外なもの

 写真を撮り終えて、「山」に向かって山道を車で走り、徐々に近づいていくとだんだん正体が見えてきます。途中で見失ってしまいましたが、車は確実に「山」の方向に進み、やがてたどり着いたのが「石川市民の森」。

 1992年にオープンした石川岳の豊かな自然を利用した公園で、現在は「うるま市民の森公園」と呼ばれ、市民の憩いの場所として親しまれています。

 車から降りて、案内板を見ると「山」に見えた建物は展望台と分かりました。整備されたなだらかな道をゆっくりと上ると、見晴らしのいい場所に、目指ざした建物があり、それは「城の展望台」と呼ばれていました。確かに城の形をしており、見かたによっては「山」の形にも見えます。

 というわけで、調査はこれにて終了。ホッとして展望台に上り眼下に広がる風景を眺めていると、今度は「なぜ、お城の展望台?」という、新たな疑問が生まれました。そこで、公園を管理するうるま市の都市計画部都市計画課に電話したところ、管理係・技師の渡具知正史さんが取材に応じてくれるということでした。

 いきなりの訪問にもかかわらず渡具知さんは、いろいろ調べてくれたようでしたが、当時、担当者だった先輩方が全員定年になっていて、「なぜ、お城なのか」ということは、結局、分からないということでした。渡具知さんの専門はうるま市内の全ての公園管理が中心。公園の整備や清掃、遊具の修理などハードの部分を担当しています。それでも、当時、直接担当ではなかった先輩の話を聞いているらしく、老朽化でなくなってしまった遊具やあずまやがメルヘンチックだったことから「憶測ですが、公園のコンセプトがメルヘンの世界で、だからお城の展望台になったのでは」ということでした。

 なるほど、と納得しうなずく調査員に、渡具知さんの上司の新垣勝係長が「あの展望台からは太平洋と東シナ海が一望でき、朝日と夕日が見られるんですよ」といいました。

 山の中の「山」の建物は、メルヘンチックなお城で、朝日と夕日が当たる、隠れたデートスポットとして人気のロマンチックな展望台でもあることを知った調査員でした。

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山の中に「山」という文字
高速石川インター手前、右カーブを曲がった先の山に「山」の文字が
山の中に「山」という文字
山道の途中で見えた。「山」にも見えるが冠にも見える
山の中に「山」という文字
公園の入り口には石川市民の森と刻まれた大きな石が置かれていた
山の中に「山」という文字
渡具知正史さん
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