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[No.1552]

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「島ネタCHOSA班」2015年1月15日[No.1552]号

読み方が違う地名の謎

 最近、本土から移住してきたばっかりなのですが、沖縄の地名が独特でなかなか覚えられません。地元の友達が地名クイズを出すほどです。どうしてこんな独特の地名になっているのでしょうか?

(那覇市 横浜たそがれさん)

読み方が違う地名の謎!?

 この謎を解き明かそうと、沖縄のユニークな地名を題材にした漫画「実話・地名笑い?!話」の著者である南原明美さんにお話を伺いました。

 そもそも、何で沖縄には独特の読み方の地名が多いのかを聞いたところ、「沖縄の地名は、琉球王国時代の書物ではひらがな表記だったんです。その地名に漢字をなかば無理に充てたため、漢字の意味とかけ離れたケースが多くなっていったのです。

 例えば、『とうばる』の由来は『平坦な地』という意味なのですが、『桃原』という漢字を充てたため、いわゆる果物のモモとまったく関係のない意味合いになってしまったのです」

 なるほど! たしかに考えたら沖縄で桃がたくさん実っている原っぱなんて見たことないですね!

 「そうなんです。他に、地名の成り立ちにはいくつかのパターンがあって、地形や地質からくるものがあります。代表的なもので言えば『謝苅(じゃーがる)』ですね。ジャッカルみたいでどこかカッコイイですよね(笑)。

 ここはジャーガルと呼ばれる泥炭岩からできた土壌が地名の由来になっています。地質由来の地名は他に『真地(まーじ・那覇市)』などがあります」

 ほぉ〜これは知的好奇心をくすぐられます。他はどんなパターンがありますか?

 「『西原(にしはら)』など位置関係からくるものもありますね。漢字では「西」とありますが、沖縄の方言ではニシは「北」の意味です。『西原』はかつて首里王府が直轄していた3つの行政区域の1つである「西平等(にしのひら)」に属していて、方角的には首里城から見て北の方にあったことが由来となっています。

 また動植物由来のものとしては、『長毛(ながもう・八重瀬町)』などがあります。「毛」はもちろん『毛そのもの』ではなく、万座毛の『毛』と同じく「原っぱ」の意味です。沖縄の場合、訓読みと音読みが混在しているので、さらに読みづらさも倍増ですね!」

同じ表記で違う地名?

 さすがに掘れば掘るほどどんどん出てきますね。そして、南原さんの回答の瞬発力! 圧巻です。

 他にも、「勢理客」も、浦添市だと「じっちゃく」、今帰仁村と伊是名村では「せりきゃく」と呼んでいるように、沖縄には同じ表記なのに読みが違うというものが多いですよね?

 「実は由来は似たようなものなんです。どの地域もかつては海が近く、魚を捕る罠の『ジリカク』から発音の変化で『ジッチャク』になったという説があります。発音由来のジッチャクが浦添の読み、表記が由来となったセリキャクが今帰仁と伊是名の読みといった感じでしょうか」 なるほど〜。地名の漢字が同じだと、その元となっているひらがな表記は一緒。ということは由来も同じものが多いというわけですね。合点がいきました!

ときめく地名とは?

 中学時代から周りはアイドルに夢中になる中、ずっと地図や道路標識にワクワクしているような地名少女だったという南原さん。

 それではここで、そんな南原さんの心に刺さった地名ベスト3を発表しましょう。

 1位→仲順(ちゅんじゅん・北中城村)「音読みがカッコいい! 頭良さそうに見える」 2位→白保(しらほ・石垣市)「イメージ的にも白い砂浜が似合いそう!」 3位→知花(ちばな・沖縄市)「美人になれそうな気がする地名」

 知識豊富なわりには女性らしく右脳のひらめきを重視したランキング発表でした!

 いかがでしたでしょうか、沖縄の地名に関するアレコレ。地名クイズを出す際の補足情報としてぜひ活用ください。 そしてこの記事をパソコンで入力している最中も、独特な読み方をする地名の変換がたびたびうまくいかず・・・。 パソコンをよく使う人には、沖縄語辞典をインストールしておくことをお勧めします。

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読み方が違う地名の謎
南原明美さん
読み方が違う地名の謎
「沖縄の地名」に関する笑い話を、楽しい解説を交えて描かれた作品
読み方が違う地名の謎
浦添市の勢理客(じっちゃく)。1996年に正式な読み方に登録された
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