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[No.1534]

  • (金)

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「島ネタCHOSA班」2014年09月04日[No.1534]号

陸で競うハーリー

 県内各地で繰り広げられている伝統行事のハーリーってありますよね? 海で競漕(きょうそう)するものだと思っていたのですが、読谷村に地面の上でハーリーをやる地域があると聞きました。調べてもらえないでしょうか?

(おいっ子命・30代女性)

陸で競うハーリー!?

 最初聞いた時は、何らかのとんちではないかと耳を疑ったものですが、火のないところに煙は立たず。良い大人たちが一生懸命に地面の上でオールを漕(こ)いでる姿を想像しただけでニヤけが止まりません。いざ調査へ!

区民運動会の花形

 そんな伝統行事が本当にあるのか、読谷の知り合いに声を掛けましたが全く情報はつかめず…。しかし、「長浜の公民館で話を聞いたことがある」という有力な情報をキャッチ! 地域のことは地域の大人に、というわけで長浜公民館で区長の當山政昭さんに話を聞きました。

 長浜地区に地面の上で競うハーリーがあるってうわさを聞いたのですが、本当ですか?

 「あぁ〜、毎年夏にやっている、長浜区民運動会の種目『地バーリー(ジーバーリー)』のことかねぇ」

 つかめました! 区民運動会の花形種目として「地バーリー」という名で行われているとのこと。

 具体的にはどのような競技なのですか?

 「軽トラックのギアをニュートラルにし、各班を代表する30〜40代の猛者4人が荷台の上に乗り、竹の棒をオール代わりに地面を漕ぎます。真っすぐ走らせるために運転手も必要なので、1チーム5人体制。距離は運動場の端から端まで70mくらいでしょうか。2分ほどで決着がつきます」

 なぜか目に浮かぶシュールな光景。時速にすると約2km強。人間が歩く速さが時速約4km。いかにジワジワ進んでいるかが分かります。

力入った男の祭り

 自身もかつては競技に参加していた當山さん。うまく進むコツはあるのでしょうか?

 「海上のハーリーと同じようにリーダーがいて、その掛け声に合わせることですかね。『ハイ! ハイ!』っていう声にタイミングを合わせるんです。チームワークが試されますよ」

 なるほど、地域のコミュニティーの団結力が結果として出るわけですね。

 いつから行われているのでしょうか?

 「運動会自体はその前から行われているのですが、地バーリーは15年くらい前からですかね。メーン種目として一番最後にやっています」

 誰が言い出したのかは覚えていないそうですが、「楽しそうだからいいんじゃない?」と周囲から反対もなく、始まったそう。優勝賞品は地元の泡盛、残波一升が贈られ、夜は美酒を飲むのだとか。

 これまでハプニングとかありましたか?

 「力を入れすぎた結果、いきおい弾んで軽トラックから落ちてしまう人もいますねぇ」

 揺れる心配のない陸の上で車の荷台から落ちてしまう力の入りよう、これはまさに男の祭りそのもの!

 個性的な種目をそろえている長浜自治会。他にどんな競技があるのでしょうか?

 「オープニングのグラウンドゴルフを皮切りに、防災訓練の一環としたバケツリレーがあります。これはスピードと残った水の量を競うんです。老人会の踊りなど余興ももちろんありますよ」

 思わず長浜に引っ越したくなる個性的な種目の数々。都会では失われてしまった地域のつながりを感じます。ただ残念なのが、今年の開催は台風12号の影響で中止になってしまったということ。ぜひ来年の長浜地区運動会では地バーリーを観客として応援したいものです。そして、参加したい人は今のうちに読谷村長浜に引っ越しの準備を!



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陸で競うハーリー
當山政昭さん
陸で競うハーリー
2013年の地区運動会の様子。5班に分かれて競います=読谷村長浜の長浜区民運動場(写真提供・長浜公民館)
陸で競うハーリー
男たちの真剣勝負。勝利の鍵はチームワーク!
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