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[No.2018]

  • (木)

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「表紙」2024年01月11日[No.2018]号

土人形とコラージュでうちなーデザインのめくるめく世界へ
デザイナー 斎藤秀二さん

沖縄のデザイン感覚を作品に

 「オキナワン・ブルータリズム」を掲げ活動するデザイナー・斎藤秀二さん。土人形とコラー ジュ作品を手がけている。ブルータリズムとは、直感的な素材遣いを特徴とする建築分野の一 様式。斎藤さんが沖縄で暮らす中で感銘を受けた、地域の人々の創造力に通ずるものがある そうだ。イメージの源泉や制作の様子について話を聞いた。

 1 9 9 5 年、東京から宮 古島に移り住んだ斎藤秀二 さん。移住当初は農業に挑戦 したほか、イラストとデザイン の仕事をしていた経験を生か し、お土産品の開発をしてい た。現在の活動につながる転 期は、多良間島の「八月踊 り」(国指定重要無形文化財) が宮古島で特別公演された 時だった。

弥勒の多様性

 「赤、青、黄色の衣装、チョ ウチョが舞っているようなかぶ り物。祭りの色や形に圧倒さ れました」

  そう振り返る斎藤さん。そ こから県内の祭りに興味を持 ち、各地に足を運んだ。特に 心引かれたのは、仮面を着け た登場人物たち。来訪神・ 弥勒(みるく)に代表される 存在だ。色白で耳が大きい、 など共通の特徴を持ちなが らも地域ごとに個性があると 気付いたという。

 

 「芸能の盛んな石垣の白保 は顔立ちがキレイでおごそか な雰囲気」「踊りの中で、オホ ホという登場人物を諭す役割 を持った、西表の干立は少し 厳しい顔つき」「南城市佐敷 津波古は顔も衣装も真っ白。 金色のポシェットからあめ玉 を配ります」

  弥勒の違いについて話す斎 藤さんはとても楽しげだ。祭 りの多様性を表現するため に、始めたのが土人形だった。 絵画よりも立体物の方が説 得力があると感じたためだ。 約 10 年かけてリサーチと制作 を重ね、現在では弥勒だけで なく、獅子、空手、舞踊など さまざまな作品がラインアッ プしている。

建物を再構築

 近年はコラージュ作品に力 を入れている斎藤さん。題材 は街中の建築物だ。市井の 人々の暮らしや営みが見える ものがたまらないのだとか。 「ハジヌバサー」と呼ばれる増 築技法も見逃せないという。

 「コザや伊良部島を回ると ユニークな建物に出合います。 黄金比率やホワイトスペース を取るとか、自分が習ってき た知識では、すぐには理解で きないんです(笑)」

 そんな建築物を分析する ために、コラージュは最適だと いう。コンクリートブロック、 壁のタイル、木製の窓枠といっ た細かい部分も紙で形作り、 「再構築」していく。アレンジ は極力加えない。そうするこ とで、建物を建てた人、住ま う人の目線に近づけると考え ているそうだ。再開発などで、 いつの間にか失われてしまう 風景の記録、そんな意味合い も込めている。

 「強調しておきたいのは、沖 縄で暮らす普通の人のデザイ ン感覚。そこがすごいんです」

 そう言ってほほ笑んだ斎藤 さん。彼のまなざしは伝統文 化や街並みを下支えする、無 名の人々への愛情で満ちてい た。

(津波 典泰)



斎藤秀二さん
instagram:@sui.no.ba
作品に関するお問い合わせはインスタグラムから



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デザイナー 斎藤秀二さん
那覇市首里の自宅兼アトリエで撮影に応じてくれた斎藤秀二さ ん。手にするのは土人形「首里 赤田のみるく様」。細部を捉えな がらも、やわらかい雰囲気にまとめられている。地域の祭りや街並 みで目にするような「沖縄で暮らす普通の人のデザイン感覚」に 夢中の斎藤さん。その良さを発信する作品を作り出している
写真・norico
デザイナー 斎藤秀二さん
各地の弥勒や獅子、ンマハラシー、空手の三戦甕 (サンチンガーミ)、首里劇場、カトリック首里教 会、龍潭のバリケンなど、さまざまな風物を表現し た土人形たち。現実では一堂に会することのない ものだが、眺めているとかわいらしさについ笑み がこぼれる
デザイナー 斎藤秀二さん
コラージュ作品「金武黄楼」
デザイナー 斎藤秀二さん
コラージュ作品「園田の煙草屋」
デザイナー 斎藤秀二さん
土人形「白澤(はくたく)」。 琉球時代の絵師・自了(じ りょう)作「白澤之図」を元 に制作した。原画には描か れてない体の裏部分は、考 察を重ねて斎藤さんがデ ザインした
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