沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1714]

  • (金)

<< 前の記事  次の記事 >>

「表紙」2018年03月01日[No.1714]号

ザ夫婦

ザ・夫婦(み〜とぅ) 47


touch me not デザイナー 中嶋 亮子さん
オリオンビール株式会社 経理部、公認会計士 中嶋 健二さん

違いを認め合う二人

 妻はデザイナー、夫は公認会計士という中嶋夫妻。妻の亮子さん(43)は学生時代から染織を始め、企画営業やデザイナーを経て、2016年に自身の服飾ブランド「touch me not(タッチミーノット)」を立ち上げた。夫の健二さん(47)は32歳で公認会計士の資格を取得。現在はオリオンビール株式会社の経理部に勤める。感性と数字という異質に見える世界で仕事をしている二人だが「お互いの仕事が正反対に感じることはないですよ」と笑う。



デザイナーと公認会計士の夫婦

 亮子さんが作り上げる衣服には、独特の風合いがある。印象的なのは、布地の色の深さ。優しく、柔らかく包み込むような色彩をベースにしつつも、時折はっとするようなビビッドな感覚が顔をのぞかせる。学生時代から染織に取り組んできた亮子さんならではの、ユニークな作風だ。

 亮子さんは琉球絣(かすり)のまちとして知られる南風原町照屋の出身。幼い頃は、機を織る音に囲まれて育ったという。首里高校の染織デザイン科に進学した亮子さんは、沖縄の豊かな染織文化に触れた。「当時は無我夢中で分からなかったけれど、後になって考えると、あの時、先生方にしっかり鍛えられたのが今の自分のベースになっている思います」と振り返る。

 大学は、東京の美術大学へ。染織、テキスタイルデザインの技能を深め、最優秀学生賞を受賞したほか、第3回東京テキスタイルデザイン展では、東京都知事賞・最優秀賞をダブル受賞するなど、その才能を開花させていった。

 卒業後は東京の会社で企画営業、デザイナーなどを務め、デザイン系の専門学校で染織の講師としても活躍したが、32歳の時に帰沖。その数年後、健二さんと出会うことになる。

共通の友人が結んだ縁

 健二さんは東京都の出身。大学卒業後、大手小売チェーン店に勤務していたが、20代後半の時、一念発起して公認会計士を志した。「社会人になってから始めたから、簡単に引き下がれない」という思いで努力を重ね、32歳で資格試験に合格。東京都内の監査法人で5年ほど監査の業務に従事した後、37歳の時に職場の元同僚に誘われ、沖縄で働くことに。健二さんには、もともと東京以外の都市で働いてみたいという気持ちがあったため、トントン拍子で話が進んだという。

 「それまで沖縄にはほぼ縁がなく知り合いもほとんどいなかったので、毎晩飲み歩いているうちに、たくさんの友達と出会いました」

 この時、健二さんが友達になった人たちの中には、亮子さんとも友達という人が多かった。二人が常連だというバーのマスターもその一人だ。

 そのマスターがキューピッド役となり、二人は2012年3月に出会う。すぐに交際を始め、その年の11月には入籍。共に人生を歩み始めた。

互いの仕事 違和感ない

 結婚後、「好きなことをやっていいよ」という健二さんの後押しもあり、亮子さんは再び染織の仕事にのめりこんでいく。

 「染めた布を誰かに使ってもらいたい」という思いから、衣服のデザインも手掛けるようになり、16年には自身のアパレルブランド「touch me not」を立ち上げた。

 亮子さんの作る斬新な感覚の衣服は、県内外で注目を集め、パレットくもじや新宿伊勢丹などで商品の販売が行われた。今月3日(土)〜11日(日)には、那覇市内で初の展示会も開かれ、今後ますますの活躍が期待される。

 「妻は、自分の中の他の人が見ていない部分をのぞいてくる。そこが面白い」(健二さん)、「二人の人間性は真逆。夫はコツコツ努力をするタイプだし、私は短期集中でやるのが得意。でも、違っているから物の見方を広げてくれるし、面白い」(亮子さん)

 それぞれの違いをポジティブにとらえる二人は、「お互いの仕事は、世間から見れば異質に思えるかもしれないけど、自分たちには違和感がない」と口をそろえる。

 記者の印象では、二人にはどこか同じような雰囲気があると感じた。それはきっと、違いを違いとして受け入れつつ、二人はどこかで同じものを見つめているからなのだろう。

(日平勝也)



円満の秘訣は?

亮子さん:  夫は「ありがとう」「ごめんなさい」「いただきます」「ごちそうさま」という基本的な言葉をちゃんと言ってくれる。そこがすばらしいです。 健二さん:  お互いを尊重し合うこと。相手のやりたいことを抑える必要はないと思います。

プロフィール

なかしま・りょうこ: 1974年生まれ、南風原町出身。首里高校の染織デザイン科を卒業後、東京の美術大学を経て東京の会社で企画営業、デザイナーなどを務め、32歳で帰沖。2016年、自身のアパレルブランド「touch me not」を立ち上げる。ウェブサイトはhttp://touchmenot.jp/

なかしま・けんじ: 1970年生まれ、東京都出身。32歳で公認会計士の資格試験に合格し、37歳の時に東京に本社のある監査法人の那覇事務所へ転職。現在はオリオンビール株式会社の経理部に所属

展示会「TOUCH ME NOT SPRING RAIN」
期間=3月3日(土)〜11日(日)12時〜19時
※7日(水)は休み
会場=miyagiya ON THE CORNER
(沖縄県那覇市松尾2-19-39)

このエントリーをはてなブックマークに追加



中嶋 健二さん 中嶋 亮子さん
中嶋亮子さん、健二さん夫妻。バックに垂らされた色鮮やかな布は、亮子さんが染めた「残りの花」という作品。亡き恩師に捧げられた献花を用いて、布に植物のシルエットを浮かび上がらせている
写真・村山望
中嶋 健二さん 中嶋 亮子さん
結婚披露パーティーにて。琉装に身を包む二人
中嶋 健二さん 中嶋 亮子さん
亮子さんのアパレルブランド「touch me not」の衣服。ナチュラルでありながら、華やかさを秘めた色合いが印象的
中嶋 健二さん 中嶋 亮子さん
第3回東京テキスタイルデザイン展で、東京都知事賞・最優秀賞をダブル受賞した亮子さんの作品
>> [No.1714]号インデックスページへ戻る

↑このページの先頭へ戻る

<< 前の記事  次の記事 >>