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[No.1694]

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「表紙」2017年10月12日[No.1694]号

ザ夫婦

ザ・夫婦(み〜とぅ) 28


你好我好(ニーハオウォーハオ)有限公司 代表 伊禮 武志さん
台湾一人観光局・エッセイスト 青木 由香さん

台湾と沖縄をつなぐ二人

 台湾で出会って結婚。現在も台北で暮らし仕事を続ける夫婦、伊禮武志さん(43)と青木由香さん(45)。文化交流をテーマに掲げ沖縄と台湾、そして日本と台湾をつなぐために日々奮闘中だ。「台湾の魅力は?」と聞くと「人」と二人は答える。「温かくて親切。一度台湾に行くとまた行きたくなるのは、人情に触れ楽しい思い出ができるからですよ」という由香さんの言葉にうなずく武志さん。「台湾はもう地元感覚」と現地に寄り添う思いも、夫婦で共有している。



夫婦で文化交流に貢献

 「結婚するとは全く思っていませんでした。作業服を着た丸刈りの太った人と名刺交換をした、というのが初対面の記憶」と笑う由香さん。

 一方武志さんは会って数回目の時に、「彼女を見ていたらオレンジ色の光が走ったんです。結婚を予感しました」と語る。

 武志さんは交際宣言もプロポーズもしないまま周囲の人たちに「僕たち結婚します」と話していたそうで、出会いから2年近くが過ぎた2011年8月、行動に移したという。

 「帰省中に両親に勧められて入籍しました。台湾の人たちに挙式はいつかと何度も聞かれたので、入籍から3カ月後の11月、台北市内で披露宴を行ったんです。10年以上の付き合いがあるデザイナーさんが、お金の心配はするなと言い全て手配してくれました」と由香さん。

 披露宴の会場は文化財として認められている邸宅で、竹とちょうちんで装飾された庭に円卓が並べられた。昔ながらの正式な台湾料理が振る舞われ、「台湾人より台湾風の結婚式をした」と当時話題になったそうだ。台湾で縁を結んだ武志さんと由香さんは、たくさんの台湾の人たちに祝福されて夫婦になった。

沖縄に台湾音楽運ぶ

 武志さんが音楽業界に身を置くきっかけになったのは、10代のころに県内のライブハウスで働いたこと。

 「沖縄から本土や世界へ作品を発信したいミュージシャンたちと行動し、音楽市場を勉強している時に台湾に注目するべきだと思ったんです。県の音楽調査事業や音楽祭などの仕事もつながり、台湾を拠点にしようと腹をくくりました。沖縄に似ていて居心地いいですよ」

 大学の講演会で講師となり、台湾の若者に沖縄文化を伝える機会もあるそうだ。

 また県内の音楽イベントに台湾ミュージシャンを招聘したり、台湾東部と沖縄の文化交流イベント「島嶼音楽季」のプロデュースを務めているのも武志さんで、中国語が堪能で多才な由香さんも共に重要な役割を担っている。

 「イベントに関わる人たちは熱い気持ちで取り組んでくれるので、観客が増えてほしいです。今後も文化交流は続き、島嶼音楽季は2年に1度県内で開催されます。県内の協力体制が広がるといいですよね」

子育ても大切

 由香さんは台湾でベストセラー作家となり、メディアにも頻繁に登場する台湾の著名日本人。その活躍は10年以上にもなる。

 「日本人に向けて台湾を紹介する活動を、『台湾一人観光局』と呼んでいます。台湾人に日本を紹介することも続けています。竹製の歯ブラシや搾りたてのごま油など、作り手の思いや物語が伝わる商品を販売するショップも開店しましたので、台北に来た時には遊びに来てください」と由香さん。

 仕事中心だった日々から、育児中心のプライベートを重視していきたい思いもあるようで、「台湾の子育て環境はとてもいい。みんながお世話してくれ、レストランや電車などどこでも親切に受け入れてくれるんです」と教えてくれた。

 武志さんは県民に台湾文化を啓発していきたいという。

 「文化交流は相互の理解。沖縄の人が台湾をもっと受け入れてくれることが重要だと思っています。台湾は田舎だとイメージしている人、全然違いますよ。いろんな世界があるということを沖縄に持ち帰り、紹介していきたいです!」

 今や音楽に限らず、スポーツ団体や企業の台湾進出などもサポートしている武志さんと由香さん。台湾側から日本向けの相談を受ける逆パターンも増えている。

 海外に住みながら公私共にパートナーとして支え合い、深い信頼感と情熱を抱く二人は、今日も台湾と沖縄の距離を近づけている。

(饒波貴子)



円満の秘訣は?

武志さん: 波瀾(はらん)万丈な夫婦ですが(笑)、妻がやっていることは彼女しかできないと分かっています。息子の存在が家庭円満をもたらしてくれますね。
由香さん: 言いたいと思った事を常に伝えています。夫は受け入れてくれるのではなく聞いていないようで、何も感じていないみたいです。円満とは言えないかも(笑)。

プロフィール

いれい・たけし: 1973年生まれ、那覇市出身。沖縄音楽海外市場開拓事業などに携わり、台湾に駐在員として在住。2011年に妻の青木由香さんと会社を設立し台湾と日本のインディーズ音楽をサポートする他、イベント制作やプロモーションなどを手掛けている

あおき・ゆか: 1972年生まれ、神奈川県出身。多摩美術大学卒業後、世界各国を旅行。2003年に台湾に留学し写真や墨絵などの創作活動を続け、05年には台湾の出版社より発売したフォトエッセイ『奇怪ね〜』がベストセラーを記録。以降、台湾と日本の各メディアで活躍を続ける。日本での著書は『台湾の「いいもの」を持ち帰る』(講談社)、『台湾のきほん』(東洋出版)他

●你好我好(ニーハオウォーハオ)有限公司
 http://www.btpbtp.com/
●青木由香さんプロデュース・ショップ「你好我好」
 台湾台北市大同區涼州街45號

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伊禮 武志さん 青木 由香さん
台湾に在住し沖縄との懸け橋的な存在で活躍する、県出身の伊禮武志さんと妻の青木由香さん。伊禮さんは音楽関係を中心にしたイベント制作などを行い、青木さんは多数の著書出版をはじめ台湾の魅力を伝える活動をしている=那覇市牧志の流求茶館
写真・村山 望
伊禮 武志さん 青木 由香さん
2011年8月に結婚、同年11月に台湾で披露宴を行った2人
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日本人に向け台湾情報を発信する由香さんの姿は、台湾の高校の教科書で紹介された
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台湾に関する講演会を日本で開催する機会も多い由香さん=2017年
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