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[No.1693]

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「表紙」2017年10月05日[No.1693]号

ザ夫婦

ザ・夫婦(み〜とぅ) 27


アゲダ空調食品設備 会長上地流アゲダ空手道場 館長
町田 宗啓さん
アゲダ空調食品設備 監査役上地流アゲダ女性道場 館長
町田 初子さん

仕事も空手も二人三脚

 今年50周年を迎えた北中城村安谷屋にある「アゲダ空調食品設備」。開業した町田宗啓さん(76)と会社の成長を共に支えてきた妻の初子さん(67)は、沖縄空手の三大流派の一つ、上地流の空手家としての顔を持つ。2人は会社の4階でそれぞれの道場を主宰。宗啓さんの道場では男性社員たちが、初子さんの女性専用道場では10代から70代までの女性たちが心身を鍛えている。夫婦として、ビジネスパートナーとして、そして空手の師範として、長年二人三脚で歩んできた町田夫妻に話を聞いた。



伝統空手 女性にも伝承

 町田夫妻の出会いは今から47年前の1970年。軍作業に携わっていた宗啓さんが67年に独立して興した「安ゲ田電気冷房工事社」に初子さんが入社したのがきっかけだ。宗啓さん29歳、初子さん21歳のときだった。

 世界中でミニスカートが大流行していた時代。ミニスカートをはいて現れた初子さんは、まさに現代っ子というイメージ。第一印象は宗啓さんが「生意気そうな娘」。初子さんは「21歳の私にとってはおじさんという感じだった」と笑う。

 男性社員4人の職場は初子さんが来てから明るくなった。「周りを明るくして気が利く」初子さんと、「優しくて、真面目で働き者」の宗啓さんは引かれ合い、1年後に結婚。事業の経営が厳しい中、初子さんは母の光子さんと手作りしたウエディングドレスとベールで結婚式に臨んだ。

 宗啓さんは高校卒業後、嘉手納空軍基地内で、7年間冷房機や冷凍機の修理に従事した。念願の独立を果たしたが、創業当初は苦労の連続だったという。「若かったので怖さを知らなかった、10年ぐらいは食べていくのも大変だった」と振り返る。沖縄では空調や冷蔵設備もまだ需要がない時代。軍作業で培った技術をもてあます日々が続いた。

 それでも入ってくる仕事に地道に対応し信頼を勝ち取っていった。初子さんも、長女や次女の出産直前や直後も働き、お金のやりくりから時には取り付け工事のアシストまでをこなし、宗啓さんを支えた。

夫婦で空手の師範に

 20歳から続けていた空手を10年ほど中断していた宗啓さん。事業が軌道に乗り落ち着いたころ、元同門の先輩である高宮城繁さんに再会。高宮城さんの創設した上地流の北谷道場に通い始めた。89年には自らも社員のための空手道場を開設、約10人の男性社員を指導している。

 初子さんも40歳のとき空手の世界に足を踏み入れた。子育てが終わったころ、宗啓さんに誘われて一緒に高宮城さんから指導を受けた。「軽い運動のつもりだった」と初子さん。男性との体力の差も実感し、空手の世界の厳しさを味わった。「初段を取ったらやめるつもりだったが、合格の授与式で気持ちが変わった」とほほ笑む。

 以前は、空手は男性の世界で、敷居が高いと敬遠している女性が多くいた。習いたくても躊躇(ちゅうちょ)していたり、断られたりしたという声を聞くうちに女性のための道場を立ち上げる夢を描き始めた初子さん。師匠の高宮城さんに思いを伝えると「その言葉を待っていた」と激励された。宗啓さんの応援もあり、99年に県内唯一の女性専用の空手道場「アゲダ女性道場」を開いた。初めは2、3人だった門弟も、口コミで評判を呼び、40代から60代を中心に10代から70代まで31人の女性が稽古に励んでいる。

 宗啓さんは8段、初子さんは6段の腕前。空手の魅力を「礼節と品格を重んじるところ」と2人は口をそろえる。上地流の特徴でもある型を重視した沖縄の伝統空手を伝承しようとまい進する。

妻の支えがあってこそ

 宗啓さんが起業して今年で50年を迎えた。「ここまで来られたのは妻のバックアップがあったから」という宗啓さんに、「あきらめずに継続し、これだけの会社にしたのも夫の芯の強さがあったからこそ」と初子さん。現在は社名を「アゲダ空調食品設備」に改め、北中城村安谷屋に自社ビルを構える。社員数も3人から約80人を抱えるまでに成長。会長として、宗啓さんの背中を見て育った後継者に会社を任せながら、世代交代を進めている。

 宗啓さんは「空手も仕事もライフワーフ。ここで死ぬつもりで頑張りたい」と探求心は尽きない。「健康でずっと空手も仕事も続けていくためにフォローします」と初子さん。今後も二人三脚で歩み続ける。

(坂本永通子)



円満の秘訣は?

宗啓さん: ヘタな冗談も笑って返してくれること
初子さん: 自然体でいること

プロフィール

まちだ・そうけい: 1941年嘉手納町生まれ。61年コザ定時制高校卒業。20歳で上地流普天間修武館に入門。後に北谷道場の高宮城繁に師事。67年沖縄市安慶田で安ゲ田電気冷房工事社を創業。89年「アゲダ空調社員道場」を開設。趣味の油絵では沖展などで入選歴あり。現在、アゲダ空調食品設備取締役会長

まちだ・はつこ: 1949年沖縄市生まれ。コザ高校卒業。70年安ゲ田電気冷房工事社に就職。翌71年に宗啓さんと結婚。40歳で北谷道場に入門。高宮城繁さんと夫、宗啓さんに師事。99年「アゲダ女性道場」を開設。30人余りの門弟を指導。アゲダ空調食品設備監査役。2人の娘と5人の孫に恵まれた。趣味は書道

アゲダ空手道場、アゲダ女性道場
☎098(935)3600

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青山映二さん 青山裕子さん
「アゲダ空調食品設備」の4階にある道場に立つ町田宗啓さんと初子さん=北中城村安谷屋の上地流アゲダ道場 
写真・村山 望
青山映二さん 青山裕子さん
結婚前、やんばるにドライブに出掛けた宗啓さんと初子さん=1970年
青山映二さん 青山裕子さん
「スイス沖縄文化交流公演」に家族で参加。町田さん夫妻は空手、長女の牧さん(左)は合唱団、次女の幸さん(右)は琉球舞踊団の一員として沖縄文化を紹介した。レマン湖にて=2000年
青山映二さん 青山裕子さん
「アゲダ女性道場」では約30人の門弟が稽古に励んでいる。現在は、宗啓さんも共に指導に当たる
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