沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1688]

  • (金)

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「表紙」2017年08月31日[No.1688]号

ザ夫婦

ザ・夫婦(み〜とぅ) 22


デザイナー 金城 博之さん 
イラストレーター 金城 美玲(MIREI)さん

お互いの個を尊重し合って

 イラストレーターの妻が描いた絵を、デザイナーの夫が製品に仕上げる──。デザイナーの金城博之さん(45)と、イラストレーター「MIREI(ミレイ)」こと金城美玲さん(43)は、ここ数年、そんな風に共同作業を行い、作品を生み出している。一緒にいる時は、いつまでも話が尽きることがないという仲の良い2人。クリエーター同士の夫婦だが、意見がぶつかることはなく、「それぞれの個を尊重し合い、お互いにない部分を補い合っています」とほほ笑む。



夫はデザイン、妻はイラスト

 夫の博之さんはデザイナー、妻の美玲さんはイラストレーター。「彼女は素材を作るタイプで、僕は組み立て派」。博之さんは、2人の素質をこう表現する。

 博之さんと美玲さんは、それぞれの人生で、独自にキャリアを積み重ねてきた。

 博之さんは、高校卒業後、東京の明星大学日本文化学部で、生活文化の中からデザインを見つめる視点を学んだ。

 大学を出てからは、東京のデザイン事務所で企業のブランドイメージを構築するブランディングの業務に関わった。

 6年間勤務した後、リセットを兼ねて渡英、1年間ヨーロッパ諸国を遊学。フィンランドを訪れた時、街の中にものづくりが溶け込み、地元の人も地場のアートや工芸を大切にしている姿が、沖縄に近いと感じたという。

 帰国した博之さんは沖縄に戻って活動を開始。2002年に、デザイン事務所「Think of シンクオブ」を立ち上げた。

 「デザインの力で沖縄を変えたい」──。沖縄への強い思いを抱く博之さんは、デザインの仕事の傍ら、県内の作家を中心に、気に入った作家の作品を事務所スペースのギャラリーで紹介する活動も行った。その流れで、11年には県内工芸作家のギャラリーショップ「tituti(ティトゥティ)」を、14年には県内作家を中心としたアート&クラフトのギャラリーショップ「RENEMIA(レネミア)」をオープンした。

 レネミアには、カップや器、皿、カトラリーなどのアイテムに加え、美玲さんのイラストをあしらったTシャツや、原画も置かれている。

出会いは作品を通して

 美玲さんは、沖縄県立芸術大学の美術工芸学部でデザインを専攻。イラストレーターを目指していた美玲さんは、その手がかりをつかもうと、東京のデザイン事務所に就職した。

 「でも仕事が忙しく、絵を描く時間がなかった。描きたいという気持ちがピークに達し、3年後に沖縄に戻ってフリーで活動しながら作品を発表するようになりました」

 沖縄に戻った美玲さんは、精力的に作品を制作し、東京や沖縄で発表。そのうちに、広告や商品パッケージに起用されるようになり、イラストレーターとして知られるようになっていった。

 それぞれ自分の道を歩いていた2人が知り合うきっかけは、お互いの作品だった。

 「沖縄で洗練されたデザインをしている人がいる」「すてきな絵を描いている人がいる」。お互いの活動に共感した2人は交際を始め、08年に結婚した。

会話が途切れない2人

 「彼女には絵を生み出す力があり、世界で活躍できる人。自分に勝るものを持っていると思います」と妻を評価する博之さん。美玲さんも、「彼のデザインを見ていると、ものの本質をちゃんと見て判断しているなと思う。尊敬していますね」と話す。

 「僕らが出会ったのは、お互いの『個』がきちんと出来上がってから。お互いを尊重し合うというのが基本的なスタンスです」と博之さんは穏やかにほほ笑む。

 美玲さんは、現在、3人の子育て中。美玲さんが家事の合間を縫って絵を描き、オリジナル商品に展開。博之さんがデザインを担当し製品に仕上げることもあるという。

 2人で一緒に過ごす時間には、仕事や作品の話、子どもの話など、お互いに話題が尽きない。「ずっと話しているから、子どもたちに止められます」と笑う。

 子どもが生まれてから、花の絵を描くようになったという美玲さん。そのやわらかくやさしいタッチに、家族の幸せな生活を感じ、胸が温かくなった。

(日平勝也)



円満の秘訣は?

博之さん・美玲さん:互いを尊重すること。お互いにその気持ちがあれば、うまくいくんじゃないかなと思います。

プロフィール

きんじょう・ひろゆき: 1972年那覇市生まれ。明星大学人文学部日本文化部生活芸術学科卒業後、東京のデザイン事務所で6年間勤務。退職後に渡英、1年間のヨーロッパ遊学を経て帰沖。2002年、デザイン事務所「think of シンクオブ」を立ち上げる。県内の企業ブランド構築や商品のデザイン開発に携わると共に県内作家を中心にギャラリーで作品を紹介する活動にも力を入れ、11年には県内工芸作家のギャラリーショップ「tituti(ティトゥティ)」を、14年には県内作家を中心としたアート&クラフトのギャラリーショップ「RENEMIA(レネミア)」をオープン

きんじょう・みれい: 1974年北中城村生まれ。「MIREI(ミレイ)」の名でイラストレーターとして活動。沖縄県立芸術大学美術工芸学部デザイン専攻を卒業後、東京のデザイン事務所に3年間勤務。帰沖後、精力的に作品を発表し、東京やパリで個展を開く。07年フランス短期留学。広告や商品パッケージ、ショップデザイン、オリジナルグッズ、イラストを中心にさまざまな分野で活躍

RENEMIA Art,Craft & Design with Cafe
沖縄県那覇市牧志2-7-15
☎098-866-2501
営業時間 13時〜18時
定休日=日曜
〔HP〕 www.renemia.com

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金城 博之さん 金城 美玲さん
金城博之さんが2014年にオープンしたアート&クラフトのギャラリーショップ「RENEMIA」店内にて、美玲さんが描いた絵をバックに笑顔を見せる博之さんと美玲さん=那覇市牧志  
写真・村山 望
金城 博之さん 金城 美玲さん
長女の玲音(れね)ちゃん(左)、次女の美彩(みあ)ちゃん、長男の玲生(ろうい)君と一緒に
金城 博之さん 金城 美玲さん
RENEMIAの店内。落ち着いたモダンな空間に、博之さんがじっくり向き合いたいと思う作家の作品が並ぶ
金城 博之さん 金城 美玲さん
美玲さんの原画。子どもが生まれてから、花の絵を描くようになったという
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