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[No.1595]

  • (金)

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「表紙」2015年11月12日[No.1595]号

母娘燦燦

母娘燦燦 — おやこ さんさん — 33

ミュージックプラザ音楽教室代表 安富祖 寿子(ひさこ)さん 
ピアニスト 安富祖 妃(きさき)さん

音楽で人と人をつなぐ

 今年で20周年を迎えるうるま市石川の「ミュージックプラザ音楽教室」。ここはピアニストの安富祖寿子さん(51)が「音楽で人と人とをつなぐ仕事がしたい」と開いた場。現在金武校と合わせて多数の生徒を抱えるまでに成長した。寿子さんはジャズ歌手として活躍する妹の安富祖貴子さんとともに幼いころからピアノに親しんできた。娘の安富祖妃さん(24)も、ピアノが日常にある環境で育ち、自然にピアニストを目指すように。フランス留学も果たした実力派だ。苦しいときも音楽が救ってくれたという2人。さまざまな活動に取り組みながら音楽の魅力を伝えている。



音楽にあふれた日常

 寿子さんが音楽の道に進んだ原点には、共に小学校教諭だった両親の存在がある。研修などで海外に足を運ぶ機会の多かった父の清壽(せいじゅ)さんがほかの国の音楽に触れ「これからの時代、必要とされるのは音楽だ」との思いを抱いたことがきっかけだった。幼いころから妹の貴子さんとピアノを始めた寿子さん。父親の友人が安富祖家に集合すると、そこは幼い姉妹のコンサート会場と化した。部屋にスポットライトまで取り付けるなど、両親は姉妹に音楽を演奏する環境を与え続けた。大学生になると妹の貴子さんと県内のリゾートホテルで演奏活動もした。そんなことも姉妹にとっては小さいときの延長線上。自然なことだった。

 教えることの方が好きだった寿子さんは、やがて妹と別の道へ進み始める。大学で小学校と幼稚園の教員免許を取得。小中学校の臨時教師として教職の道を志していたが、音楽で人と人とをつなぐ仕事をしたいという思いが強くなり、20年前に教室をオープン。初めは4、5人ほどだった生徒数は予想以上に膨れ上がり、講師を雇い始めた。「周りの人に恵まれて感謝している」という寿子さん。両親の教え子たちや友人・知人が開校の話を聞きつけ、協力してくれたという。

 そんな寿子さんに対して「母の人脈の広さはすごい」という娘の妃さん。「いい人たちが磁石のように母の周りに集まり、助けられている」と、明るく、社交的な母の性格を分析する。

 寿子さんは、教室の運営の傍ら、演奏活動や作曲・編曲、音楽療育の指導などにも携わるなど行動派だ。今年は女性リーダーの育成を目的とした海外研修セミナー「県女性の翼」の金武町代表の団員として、海外を視察。学んだ経験を地域社会に貢献するための取り組みにもまい進している。



挫折を乗り越えて

 妃さんは幼いころはピアノがおもちゃ代わりで「物心ついた時からピアノを弾くのが当たり前の環境で育った」という。

 中学を卒業すると、ピアノの本場フランスへ渡った。音楽院と日本人学校の高等部に通うというハードな生活。言葉の壁にも直面した。「フランス語が理解できないイコール卒業できない」というプレッシャーの中、ピアノは逃げ道になっていた。最初の半年は音楽用語さえも通じず苦労した妃さんを救ったのはピアノだった。「弾いていると、悩みや寂しさなど、何も考えずにすむ。おかげでピアノは上達して卒業できた」と振り返る。

 フランスから帰国後、東京の音楽大学を卒業した現在は、ピアニストとしての演奏活動も数多く経験した。「母と同じく、子どもたちからエネルギーをもらっている」という妃さんは、演奏活動だけではなく教えることも大切にしている。現在は1児の母としても育児との両立に奮闘している。

経験を指導に生かす

 妃さんが味わった苦労や経験を生かしてほしいと願う寿子さん。「今まで学んできたことを、子どもたちに伝えていってほしい。悩みを持った人たちへのアドバイスは、経験したからこそ響く」と期待を寄せる。

 寿子さんは音楽を通じた国際交流にも目を向けている。妃さんが通っていたフランスの音楽院の生徒や講師を招き、コンサートを開催したこともある。今後も交流を通して、音楽で人と文化をつないでいくのが目標だ。

 さらにレべルアップをし、子どもたちに自分の経験をピアノを通して伝授できるようになりたいという妃さんも、「母の培ってきた人脈を生かして、沖縄でさまざまなことができる音楽教室に発展させたい」と意気込む。

 厳しいときも音楽で乗り越えてきた2人。これからもこの教室から音楽の魅力を発信し、人々や文化を結び続けていくだろう。

(坂本永通子)



プロフィール

あふそ・ひさこ
1964年生まれ。金武町出身。幼いころからピアノに親しみ、小学校1年からクラッシックピアノを習い始める。1987年愛知県中京女子大学卒業。小中学校の音楽専科臨時教諭を経て、1995年うるま市石川にミュージックプラザ音楽教室を設立。2012年には金武校を開設

あふそ・きさき
1991生まれ。金武町出身。2009年フランス国立トゥール音楽院卒業。2010年フランス甲南学園トゥレーヌ高等部卒業。2014年昭和音楽大学卒業。ピティナコンペティション入選、教育連盟ピアノオーディション奨励賞など受賞歴多数。ピアニストとして活動する傍ら、ミュージックプラザ音楽教室で講師も務める

ミュージックプラザ音楽教室
沖縄県うるま市石川白浜1-12-1 ☎098-965-6467

ミュージックプラザ音楽教室 20th Anniversary Concert
12月6日(日)18:00〜
宜野座村文化センターがらまんホール
一般1500円 学生1000円 未就学児無料



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ミュージックプラザ音楽教室代表
教室のピアノの前に立つ安富祖寿子さん(右)と娘の安富祖妃さん。プライベートでは一緒に買い物に行くなど仲が良い2人。取材中は笑いが絶えなかった=うるま市石川の「ミュージックプラザ音楽教室」
写真・村山 望

ミュージックプラザ音楽教室代表
普天満宮に初詣に訪れたとき。妃さんが4歳のころ
ミュージックプラザ音楽教室代表
「嘉芸っ子」フェスティバルで寿子さんがアレンジした沖縄わらべ歌を演奏する妃さん
ミュージックプラザ音楽教室代表
自宅のピアノで遊ぶ1歳のときの妃さん。ピアノはおもちゃ代わりだった
ミュージックプラザ音楽教室代表
入学試験の後、フランス国立トゥール音楽院の前に立つ妃さん
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