沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1596]

  • (土)

<< 前の記事  次の記事 >>

「表紙」2015年11月19日[No.1596]号

母娘燦燦

母娘燦燦 — おやこ さんさん — 34

大山 仙子さん (パキ・オオヤマ)
大山 さやかさん (リコレフア オカラニ・オオヤマ)

笑顔あふれるフラ人生

 華麗で優雅なハワイの伝統舞踊「フラ」を30年近く続けている大山さん母娘。踊る楽しさはもちろんのこと、人との出会いや触れ合い、本場ハワイへ旅するワクワク感、そして美しいコスチュームに身を包みステージに立つ時の緊張感など、フラを通してさまざまな経験を積み重ねている。「パキ」というハワイアン・ネームを持つ母の大山仙子さん(62)は1988年、「リコレフア オカラニ」こと娘の大山さやかさん(32)にフラを学ばせる教室をやっとの思いで見つけた。そこから母娘のフラ人生がスタートした。



フラの世界を共に歩んで

 「女の子が生まれたら、フラを習わせる。私の両親はそう決めていたんです」とほほ笑むさやかさん。誕生前から、フラの道を歩むレールが敷かれていたという。「娘ができたら絶対にフラをさせる」という夫の強い願いをかなえるため、仙子さんは一生懸命に教室探しをしたそうだ。若いころからハワイアン音楽を聞いていた夫は、ゆったりとした癒やされるメロディーに引かれ、あこがれていたのだろう、と仙子さんは振り返る。

 さやかさんが誕生した1982年当時、フラダンス教室を見つけるのは一苦労。琉球新報カルチャースクールの生徒募集の記事を見つけると、すぐに教室に出向いたそうだ。そこで2人は、恩師となるホクオラ・キシャバさんとの出会いを果たす。さやかさんが5歳になったころだった。

 一カ月後、母娘一緒に習うと上達が早いと勧められ、仙子さんもレッスン開始。「同時期に始める仲間がいたので、挑戦しようという気持ちになりました。娘が一カ月先輩なんです」。娘に習わせることしか考えていなかった仙子さんだったが、夫の喜ぶ顔を思い浮かべ、戸惑いつつも自身もフラへの道を踏み出そうと決めた。



レッスンで深まる絆

 それからの2人は、母娘という関係だけではなく、フラの生徒同士というつながりもできた。家で夕食後に練習をして次のレッスンに備えるなど、仙子さんが厳しく時間管理をしていた時期もあったという。「でもそのうちに、娘が先にダンスをマスターするようになり、立場が逆転したんですけどね」

 習い始めてすぐ大勢の人の前でソロダンスを披露することになり、緊張のあまり涙を浮かべていたというさやかさん。だが、振り付けを間違えることはなく完璧に踊ることができたという。それから母娘一緒にハワイを数回訪ね、師ホクオラさんの師匠からも手ほどきを受けた。

 幼いころからダンスを習い、フラの世界観が体にしみ込んでいるさやかさんの美しく華やかな踊りは誰をもうっとりさせる。親切で朗らかな仙子さんは師ホクオラさんの信頼を得て、助手を務めたりサークル講師を任されたりと活躍中だ。

自然体で踊りたい

 順調にフラ人生を過ごしてきた母娘だったが、ブランクといえる時期もあった。さやかさんが他県で就職することになり、6年近くもフラから離れていたというのだ。「ブランクができ過去のプレッシャーも思い出し、沖縄に帰ってきても1年くらいはやれずにいました。でも、『なぜ再開しないの?』と聞かれるうちにチャレンジしたくなって復帰したんです」とさやかさん。それまでは両親に言われるがままフラに触れてきたが、この時は自分の意思でカムバックを決めたという。仙子さんは何も言わずに見守っていたそうだ。

 「好きとか嫌い、また、やめたいといったレベルの問題ではなくて、私にとってフラを学び踊ることは、ごく自然なことなんです」とさやかさん。そして「子どもたちも90代の先輩たちも、同じ衣装を着てみんなでダンス。フラの醍醐味(だいごみ)ですよね」と仙子さんも語る。師ホクオラさんの言葉に耳を傾け、仲間たちと笑顔でいられることが何より楽しいという。

 指導者として有名になりたい、目立つフラダンサーになりたいという思いは一切なく、自然体で踊り続けていきたいという2人。「笑いながら楽しむ心が長寿にもつながるんじゃないでしょうか」というさやかさんの言葉に、沖縄はフラが似合う土地だと納得した。 

(饒波貴子)



プロフィール

おおやま・せんこ(パキ・オオヤマ)
1953年大宜味村喜如嘉生まれ、県立辺土名高等学校卒業。21歳で結婚し、23歳の時に長男、29歳の時にさやかさんを出産した。化粧品店勤務を続けながら、師ホクオラ・キシャバさんの助手を担当するなどフラ界でも活躍。豊見城中央公民館「ハワイアンフラ 花」、牧志駅前ほしぞら公民館「ロケラニ」といったサークルでは講師を務める。ハワイアン・ネーム「パキ」の意味は、「快晴」

おおやま・さやか(リコレフア オカラニ・オオヤマ)
1982年那覇市生まれ、県立沖縄工業高等学校卒業。子ども時代は親戚の紹介でCMに出演したり、ポスターモデルに選抜され活躍したりした経歴を持つ。現在は那覇市松山のグラス専門店「House of Glass(ハウスオブグラス)」で店長を務めながら5歳から学んできたフラをライフワークとして継続中。ハワイアン・ネーム「リコレフア オカラニ」は、「天国の小さな花」を意味する

琉球新報カルチャーセンター
ハワイアンフラ
☎098(865)5277



このエントリーをはてなブックマークに追加



大山 仙子さん
2人の師であるホクオラ・キシャバさんが正装をイメージしてデザインした衣装を身にまとい、フラで花を意味するポーズを取る大山仙子さん(左)と娘のさやかさん=那覇市内、大山さん自宅  
写真・喜瀬守昭(サザンウェイブ)

大山 仙子さん
サンマリーナホテルのクリスマス・パーティーにてフラを披露。前列中央にいる、一番小さな女の子が6歳のさやかさん
大山 仙子さん
2010年4月、琉球フェスティバルに母娘で出場。仙子さんは現代フラ、さやかさんは古典フラを踊ったため衣装が違う
大山 仙子さん
2013年10月、那覇まつりでのショット。両端は幼いころからさやかさんのファンだという姉妹。今では一緒に踊るフラ仲間になった
>> [No.1596]号インデックスページへ戻る

↑このページの先頭へ戻る

<< 前の記事  次の記事 >>