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[No.1587]

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「表紙」2015年9月17日[No.1587]号

母娘燦燦

母娘燦燦 — おやこ さんさん — 25

シルバー美容室
吉山 トミ子さん 青木 さおりさん

道一筋 尽きない情熱

 今年で創業53年目を迎えるうるま市石川の「シルバー美容室」。ドアを開けると、培った年月の醸し出す温かみが空間に広がる。一般美容にとどまらず、成人式、ブライダルの着付け、写真撮影など提供サービスは多岐にわたる。経営者の吉山トミ子さんは、今も現役で活躍。美容室が少なかった時代から多くの人の美に寄り添ってきた。娘の青木さおりさんも美容の世界で母の後を追いかける。現在は主にブライダル業務に携わり、母同様着付けの講師として後進の育成にも努めている。美容業界の発展に尽力しながら、まい進する母娘に話を聞いた。



 吉山トミ子さんが美容業界に飛び込んだのは20歳の頃。戦後の生活の厳しさを見る中で、女性が自立して生きていくためにはどんな職業に就くべきか悩んだ末の決断だった。手に職を付ければ、努力次第で早く独立できるのではと考えた。「どんなに厳しくても、頑張ってみせると心に誓いました」

 東京の美容学校を卒業後石川市(現うるま市石川)の「なにわ美容室」でインターン生として勤務し、美容師免許を取得した。他のインターン生が尻込みする中、チャレンジ精神旺盛なトミ子さんは、早々にカットデビュー。客は喜んでくれた。「当時は、比較対象もなかったので」と謙遜するが、人の何倍も努力を重ねたことがうかがえる。

 結婚後に夫の勤務先の大阪の美容室で約3年間勤め、帰沖。 1962年には、インターン時代に慣れ親しんだ旧石川市に念願だった美容室をオープンした。美容室も少なかった当時、「シルバー美容室」は開店直後から多くの客に恵まれた。



 5年たち、スタッフ10人を抱えるまでに店は成長。「一般美容だけではなく、ブライダルなどの分野にも挑戦したい」との思いが募る。再度、東京の美容学校の門を叩いた。着付けや花嫁の支度など、身に付けた技術は活躍の場を広げた。

 まだ結婚式場が少なく、ホテルウエディングなどのない時代。自宅や公民館、体育館などが結婚式の舞台だった。毎日のように会場に出向き、結婚式をサポートした。

 初めて花嫁の支度をしたときは震えが止まらなかった。
「一生の思い出に残るものなので、責任を感じました」と振り返る。

 多忙を極める日々を送るトミ子さん。一人娘のさおりさんは、幼いころ「お客さんに『もう帰ってちょうだい!』と言ったこともあります」と笑う。業務に追われる母の姿を間近に見てきたからこそ、美容師になりたくなかった。大学卒業後は、市役所や別の業界で働いた。

 転機は26歳のころ。結婚し、「子どもが帰宅したときに『お帰り』って言えた方がいいな」と思うようになった。さおりさんは通信教育で自ら美容師の勉強を始めた。

今なお美容の世界で

 現在は、主にブライダルの仕事で活躍。繁忙期になると店に出られないほど、式場での業務を数多くこなしている。朝早くから夜遅くまでの仕事で、体力的にも大変だが、担当した花嫁の喜ぶ顔や寄せられるお礼の手紙などがうれしく、やりがいになっている。

 沖縄の伝統文化の技術を身に付けたいという新たな目標も生まれた。うちなーからじ(沖縄伝統の髪結い)の免状取得のため、技術の習得に励んでいる。

 母と同じ道を選び、日々努力を続けるさおりさん。2008年には、県代表として出場した全日本美容技術選手権大会「中振袖着付競技の部」で初出場にして優勝。県勢での優勝は初めてという快挙だった。現在は、母と同様着付けの指導もするなど、県内外で後進の指導にも当たっている。そんな娘に対しトミ子さんは「相手が理解できるようにしっかり指導している姿を見ると明かりが見えてきたかな」と感じている。

 人生の大半を美容の道一筋に生きたトミ子さんにとって、「この仕事は私の一部になっています」という。

 県美容業生活衛生同業組合理事長を10年務めた他、全日本美容業生活衛生同業組合連合会理事を務めるなど、多くの美容業界の組織にも携わってきた。「微力ながらこの業界に貢献できたかなと思います」と語る。2010年には、長年の功績が評価され、旭日双光(きょくじつそうこう)章を受章した。今後も必要とされる限り、後継者育成に努めたいと願う。

 トミ子さんを指名する客は今も途絶えない。さおりさんにも新たな顧客がついてきている。母が築いた美容室を守りながら、2人は美を表現し続ける

(坂本永通子)



プロフィール

よしやま・とみこ
 今帰仁村生まれ。東京の美容師学校を卒業。旧石川市の美容室でのインターンを経て、大阪の美容室で約3年間勤務。1962年に「シルバー美容室」をオープン。県美容業生活衛生同業組合理事長、全日本美容業生活衛生同業組合連合会理事、県生活衛生同業組合連合会副会長、県生活衛生営業指導センターなどを歴任。2010年旭日双光章を受章。県優秀技能者に表彰されるなど受賞歴多数。

あおき・さおり
 石川市(現うるま市)生まれ。福岡の大学を卒業後、市役所などの仕事に携わる。大学時代に出会った信次郎さんと結婚後、美容師の勉強を開始。2008年第36回全日本美容技術選手権大会「中振袖着付競技の部」優勝。14歳の娘と8歳の息子の母でもある。

シルバー美容室
うるま市石川白浜1-2-7
定休日=毎週火曜日、第4月曜日
☎098-964-3523



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シルバー美容室
1日の仕事を終えリラックスする吉山トミ子さん(右)と娘の青木さおりさん。美容師の仕事は華やかなイメージがあるが、体力勝負の厳しい世界だ=うるま市石川、シルバー美容室 
写真・村山 望
シルバー美容室
トップマスターズモード発表会(県美容業生活衛生同業組合主催)で、トミ子さんが帯結びをステージで披露したとき。モデルはさおりさんが務めた。1998年
シルバー美容室
さおりさんが結婚する直前に家族で伊江島を訪れたとき。夫の盛信さんは、写真家に転身し、ウエディングや成人式の撮影などでトミ子さんを支えてきた。1999年
シルバー美容室
孫の青木優佳さんの琉装着付けをするトミ子さん。2005年
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