沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1588]

  • (木)

<< 前の記事  次の記事 >>

「表紙」2015年9月24日[No.1588]号

母娘燦燦

母娘燦燦 — おやこ さんさん — 26

向陽保育園
園長 親泊 タミエさん 保育士 徳元 千鶴子さん

子どもたちの命を預かる

 那覇市古波蔵の漫湖公園のそば、緑あふれる環境の中で、にぎやかに散歩を楽しむ子どもたち。近くに立つ「向陽保育園」の園児たちだ。助産婦だった先代園長・故親泊そめさんが1969年に認可外保育園「わかたけ保育園」として設立し、それから41年後の2010年、認可保育園として新たなスタートを切った。現在は、そめさんの後を継いだ親泊タミエさん(62)が園長を務め、タミエさんの娘・徳元千鶴子さん(33)も保育士として園児たちの大切な命を預かる。「この仕事は本当にハード。でも、働いてみて初めて分かる喜びもある」と千鶴子さんは目を輝かせる。



成長に向き合える喜び

 「保育士の仕事は子どもが好きなだけではできません」。向陽保育園で保育士として働く徳元千鶴子さんは、そう話す。

 それでも続けられるのは、「人が好きだから。この仕事には、成長、喜び、驚きがあります。何よりも、自分自身が成長できます」と頬をゆるめる。

 保育園を運営する家庭に生まれ育った千鶴子さん。保育園の上に自宅があり、放課後は園児たちと共に過ごすのが当たり前という環境に育った。外の世界を見たいという気持ちから、別の職種のアルバイトをしたこともあったが、自然と保育の世界に戻ってきた。

 高校卒業後、昼間は保育園で働きながら、沖縄女子短期大学の夜間部に通い、2004年、卒業と同時に保育士の資格を取得した。

 「最初のうちは何が何だか分からず、必死でした」。今年で保育士11年目、0歳児クラスのリーダーを任されるベテランに成長したが、「何年たっても分からないことだらけ」と苦笑する。

 その一方、「年数を重ねることで、この仕事の深さが分かるようになりました」と笑顔を見せる。受け持った子どもたちの卒園式に立ち合い、高校生・大学生に成長したかつての園児に再会するという経験を得て、「子どもたちの成長にそばで向き合えるのは、本当にすてきなこと」と実感するようになったという。



30代からの挑戦

 千鶴子さんの母、親泊タミエさんも「かつての園児が親となり、その子どもたちが入園してきた時は、最高にうれしいですね」とほほ笑む。

 園の創設者、故親泊そめさんの後を継ぎ、園長を務めるタミエさん。保育の仕事に関わるようになったきっかけは、22歳で嫁いだ先が認可外保育園だった「わかたけ保育園」を経営していたこと。それまでは事務員で、保育の世界とは縁もゆかりもなかった。

 4人の子どもを育てるかたわら、保育園を手伝っていたタミエさんだが、そのうちに義母のそめさんが体調を崩しがちになった。

 園の仕事をサポートしながらも、保育士の資格がないことに負い目を感じていたタミエさんは、その時、資格を取得することを決意。35歳で夜間の保育専門学校に通い始めた。

 「昼に保育園の仕事をして、家で夕食を作ってから学校へ。帰ってくるのは夜の10時過ぎで、レポートを書いていたら朝になっていることもしょっしゅうでした」と当時の苦労を振り返る。

 努力のかいあって、3年後に資格を取得し園長を継いだタミエさんは、保育の仕事にまい進。2010年の4月には、先代の園長からの念願だった認可保育園として認められ、「向陽保育園」として新たな一歩を踏み出した。

強い母、明るい娘

 「母は、弱音をはかない強い女性」。千鶴子さんから見たタミエさんの姿だ。「私には、一人でいくつものことを完璧にやっていた母のまねはできない」と母の強さを賞賛する。自分自身が3人の男の子の親となった今、その思いはますます強くなっている。

 タミエさんから見た千鶴子さんは、「人と人との間をつないでくれる、明るいムードメーカー」。子どものころから夫婦やきょうだいのけんかが起きると仲裁してくれた末娘の千鶴子さんに、タミエさんはいろいろなことを相談していたという。

 「娘は母として、女性としてパーフェクトではないかもしれませんが、子どもたちが自然と寄ってくる。保育士として理想的なことだと思います」

 子どもたちの大切な命を預かる母と娘。2人が成長を見守る子どもたちは、これから先も元気に地域に羽ばたいていくだろう。

(日平勝也)



プロフィール

おやどまり・たみえ
 1953年生まれ。糸満市出身。22歳で助産婦だった故親泊そめさんの息子と結婚。2男2女を育てるかたわら、そめさんが設立した認可外保育園「わかたけ保育園」の仕事を手伝い始める。そめさんが体調を崩しがちになったため、35歳の時に園長職を継ぐことを決意。夜間の保育専門学校に3年間通い、38歳で保育士の資格を取得。園長に就任した。2010年4月、認可保育園として認められ、「社会福祉法人・そめ福祉会 向陽保育園」をスタートさせる

とくもと・ちづこ
 1982年生まれ。那覇市出身。保育園を営む家に育ち、自然と保育士を志すようになる。高校卒業後、昼間は保育園で働きながら、沖縄女子短期大学の夜間部に通う。2004年、卒業と同時に保育士の資格を取得。以来、11年間、わかたけ保育園および向陽保育園で保育士を務める。現在は、0歳児クラスのリーダー。3人の男の子の母でもある

向陽保育園
那覇市古波蔵4-2-14
☎098(832)6142



このエントリーをはてなブックマークに追加



親泊タミエさん 徳元千鶴子さん
0歳児と1歳児の園児たちを腕に抱く親泊タミエさん(左)と娘の徳元千鶴子さん。千鶴子さんのそばには、いつも子どもたちが集まってくる=那覇市古波蔵・向陽保育園 
写真・村山 望
親泊タミエさん 徳元千鶴子さん
千鶴子さんが小学2年生ごろの写真。仲良し母娘ぶりがうかがえる。写真の上の文字は、千鶴子さんが書いたもの
親泊タミエさん 徳元千鶴子さん
2012年、長女と千鶴子さんの一家と共に。タミエさんは現在、8人の孫に恵まれている
親泊タミエさん 徳元千鶴子さん
タミエさんと千鶴子さんが見守る向陽保育園の園児たちは元気いっぱい
>> [No.1588]号インデックスページへ戻る

↑このページの先頭へ戻る

<< 前の記事  次の記事 >>