沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1585]

  • (金)

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「表紙」2015年9月3日[No.1585]号

母娘燦燦

母娘燦燦 — おやこ さんさん — 23

糸数 美江子さん FM沖縄「ゴールデンアワー」パーソナリティー糸数 美樹さん

娘のファン1号は母!

 ウチナーグチと出身地である沖縄市池武当の「中部なまり」を生かした絶妙なトークで、FM沖縄「ゴールデンアワー」(月曜日〜金曜日放送)を盛り上げるパーソナリティーの糸数美樹さん(30)。「ミキトニー」の愛称で親しまれ、イベントの司会やCM、タレント、沖縄市大使としても活動する。根っから明るくポジティブな彼女。そのキャラクターがあるのは、娘を陰で応援し、背中を押してくれる母・美江子さん(53)の存在があるという。



なまりをプラスに輝いて

 昼のラジオ番組でおなじみの美樹さんだが、パーソナリティーになる前はラジオとは無縁の生活を送っていたという。

 沖縄出身のタレントが多く活躍した2003年、東京の大学に進学した美樹さん。沖縄出身者だと知られると沖縄について聞かれるようになった。故郷を紹介していくうちに「伝えることの面白さ」を体感。その頃は、ウチナーグチを隠していたといい、友人から「それはあなたらしくない」と言われたことで「なまりが自分のアイデンティティーだと分かった」と語る。

 それ以来、ウチナーグチを友人らに教えるようになった。学生の間でその言葉が話題になり、そのときのあだ名は「ドマンギチョンだった」と笑う。

 人に伝える仕事がしたいー。そう意識するようになったのはその頃からだ。就職活動を前に漠然と考えていた職種は、ラジオではなくテレビのアナウンサーだった。自身をPRできる強みがないと考え、米国に1年半留学。父親に反対されたが、母・美江子さんが説得し留学させてくれた。

 美樹さんは「母は私が挑戦することに一度も反対したことがない」という。「娘に、やるなら徹底的にと常に話している。経験することで得るものがある。失敗してもそこから学べばいい」と美江子さんは語る。

 「母がいろいろチャレンジさせてくれなかったら今の私はなかった」と美樹さんは振り返る。



ラジオで見出した自分らしさ

 帰国後、アルバイトをしながら東京のアナウンススクールに通った美樹さん。しかし、採用試験の面接でことごとく落とされ「何でよー、面接であんなに話が盛り上がったのにー。私の個性は求められていないんだと思った」と話す。うまくいかない状況でも、負けず嫌いな性格で諦めなかった。

 ちょうどそのとき、FM沖縄のパーソナリティー募集の知らせが耳に入った。経験のためにと面接を受けると見事、採用が決まり、3カ月後には番組がスタートした。

 1回目の放送を聞いていた美江子さんは、「緊張のあまりラジオを聞いていられなかった」と笑う。当初の番組は、ウチナーグチを一切使わない、いわゆる「きれいな日本語」を使うことが基本だった。しかし、美樹さんは、ここでも地を出せないことに違和感があった。

 「番組を重ねていくうちに、かぶっていた皮を1枚、2枚と脱いでいき、地を出していった」という。それが、逆にリスナーに親近感を与え、心をつかんでいったのだ。「今は隠すことが何もなく素っ裸ですね」と笑う。

 美樹さんのウチナーグチは、うるま市出身の美江子さん、ウチナー芝居が好きな祖母、池武当出身の父仕込みの言葉だ。家ではウチナーグチが飛び交うという。

母の手料理が元気の源

 タレントとしても活躍する美樹さん。ラジオの仕事と並行するのは、毎日の健康管理が要だ。「私の健康を支えてくれているのは、間違いなく母」という糸数家の食卓は、毎晩、美江子さんが作る愛情たっぷりの料理が並ぶという。美樹さんは「夕食が一日の楽しみで、母の食事が一番おいしい」と頬を緩める。調子が悪い日でも「帰宅すると気分がリセットされる」といい、それが多くのリスナーに活力を与えてきた美樹さんの元気の源になっているようだ。

 「母は私の一番の理解者」と話し、美江子さんは「私は娘の一番のファン!」と、ほほ笑む。今日も昼のラジオを楽しみに、美江子さんは陰で娘を支える。

(当山絵理加)



プロフィール

いとかず・みえこ
 1962年生まれ。うるま市兼箇段出身。県内美容師専門学校を卒業後、東京の美容室で2年間勤務。結婚後、夫の出身地である沖縄市池武当に移り住む。23歳の頃、美樹さんを出産。自営業の自動車販売店を手伝う。娘がパーソナリティーを務めるFM沖縄「ゴールデンアワー」のリスナーでもある。

いとかず・みき
 1985年生まれ。沖縄市池武当出身。美里小学校、興南中、興南高校、玉川大文学部国際言語文化学科卒業後、1年半の米国留学を経て、2010年1月から「ゴールデンアワー」(FM沖縄)パーソナリティーを務める。CM、イベントの司会、タレント、歌手としても幅広く活動する。「コザの裏側」(RBC)に出演中、今年2月、2枚目となるシングル「しあわせの扉」発売。沖縄市大使や観光月間のPRナビゲーターも務める。



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糸数 美江子さん 糸数 美樹さん
ウチナーグチを話す両親と祖母に育てられたパーソナリティーの糸数美樹さん(左)とラジオ番組のリスナーで、「娘のファン」とほほ笑む母・美江子さん(右)。愛情たっぷりの手料理で、忙しく働く娘の健康をサポートする=沖縄市中央・プレイヤーズカフェ
写真・喜瀬守昭(サザンウェイブ)
糸数 美江子さん 糸数 美樹さん
アナウンススクール時代。情報を発信することに興味を持ちアナウンサーを目指していた
糸数 美江子さん 糸数 美樹さん
第1子で生まれた、母の膝の上に載る美樹さん
糸数 美江子さん 糸数 美樹さん
美樹さん(右)が子どもの頃、家族で東京ディズニーランドに行った。弟を抱く美江子さん(左)は元美容師
糸数 美江子さん 糸数 美樹さん
美樹さんがパーソナリティーとして活躍する番組の放送室。ラジオから楽しい話題を届ける
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