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[No.1964]

  • (金)

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「島ネタCHOSA班」2023年01月01日[No.1964]号



 年明けに向けて、「わら算」をお正月飾りに生かす体験講座があっ たそうです。そもそもわら算とはなんでしょうか。

(那覇市 わらしべ長女さん)

「わら算」をお正月飾りに!?

 デジタル時代にわら算の体 験講座̶。何とも超アナログ な題材にそそられた調査員、 わら算作りを体験してきまし た。同講座は、沖縄の地域文化 おこしを主軸に活動する「NP O法人あきみよ」(棚原洋子代 表理事)が、浦添市特産の桑茶 を用いた沖縄そば作り・お点 前の体験とともに「トントン ハウス」(沖縄市登川)で実施 しました。

結び文化を伝承

 わら算とは昔、文字を持た ない沖縄の民が稲わらを結ん で数を数えたり記録したりし たという、いわば縄製の計算 機のイメージしかない調査員。 実際にわら算を作ることに興 趣が湧き、わら算作りの伝承 者が存在することにも妙に感 慨を覚えました。

 当日の講師は、「賀園飾り花 結び」主宰の玉代㔟賀園(た まよせ かえん)さん( 85 )です。 「 19 歳の頃、木目込み人形や伝 統の琉球人形を学び始めて以 来、ありとあらゆる人形を手 がけてきた」と玉代㔟さん。細 やかなその手仕事は「飾り花 結び」に及び、 48 歳で師範とし て携わることに。そして東京 で開催された飾り花結びの会 本部の展示会で沖縄のわら算 に出合ったのでした。  結び文化の伝承からわら算 を捉え、独自の歴史性を重ん じた玉代㔟さん。「出身地の石 垣島では戦前までわら算が使 われていたので、 30 年前親戚 のお年寄りを訪ねるも最初は 教えてもらえず、習得するま では何度か島へ通いました」

 稲わらを綯(な)うわら仕事 の手ほどきを受ける一方、文 献をひもときながら玉代㔟さ んは県内でもまれなわら算作 りの存在に。「これからは、地 域の講習会などで技術を伝え ていきたいと思っています」 と語ります。

結縄の収穫算

 琉球王朝時代から使われて きたわら算はおおむね、米の 量を表す大きな単位「俵」4本 を親縄にして、「斗・升・合・勺・ 才」と単位を下げて束ねた各 小縄を一列に並べた形状や、 上部に大きな単位をまとめて 束ねたもの、それらが混合し たタイプに類別されるといい ます。沖縄本島では主に取引 や契約の記録と計算などに、 宮古島・八重山諸島では人頭 税に伴う税量の徴収や記録に 用いられました。(「沖縄県史 第九巻民俗」)

 体験講座では、素材の稲わ らは今年の 11 月稲刈りを終え 乾燥を施した金武町の田んぼ からもたらされたもの。「こう べを垂れるほどの稲穂も調達 できて、まさにお正月飾りに ふさわしいわら算に仕上がり そうです」と、玉代㔟さん。

 一列形状のわら算作りは、 親縄4本を 15 ㌢ほどなうこと からスタート。稲わらを両方 の手のひらに3本ずつ、左右 をつなぐわら1本両方の指で 挟んで撚(よ)り合わせて、根 元をしっかり引っ張ってから 先はほどいた状態にします。

 さらに単位を一つ下げた「斗」 は、両方の稲わらを両手のひ らで互い違いにすり合わせ、 ひたすらすり合わせ…、この 間、無の状態の調査員。長くな ってきた縄を両膝で押さえ込 みすり合わせつつ、「これがわ ら仕事というものですね」と 調子に乗っていると、「この調 子で 60 ㌢ほどを1本用意しま す」と、玉代㔟さんから発破が かかります。

 縄はそれぞれはみ出したわ らや穂先をカットして形を整 えます。そして「俵」単位の縄 に結びを3玉こしらえた「斗」 単位の縄を巻き付けて、さら に単位を下げた異なる結びを 順次並べて巻き付けたら出来 上がりです。

 わら算は古来、地域によっ て結び方や読み方が異なると いいます。さて、出来上がった わら算を単位の大きい結びか ら読むと、合計1石(4俵)7 斗5升4合2勺8才の収穫算 となりました。





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「わら算」をお正月飾りに!?
わら算を伝承指導する玉代㔟賀園(英)さん
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わら算で仕立てた風流なお正月飾り
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わら算の収穫算(石垣島)
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