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[No.1666]

  • (金)

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「島ネタCHOSA班」2017年03月30日[No.1666]号

琉球松でギターを自作

 県内で、ギターを一から自作している職人さんがいるそうです。しかも、その方は、素材に沖縄ならではの木材・琉球松を使っているとか。興味があるので詳しく調べてください!

(沖縄市 島のギタリストさん)

琉球松でギターを自作!?

 ギターを自作、ですか!?  しかも琉球松で?
 調査を開始したところ、投稿者のいうギター職人さんは、浦添市内に「六弦工房(むげんこうぼう)」を構えるFさんと判明。聞けば、会社勤めをしながら、余暇を利用してギターを製作しているとのこと。本人の希望で顔や本名は非公開ですが、特別に工房を見せてもらえることになりました!

全くの独学で挑戦

 工房のドアを開けると――。3畳ほどの小じんまりした空間の壁に、何本ものギターがつるされています。机の前には、部品や工具が整然と並べられていました。

 「男の子が好きなものを集めた秘密基地といった感じでしょ?」とFさん。うんうん、まさにそんな感じ! 聞けば、自分の部屋だった場所を改造して使っているとの事で、まさに男のロマンです。

 「自分は基本的に、『ハコ物』と呼ばれるアコースティック・タイプのエレキギターを製作しています」

 自作第1号ギターは5年ほど前。これまでにボディーから自作したのは6本で、改造、レストア(修復)を含めると、30本以上を手がけています。

 驚くべきことに、Fさんはギター作りの勉強をしたことはなく、独学で試行錯誤しながら挑戦しているそう。

 「道具も経験もない中で製作しているので、従来とは違った独自の作り方を模索しています」

目指すは地産地消ギター

 現在50代半ばのFさんがギターを弾き始めたのは小学校5年生の時。兄の古いギターを弾き始めたのがきっかけでした。フォークブーム全盛期だった中学時代は、ギターにどっぷりだったといいます。

 ギターの製作を始めたのは、40代後半頃から。

 「その頃から、自分のギターの修理や改造をするようになったんですが、次第に飽き足らなくなって……。どこにもないオリジナルのギターが欲しくなり、自分で作ろうと思い立ったんです」とFさん。

 「こだわっているのは、琉球松を素材にして作ること。琉球松は奄美以南の琉球列島にしかないため、これまでギター材として使われたことがないんです。ギターに適しているかどうかも含めてトライしています」

 琉球松のギターが作られるのは、世界で初めてなんですね。すごい!!

 「琉球松の可能性を探り、『沖縄発』・『地産地消ギター』を目指しています」

 一方、ギター製作はあくまで趣味で、職業にするつもりはないというFさん。

 「プレーヤーの中には、自分だけのオリジナルギターを持ちたいと思う人も多いと思うんです。そんな人に、ある程度のクオリティーを確保しつつ、リーズナブルな価格で提供でき、満足してもらえたらと思っています」

 Fさんが知人の依頼を受けて製作したギターの1本が、沖縄のフォークシンガーの草分け・佐渡山豊さんに気に入られ、ボディーにサインを入れてもらったとか。Fさんは「県内のプロやアマチュアミュージシャンから徐々に認められてきたことが励み」と笑顔で話します。

 「興味のある方には作品をお見せしますし、気に入っていただければ販売も可能です。ただし、仕事が休みの時しか対応できないので事前に電話連絡をお願いします」とFさん。

 ギターについて語る時には、少年のようにキラキラした瞳になるFさん。その姿にこちらまでうれしくなって、工房を後にした調査員でした。



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