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[No.1570]

  • (金)

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「島ネタCHOSA班」2015年05月21日[No.1570]号

チンボーラーの正体は

しまくとぅばで言う「チンボーラー」。それが貝だということは知っていますが、どの貝のことを指すのか分かりません。生き物図鑑を調べてみましたが、載っていませんでした。ぜひ調査してもらえませんか?

(与那原タルガニーさん)

チンボーラーの正体は!?

 「うみぬちんぼーらーぐゎー さかなやいたてぃば ひさぬさちざち あぶなさやー したくぬわっさや すばなりなり さー うちゆぬまんなか ジサジサ ジッサイ しまぬ ヘイヘイ ヘイヘイ!」 「チンボラー」といえば、明るく軽快な酒盛歌「海ぬチンボーラー」がまず頭に浮かんできます。

 この歌は、沖縄都市モノレールの旭橋駅の車内チャイムにも使われていて、一度は耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。方言の歌詞を訳すと「海の巻き貝が逆さに立ったら(刺さるから)足の先々に注意しなさい」という意味があるそうです。

 チンボーラーといわれている巻き貝、きっと歌になるほど特別な貝なのでは。海辺の生き物に詳しい「しかたに自然案内」代表の鹿谷麻夕さんに問い合わせてみると、チンボーラーがすむ佐敷町の干潟で見せてくれるというので、行ってみましょう!

地域によって種類が違う!?

 時刻は干潮時。海の生き物たちが干潟に姿を現します。

 鹿谷さん、チンボーラーはどんな所にすんでいて、どんな貝を差しますか?

 「湾になっている干潟に多く生息していて、沖縄市泡瀬の干潟でも見られます。一般的にウミニナの仲間やヘナタリの仲間の巻き貝を総称してチンボーラーといい、先が細い形になっています。砂泥底にすみ、沖縄本島では、リュウキュウウミニナやイボウミニナ、ヘナタリ、カワアイなどの種類が生息していますよ」

 鹿谷さんがさっそく砂泥からチンボーラーを見つけてくれました。とんがり帽子のような小さな貝です。なるほど〜!それで歌の歌詞には、巻き貝の先に注意しなさいとあるわけですね。チンボーラーを素足で踏んでしまうと痛いはずです。

12センチの巨大サイズも!?

 「沖縄本島にすむウミニナの仲間は、成長しても3、4センチの大きさだけれど、西表島には約12センチのキバウミニナという貝がいますよ」

 へぇ〜。沖縄本島にすむウミニナの仲間の4倍です。それぐらい大きな貝だと間違って踏んでしまうことは、あまりなさそうですね。しかし、小さなチンボーラーがいなければ、あの歌は生まれなかったのかも…!?

 さらに「サザエの仲間のカンギクをチンボーラーという地域もありますよ」と話し、干潟に転がっている石を持ち上げました。そこには、丸い貝が石のくぼみにぎっしりとすみ付いていて、まるで貝の集合団地です。

 地域によってチンボラーを差す種類が異なるとは、なぜでしょうか。これまた不思議です。

海辺の生き物は面白い!

 貝についてもっと詳しく知りたいという気持ちが湧いてきました。

 ところでチンボーラーの餌って何ですかね?

 「ウミニナの仲間は、泥の表面に生える微細な藻類や泥に混ざった有機物を食べながら歩きます」

 それは面白い。食べ歩きの達人ですね!

 「カンギクは、岩上に生える小さな藻類をかじっています」

 それで、岩のカンギク団地ができるわけだ。

 鹿谷さんがほかにも海の生き物を見つけてくれました。岩の表面をヒルのようにはって歩くヒラムシの仲間、砂粒を粘液で固めた茶碗状のタマガイの卵のう、海水にすむウミアメンボ、大きなノコギリガザミなどもいました。海辺には珍しい生き物たちがたくさんすんでいるんですね。

 チンボーラーが地域によって種類が異なるのは、多くの貝が生息する恵まれた環境があるからなのでは…? 調査員が住んでいる地域では、ウミニナの仲間がチンボーラーといわれていましたが、自分が住んでいる地域でもぜひ調べてみてくださいね。そして、海辺に行くときは、くれぐれも素足で歩かないように。

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チンボーラーの正体は
鹿谷麻夕さん
チンボーラーの正体は
転石上にすむ丸い形のカンギク。岩上の藻類を食べる
チンボーラーの正体は
西表島に生息する巨大なキバウミニナ
チンボーラーの正体は
ウミニナの仲間は砂泥の有機物を食べながら歩く
チンボーラーの正体は
一般的にいわれているチンボーラー。先がとがっていて、しま模様が特徴
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