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[No.2020]

  • (木)

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「表紙」2024年01月25日[No.2020]号

復活した花織 未来につなぐ
読谷山花織事業協同組合

色糸が生み出す幾何学模様

 読谷村座喜味にある石造りの建物に入ると、小花のような幾何学模様があしらわれ た織物が展示されている。「読谷山花織」は読谷地域で発達したものの戦後衰退。村 内の有志たちの尽力により1960年代半ばに復活した。着尺や帯の他、現在の暮らし に合わせて小物などの製作も行っている。同組合では、花織の展示・販売の他、後継 者育成を行っており、つながれてきた技術の普及・継承の促進に取り組んでいる。

 読谷村で織られてきた「読 谷山花織」。その歴史は約6 00年前にさかのぼり、大交 易時代に東南アジアから伝わ ってきたといわれる。読谷地 域で独自に発達していったも のの、明治以降衰退。忘れ去 られようとしていた。

 その途絶えていた技法をよ みがえらせたのが、読谷村に 住む有志の人たち。すでに織 り手がいない中、聞き取り調 査や残っていた実物を頼りに 再現を目指した。後に人間国 宝となる故・与那嶺貞さん が中心となり1964年、約 90 年ぶりに現在の読谷山花 織が復活した。今では国の伝 統的工芸品に指定されるな ど読谷村を代表する織物と して知られている。

「幻の花織」 が復活

 「読谷山花織愛好会」を経 て、 76 年に設立された「読谷 山花織事業協同組合」は、伝 統工芸総合センターでの展 示・販売やコースター作りな どの体験の他、県内外の催事 への参加など普及活動、品質 管理、後継者育成を行ってい る。組合員は105人所属し ているといい、現役で活動して いるのは 30 代〜 89 歳の約 70 人。多くの織り手は波平、座 喜味、楚辺にある3カ所の共 同工房で作業を行っていると いう。

 幾何学模様が特徴の花織 は、緯糸で模様を表す「緯浮 (よこうき)花織」をはじめ4 つの織り技がある。色糸を使 い、銭花(じんばな)、風車花 (かじまやーばな)、扇花(お ーじばな)の3種の基本柄を 組み合わせていくという。

 糸染めから織りまで、一人 の織り手が一貫して手作業で 行っている。「準備だけでも1 カ月ほどかかると思った方が いいかもしれません」と話すの は製織の作業を披露してくれ た理事長の下里直美さん。手 間がかかるが「自分が織った ものをどこかで誰かが購入し て、大事にしていただいている というのがうれしい」と話す。

 経歴 40 年を超える経験豊 富な現役も活躍中だ。糸染 色や細かな作業が難しい高齢 の織り手は、負担の少ないコー スターやテーブルセンターなど の小物類を織り続けている。

伝統を学び受け継ぐ

 組合では、次世代につなぐ ため読谷村在住者を対象に 毎年後継者の育成を行ってい る。今年度の生徒は3人。2 人の経験者が講師となって指 導している。生徒の一人・読 谷村出身の上原春香さんは 「花織は読谷の伝統。後継者 育成のことを知り、やってみ たいと思いました」と参加し た。生徒の3人は「染めるの が大変」と口をそろえるが、 作業は楽しいと充実している 様子だ。

 若手の後継者不足などの 課題がある一方で、花織は全 国でも高く評価され、特に県 外の呉服問屋からの着尺の需 要は多く、供給が追いつかな いという。

 最近は現代の好みに合わせ て淡い色ベースの商品も増え てきた。着尺や帯の他にも、 テーブルセンターやコースター、 小銭入れなどの小物類など の商品も開発。伝統を生かし て現代の暮らしに合ったアイ テムもそろえて、振興に取り 組んでいる。時代の変化に対 応しながら、伝統の花織をつ ないでいく。 

(坂本永通子)



読谷山花織事業協同組合

読谷山花織事業協同組合
読谷村座喜味2974-2(伝統工芸総合センター)
TEL 098-958-4674
※体験は要予約



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読谷山花織事業協同組合
(前列左から)最年長のうちの2人で、ともに89歳の松元セ ツ子さんと楠元キクさん、(後列左から)後継者育成に参 加する上原春香さん、宮城邦江さん、案納美和子さん =読谷村座喜味の読谷村伝統工芸総合センター
写真・村山 望
読谷山花織事業協同組合
幾何学模様が特徴の読谷山花織。近年は淡い色がベースに なった花織も増えている
読谷山花織事業協同組合
コースターやストラップなどの 小物も取り扱っている
読谷山花織事業協同組合
後継者育成に参加する3人、淡い色の着尺を製織中
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