沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1999]

  • (水)

<< 前の記事  次の記事 >>

「表紙」2023年08月31日[No.1999]号

沖縄ブルースを世界に届ける

OKINAWA AMERICANA 沖縄アメリカーナ

音楽でつなぐ沖縄とアメリカ

 音楽仲間の紹介で出会ったデビッドさんとメリーさん。沖縄に移住して30年を 超えたデビッドさんと、アメリカやブラジルでの生活経験があるメリーさんは、国 際的な感覚を持つミュージシャンという共通点で引き寄せられたのだろう。お互 いの音楽性とキャラクターに興味を持ち、正式に活動を始めたという2人。ユニッ ト名「沖縄アメリカーナ」のネーミングの由来は特に印象的だ。

 両親がプレゼントしたロック バンド「エアロスミス」のアルバム を小学生のころに聞き、音楽が 好きになったというデビッドさ ん。高校生まではドラムを叩い ていたが、大学生になりギタリ ストに転向。卒業後の1992 年に旅行で訪れた沖縄が気に 入り、移住を決めたという。

 「沖縄、日本、アメリカ。いろ んな文化が混在している沖縄 のチャンプルー精神が大好きで す」と話すデビッドさんは、住 み始めた当時、宜野湾市のライ ブハウスに毎晩のように通い、 集まるミュージシャンたちと セッション。キャリアを積み、ブ ルース・ミュージシャンとして 正式に活動をスタートさせた。 99 年にはエリック・クラプトン やジョージ・ハリスンらのプロ デューサーとして知られる、デ ラニー・ブラムレットが手掛け たアルバム「Nail It Down」を 発表。「緊張しながらのレコー ディングでしたが大変名誉な 事でした」と振り返る。

 ソロ活動を続けながら他の ミュージシャンとも共演する中 で、メリーさんに出会う。

 「2014年に知人のピンチ ヒッターとして共演したのが 初対面でした。でも実はその7 年前から名前は知っていたん です。紹介すると数人が言って くれましたが実現せず、やっと 会えたんです」と笑顔で語るメ リーさん。すぐに意気投合し、 声を掛け合ってイベント出演 を重ね、 15 年にはライブツアー でカンボジアを回ったそうだ。

元アメリカ兵との出会い

 活動初期は「メリー&デビッ ド」と名乗ってイベントに出演 していた2人に 16 年、大きな出 来事が起こる。

 「観光スポットになっている アメリカのとある骨董品店で 演奏した時の事です。つえをつ いたおじいちゃんが笑顔で聴い てくれ、終演後に拍手をして近 付いて来ました。『1945年 に私は沖縄にいました』と彼は 話し、『アメリカと沖縄の音楽 をミックスした曲が聞けるな んて幸せだ』と言ってくれまし た」とデビッドさん。

 「地元のオジーやオバーの戦 争体験談は聞いていましたが、 アメリカ兵だった方に会うのは 初めてでした。沖縄戦という暗 い過去を心にしまっていたおじ いちゃんを、少しでも救えたら。 音楽を通して今の沖縄を感じ てもらえたのではないか、と思 いました」とメリーさんは語る。

 

 90 歳を超えていたというそ 音楽でつなぐ沖縄とアメリカ の老人は、家庭では一度も戦争 体験を話す事がなかったそう で、沖縄を懐かしむ姿に触れた 家族は驚いたそうだ。

 「この方のおかげで、僕たち 2人の音楽活動の目的、方向 性がはっきり分かりました」 (デビッドさん)

 「沖縄とアメリカにはそれぞ れの歴史がありますが、音楽を 通して新たなつながりを感じ る活動をしていきたいと思い ました」(メリーさん)

 2人の思いをくみ取り、当時 のプロデューサーがユニット名 を「沖縄アメリカーナにしよ う」と提案したそうだ。

沖縄の魅力を伝えるために

 音楽は人の心のドアを開く ツールになると信じ、県内やア メリカ、他国の刑務所や病院、 養護施設などの慰問を続ける デビッドさんとメリーさん。 「救いになれば」という思いと 「応援している」というメッセー ジを届けるために、今後も訪ね ていくという。

 「音楽を通してたくさんの友 達ができました。来年は結成 10 周年を迎えますので沖縄側 とアメリカ側、両方の友達が楽 しめるエンターテインメントづ くりを計画したいです。ライブ を開いて、みんなで盛り上がり たいですね」(メリーさん)

「もっといろんな場所に行き、 音楽を通して沖縄の魅力を伝 えたい。海外でブルースは知ら れていても、沖縄の音楽はあま り知られていない現実があり ます。知ってもらえるように努 力して、国や人種の壁を超えて みんながつながるといいなと 思っています」(デビッドさん)

 沖縄アメリカーナは今日も 世界のどこかに、2人らしい音 楽を届けているだろう。

(饒波 貴子)



「福州園」開園記念ライブに出演
『SHIMA ROCK CAFE LIVE 2023』
日時:9月2日(土)17時開演
会場:福州園(那覇市久米)
出演:ディアマンテス、ラコルド、 沖縄アメリカーナ
鑑賞料:無料(入園料 昼200円/夜300円は必要)
問い合わせ:☎098-943-6078
※最新情報はHP・SNSでチェック
https://okinawaamericana.com https://instagram.com/okinawaamericana



このエントリーをはてなブックマークに追加



OKINAWA AMERICANA
人々を魅了している「OKINAWA AMERICANA(沖縄アメリカーナ)」。糸満市出 身のM e r r y(メリー)こと具志恵さん(左)と、アメリカ・インディアナ州出身の David Ralston(デビッド・ラルストン)さんが、2014年に結成した音楽ユニット。 県内での活躍以外にも、海外でのライブ開催やボランティア活動に積極的だ。 近況、そして思い描くビジョンを2人に聞いた=読谷村のビーチにて
写真・西山 潤
OKINAWA AMERICANA
今月ブラジルで開催された「第19回おきなわ祭り」で宮沢和史さん、大城クラウディアさん、 アルベルト城間さんと共演(提供写真)
OKINAWA AMERICANA
アメリカ出身のギタリ スト、デビッド・ラルス トンさん
OKINAWA AMERICANA
糸満市出身、唄者とし てバンドやソロでも活 動していたメリーさん
OKINAWA AMERICANA
今年3月にはオーストラリア各地でライブを 行った(提供写真)
>> [No.1999]号インデックスページへ戻る

↑このページの先頭へ戻る

<< 前の記事  次の記事 >>