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[No.1992]

  • (金)

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「表紙」2023年07月13日[No.1992]号

貝殻細工の世界へようこそ
貝がらの店 丸仲工芸 中村弘子さん

貝殻が素材のアート作り

 本部町備瀬のフクギ並木を進み、広々とした敷地内に入ると「貝がらの店 丸仲工芸」がある。宜 野湾市で手芸店を長年営んでいた仲村弘子さん(84)が生まれ故郷の備瀬で2003年にオープン した店だ。商品は仲村さんの温かい人柄とともに県内外の人たちに親しまれてきた。ものづくりが 「楽しい」という仲村さんに話を聞いた。

 奥行きのあるスペースに足 を踏み入れると、貝殻でできた 置物やアクセサリー、装飾品が 並ぶ。さまざまな色や形、大き さの貝殻を組み合わせて作っ た商品が所狭しと並ぶ様子は 圧巻だ。

 本部町備瀬の「貝がらの店 丸仲工芸」では、店主の仲村弘 子さんが接着用の器具「グ ルーガン」を手に持ち、作品作 りに励んでいる。「貝に合わせ て作品ができ上がる。貝があれ ば何でも作れる」と話す。現在 はシーサーの置物を制作中。 色合いが異なる貝殻を一つずつ 重ねて形作っていく。シーサー 一対が完成するのに約2日間 かかるという。

 店内に置かれているのは国 内外から仕入れた貝殻細工に 加え、仲村さん手作りのオリジ ナル商品、県産を中心とする 貝殻など。取り扱い数は数え きれず「どれぐらいあるか分か らない」と笑う。そんな貝殻に あふれた仲村さんの暮らしが 始まったのは今から約 17 年前 のことだ。

故郷で一からのスタート

 備瀬出身の仲村さんは 20 年 前の2003年に夫憲一さん と二人の故郷に戻ってきた。義 母の介護や晩年入退院を繰り 返した夫の世話をする傍ら、 3年後に自宅の庭先で貝殻の 店を始めた。小さな露店のよ うだったという。「 10 年前にう ちの人が亡くなった後、お金を ためても何にもならないと思っ て、どんどん(スペースを)増や していった」と話す。

 以前は手芸店を 35 年間営ん できた。旧コザ市(現沖縄市) で「ひろこ手芸品店」を7年 間、結婚後に宜野湾市我如古 で「なかむら手芸店」を 28 年間 経営した。洋服や小物作りも できる仲村さんは、カルチャー スクールや老人センターなどの 講師も務めてきた。ハンドメー ドの人形「カントリードール」 は注目を浴び、展示会を開催 したり、本などでも紹介された りしたという。

 備瀬に移った当初は「(手芸 貝殻が素材のアート作り 店の)売れ残った商品を持って きて店をやろうと思った」が、 目を使う作業はネックだった。 そんな時「貝殻屋さんをやって みたら」とおいに勧められたの がきっかけとなった。 68 歳から の再スタートに「最初はみんな に笑われた」と話す。貝殻は海 岸などで自ら収集した。作品 を作るにはさまざまな種類が 必要になるため、自分で集める には限界があった。「貝の卸屋 さんを探すのに苦労した。名刺 を持って、いろいろなお店に行っ て聞いて回った」と振り返る。

 オープン後は県外からの観 光客も数多く立ち寄るように なった。沖縄の海をイメージす る貝殻のアイテムは土産とし ても好評で、十年以上にわたり 来てくれるリピーターにも恵 まれた。日本中の人と話をす るのも楽しみの一つだ。

 貝の魅力はたくさんあると いう仲村さん。「どんな貝でも 縁起がいい。財産に関する漢字 は貝の字がついている。スイジ 貝などは魔除けにも使われて きた」と笑顔を見せる。

一つ一つのステップ目標に

 「作るのが楽しくて、仕事と は思っていない。趣味でやってい るようなものだから高くも売 らないし、きついとは思わな い」。頭も使う貝殻細工作りは “脳トレ„にもなっている。

 今後も楽しみながら続けて いきたいという仲村さん。「 25 年には北部でテーマパークがで きるし、その後は首里城も完 成する。お客さんがいっぱい来 ると思うから、元気でいたい。一 つ一つのステップがあれば生き がいにもなる」と話す。少し先 を見据え、今日も店先で制作 活動に励んでいる。  

 (坂本永通子)



貝がらの店 丸仲工芸 中村弘子さん

貝がらの店 丸仲工芸
本部町備瀬599
営業日:不定休
☎ 0980-48-2757



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貝がらの店 丸仲工芸 中村弘子さん
貝殻で作ったシーサーを手に持つ仲村弘子さん。店内にはさまざまな 貝の雑貨が並ぶ。商品は映画や写真集の撮影に用いられたこともある =本部町備瀬の「貝がらの店 丸仲工芸」
写真・村山 望
貝がらの店 丸仲工芸 中村弘子さん
人気のシーサーやフクロウの置物。 土台の木はフクギを使用している
貝がらの店 丸仲工芸 中村弘子さん
金魚鉢やガラスを使った ランプなども制作する
貝がらの店 丸仲工芸 中村弘子さん
金魚鉢やガラスを使った ランプなども制作する
貝がらの店 丸仲工芸 中村弘子さん
グルーガンで貝を接着していく仲村さ ん。さまざまな種類の貝殻を組み合わ せて慣れた手つきで立体的に作り上 げていく
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