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[No.1701]

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「表紙」2017年11月30日[No.1701]号

ザ夫婦

ザ・夫婦(み〜とぅ) 35


食堂faidama 高江洲 美沙さん
高江洲 毅さん

県産食材の新たな魅力発信

 東京の沖縄料理店に長年勤めていた高江洲毅さん(47)と妻の美沙さん(40)が二人三脚で営む「食堂faidama(ファイダマ)」。島野菜をたっぷり使った優しい味わいのメニューで、県産食材の新たなおいしさと食べ方を提案している。二人が目指すのは、離れて気付いたふるさとの食材の魅力を伝え、日本各地のおいしいものとの出合いを肩肘張らずに楽しんでもらえる店づくり。「島野菜の良さを地元の若い世代にも伝えたい」と話す。



「食いしん坊」夫婦の食堂

 那覇の浮島通りから一本入った場所にある「食堂ファイダマ」。 調理は毅さん、接客と配膳は主に美沙さんが担当している。客席から厨房(ちゅうぼう)がよく見える。二人の息の合った連携は実に小気味いい。

 料理は地元の食材が主役で、どれもさりげない小技が効いている。今の時季なら、クワンソウと柿をピクルスにした秋らしい前菜や、伊良部島産カツオのなまり節とクレソンをニンジンのドレッシングであえたサラダなど。

 「週1回は農産物直売所を5店ほど回ります。和食を中心に、親しみやすい料理を心掛けていますね」と毅さん。

 島カボチャやベニイモのマリネ、バンシルーのコンポートなど、身近な食材の魅力を再確認できる料理も多い。「地元の人にこんな楽しみ方もあるんだって思ってもらえるとうれしい」とほほ笑む美沙さん。沖縄の食材に対する二人の思いは熱い。

沖縄料理が結んだ縁

 毅さんの経歴は少し変わっている。岐阜の航空専門学校を卒業した後、航空整備士として6年働いていた。バブル崩壊のあおりを受け、勤め先と仕事内容が変わったことを機に、当時興味があった料理の道を志す。まだ沖縄に戻る気はなく、東京で調理師免許を取得。厳しい環境に身を置こうと考え、懐石料理の店を仕事先に選んだという。「料理人としては遅いスタートでしたが、必死にやった分認められるのがうれしかった」と振り返る。

 2年後、以前バイトをしていた銀座の沖縄料理店から声をかけられ、転職。上京したての美沙さんとはこの店で出会った。

 「つかみどころのない人だったけど、いつも親身に相談に乗ってくれた」と美沙さんは思い出す。休みが同じ二人は一緒に出掛けるようになり、自然な流れで交際に発展した。「沖縄で店を持ちたいと考えていましたが、彼女は明るくて責任感も強い。一緒にできたら楽しいなと思った」。2007年に結婚。毅さんが40歳になる頃に沖縄に帰ると決めた。

 東京で働いた10数年間、何度かの沖縄ブームがあった。「沖縄料理や食材、方言の意味など、お客さんからたくさん質問を受けました。知識不足で、何となくしか説明できないのが悔しかった。実家に電話したり、本を読んだりして勉強しました」と、美沙さんは話す。沖縄の食材に興味を抱いたのもこの頃だ。「島野菜のおいしさ、沖縄に根付く医食同源の大切さを、島にいた頃は気付かなかった。また、バイトとして入ってきた沖縄の子に、ヘチマを知らない子がいたんです。若い世代にも地元の食材の魅力を伝えられる店にしようと考えました」。14年に帰郷、翌年4月に店を開いた。

四季を感じてほしい

 店では定食を提供。食材に応じて前菜やメインを変えている。野菜やハーブは毅さんのお父さんが店のために栽培したものも多く使っていて、時に店頭でも販売している。

 「四季を感じてほしくて、日本各地の旬な食材も取り入れています。冬には父の畑から、美らキャロットが収穫できます。メニューを考えるのは大変ですが、食べたいものを言い合いながら決めていますね(笑)」

 出会って19年、結婚して10年。職場が同じで、一緒に過ごす時間は必然的に長い。けんかもするが「偏屈で」「頑固おやじで」と茶化し合う様子から、仲の良さと強い絆がうかがえる。

 「ファイダマ」とは、美沙さんの故郷・石垣島の方言で「食いしん坊」という意味。食べるのが好きな二人のもてなしは、やはり格別。今日も多くの人の胃袋を満たす。

(徳嶺綾子)



円満の秘訣は?

毅さん: 僕は一晩寝たら忘れるけれど、彼女は答えを出すまでしっかり考えたいタイプ。話をよく聞くようにしています。時には我慢も大事かな(笑)。
美沙さん: 会話することだと思います。夫は黙々と作業をするのが好きな人なので、私からよくちょっかいを出していますね。何でも話せる、いい相談相手です。

プロフィール

たかえす・つよし:1970年生まれ、那覇市出身。91年に中日本航空専門学校卒業後、航空会社に整備士として勤務。98年より東京に移り、調理師学校で調理師免許取得。日本料理店で2年、沖縄料理店で14年勤める。2007年に美沙さんと結婚。14年に帰沖し、15年に那覇市松尾で「食堂faidama」オープン

たかえす・みさ:1977年生まれ、石垣市出身。95年、専門学校に通うため那覇へ。98年に上京し、沖縄料理店で14年勤めた後、開業のためにカフェやデリショップなどで経験を積む。現在は「食堂faidama」の接客・調理補助を担当。民謡酒場を営んでいた両親の影響で、小学5年生より舞踊を習っている

食堂faidama 那覇市松尾2-12-14 ☎098(953)2616

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高江洲 美沙さん 高江洲 毅さん
高江洲毅さんと妻の美沙さんが手にしているのは、毅さんのお父さんが作ったパパイヤをはじめとする島野菜。カウンター横ではその時々の採れたて野菜や、ヘルシーなデリなども販売している=那覇市松尾 
写真・村山 望
高江洲 美沙さん 高江洲 毅さん
約5年前に築地で撮影した写真。いつも深夜まで仕事をしていた
高江洲 美沙さん 高江洲 毅さん
二人が„父畑(ちちはる)“と名付けている、お父さんの畑で採れた野菜。お父さんは農業未経験者だったそうだが、今ではさまざまな野菜を育てる名手だ
高江洲 美沙さん 高江洲 毅さん
お魚の定食。魚は全て美沙さんのいとこが働く八重山漁港から仕入れている。この日は「エチオピア」と呼ばれるシマガツオを使用。マンボウなど、珍しい魚がよくお目見えする
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