沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1678]

  • (日)

<< 前の記事  次の記事 >>

「表紙」2017年06月22日[No.1678]号

ザ夫婦

ザ・夫婦(み〜とぅ) 12


フィニッシングスクール西大(にしおお)学院
理事長 西大 強さん
学院長 西大 八重子さん

「お帰りなさい」の場所に

 23年前、旧知念村安座真に女性のための最後の学校「フィニッシングスクール 西大学院」を開校した西大強さん(72)と八重子さん(67)。料理教室を主宰し、ヨーロッパのプリンセスたちが社交界デビューのために学ぶスイスの学校を体験した八重子さんが、家政学と幅広い教養の習得とアイデンティティーを誇る独自の校風を沖縄の地に根付かせた。「卒業生が里帰りできる場所でありたい」と、夫婦は学院から巣立った女性たちの活躍を見守り続けている。



これからの女性を。2人百年の計

 1979年、強さんと八重子さんは母親同士の知人の縁で結ばれた。「西大の母に好感を持った」が八重子さんの結婚の理由。沖縄戦で夫を亡くし、旧玉城村の百名収容所で妊娠7カ月の強さんを出産した女性である。八重子さんは母1人子1人の西大家に嫁いだ。

 結婚から10年、子宝には恵まれずにいた。40歳を目前に、八重子さんは15年間勤めた調理師養成学校を辞め、新築間もない自宅の台所で料理教室を計画する。「10人以上受講生を取ってはいけない。一人ひとりに丁寧な教え方ができるなら」と、強さんは条件を付けた。

 月に1度の「料理と生活知識の教室・西大学院」はテーブルコーディネートなどを教えながら2年間で4クラスに増えた。八重子さんは1年コースの学校を造る夢を募らせていった。

 「スイスのフィニッシングスクールに参加したり、類似の学校の情報を集めたり、本を出版するなど開校の足がかりを固め、まさに外堀・内堀を埋められた豊臣秀頼の心境だった」と強さんは笑う。それは、退職金をつぎ込み自宅を手放し、百年の計という夢の共有であった。

導かれた敷地

 「西大学院」は、南城市安座真の集落から一歩奥へ入った緑の大地にある。この地に落ち着くまでに数年を要したと、敷地探しに奮闘した強さんは言う。「場所を選定する間に急速に発展した地域もあった。女子教育の場として将来的に環境の変化がない穏やかな場所、さりとて辺ぴな地域でも困る」

 当時の佐敷町、知念村、玉城村など、南部地域に焦点を当てたさなか、強さんはある場所に開けた形状の土地が現れる夢を見る。その朝、夢のとおり探し当て、現在地にたどり着いたという。

 2人は緑の野原に学校兼住宅を建築した。八重子さんは、子どもの名付け親になれなかった強さんに学校名を託した。「フィニッシングスクール西大学院」の名付け親は強さんである。

 八重子さんは言う。「ここには朝も昼も夜も、晴れの日も雨の日も、夏も冬も気持ちの良い暮らしがあります。斎場御嶽(せーふぁうたき)の神様が見守って下さっている場所です。夫は百名の収容所で生まれた、何かしら縁を感じています」

24歳の夢を今に

 「新しいことを始めるのに年齢は関係ないし、挑戦も恐れることはない、新しい人生の出発、夢があってすてきなことだと思う」

 当時電電公社(現NTT)に勤務していた強さんに、八重子さんは学校設立への思いを伝えた。そして今、「理事長である夫のサポートがあって私は100%生徒に向き合える。経営に苦労しているのは夫」と、二人三脚の人生を語る。

 常に妻のサポートに徹してきた強さんはある手紙を預かっている。それは八重子さんが24歳のころ、ロシア文学に憧れて鉄のカーテンの向こう、ソビエト連邦へ旅を思い立ったときのこと。父の反対を押し切った旅行であった手前、遺書のように父へ手紙を残したという。

 「最後の夢は夫が理事長で私が学院長の学校を開くこと。子どもが生まれて成長したら琉球料理の文化、歴史、作法を調べてみたい」

 そのように書き残した娘の手紙を父は封を切らずに旅行から戻るのを待っていた。その手紙は今、強さんの手に渡っている。「僕は出会う前から選ばれていた」と苦笑する強さんだが、八重子さんと共に琉球料理の文献調査という新たな夢に向かっている。

(伊芸久子)



円満の秘訣は?

強さん:夫唱婦随

八重子さん:実家の父から、夫といさかいをしても西大のお母さんの味方だと、嫁ぐ覚悟を諭されました。食事は家族そろってするという教えも夫婦円満の秘けつにつながるでしょう。

プロフィール

にしおお つよし: 1945年那覇市生まれ。日本工学院電子工学科卒業後、琉球電信電話公社(現日本電信電話株式会社)に入社し企画・設計業務に携わる。95年同社を退職し妻と共にフィニッシングスクール西大学院を開設。西大学院理事長。趣味は俳句、美術品鑑賞、料理
にしおお やえこ: 1950年那覇市生まれ。琉球大学家政学科卒業。スイスのフィニッシングスクール「ヴィラ・ピエールフー校」特別コース修了。95年「フィニッシングスクール西大学院」開校。管理栄養士。調理師他。西大学院長、沖縄美ら島財団琉球食文化研究所研究顧問

西大八重子の料理教室8月期受講生募集中
フィニッシングスクール西大学院
南城市知念安座真860
お問い合わせ ☎098-948-1900
http://cooking.nishioo.org/

このエントリーをはてなブックマークに追加



西大強さん 西大 八重子さん
西大強さん、八重子さんは38年前に結婚。八重子さんは、新婚旅行で訪れた強さんの父の故郷石垣島で買い求めた八重山上布の着物に久方ぶりに袖を通した=南城市知念安座真の「フィニッシングスクール西大学院」 
写真・村山 望
西大強さん 西大 八重子さん
西大学院一期生卒業式 1995年
西大強さん 西大 八重子さん
趣味の男の料理を披露する強さん
西大強さん 西大 八重子さん
新聞社の料理講習会で講師を務める
西大強さん 西大 八重子さん
毎日の昼食は、学院の学生たちとテーブルを囲む
>> [No.1678]号インデックスページへ戻る

↑このページの先頭へ戻る

<< 前の記事  次の記事 >>