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[No.1642]

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「表紙」2016年10月13日[No.1642]号

父娘日和

父娘日和 28


有限会社 三光食品 代表取締役 嘉数 清さん
カフェ103 店長 池原 香さん

気が付けば父と同じ道へ

 南風原町新川の高台から見渡す、見晴らし抜群の景色が人気の「カフェ103(イチマルサン)」。女性客の多く集うおしゃれなカフェだが、ボリュームたっぷりの料理を提供しているのも特徴だ。名物料理は限定メニューのスペアリブ。店長・池原香さん(33)の父・嘉数清さん(68)が、週に2回、3時間かけて焼き上げる。スペアリブをはじめとする肉料理に使うのは、清さんが経営する精肉卸業者「有限会社 三光食品」から仕入れた自慢の肉。経営者である父の多忙な後ろ姿を見て育った香さん。「自分が店長になって、やっと父の大変さが分かりました」と笑う。



「この子なら大丈夫」 父の信頼

 「昔は、どうして父はあんなに忙しそうにしているんだろう、と思っていましたね」

 子ども時代の父の思い出をそう振り返る香さん。「カフェ103」の店長に就任して経営の苦労と難しさを知ってから、「その時の父の大変さが分かりました」と実感を込めて話す。

 香さんの父・清さんは、那覇市識名で生まれ育ち、高校卒業後、東京の大学に進学。本土でいったん就職したが、1972年の本土復帰を機に帰沖し、印刷、建築、食肉などいくつかの業種の仕事を経験。

 その中で「自分は使われるタイプではない」ことに気付き、「小さくてもいいから、自分で会社を経営してみたい」と起業を決意。30歳の時に「有限会社 三光食品」を設立した。

 清さんは、当時、鹿児島の畜産業者が豚の中身やテビチを有効に活用できず、持て余していたことに着目。あらかじめテビチを焼いておくなど、沖縄ですぐ使用できるような加工を施して出荷することを現地の畜産業者に提案した。

 鹿児島の業者にとっても、沖縄の業者にとっても大きなメリットのあるこの方法は、見事にヒット。三光食品は順調に業績を伸ばしていった。

母との別れで深まった絆

 「そのころは、外で働いて稼ぐのが父親の役割だと思っていました。正直、娘は母親に任せていましたね」

 香さんが子どもの頃は、会社が多忙を極めた時期。家庭よりも仕事や付き合いを優先させ、家にいる時間は多くなかったという。

 香さんは明るく優しい母・美代子さんの愛情を一身に受けて成長。しかし、香さんが東京の大学に進学してほどなく、美代子さんは病に倒れ、帰らぬ人となってしまう。

 「それから、『自分が親の役目を果たさないと』と意識するようになりました」

 大学の卒業式にも足を運び、卒業後は、2人で一緒にインドへ旅した。

感覚が近い2人

 「私も香も、旅行が趣味。娘は大学時代、バイトしてはどこかに旅行していました。香と私は、そういう部分で息子2人よりも考え方が近いし、香には経営感覚もある」と清さん。

 大学時代、世界中を旅して回った香さんは、卒業後、日本航空に勤務。東京でOL生活を送っていたが、3年後、父に沖縄に呼び戻される。

 「私は副業で不動産も手がけているのですが、ある物件を利用してカフェをやりたいと思い、娘に白羽の矢を立てました。この子だったら大丈夫という感じがありました」

 父からカフェの店長をやってみないかと持ちかけられた香さんは、「面白そうだな」と引き受けることに。帰沖後2年間、県内のカフェで修業した後、2012年7月、南風原町新川に「カフェ103」をオープン。しかし、「店長をやってみて初めて、その大変さが分かった」と苦笑いする。「人を雇うのがこんなに難しいとは思いませんでしたね」

 オープン直後に結婚し、翌13年には長女が誕生。今年の6月には長男を出産したばかりで、子育てに奮闘中だが、ふと仕事のことを考えていることも多いという。「気がつけば、私も父と同じ道を歩いているのかもしれませんね」と香さんは笑う。

 「香は接客が上手で、特に笑顔がいい。お客さんに感謝の気持ちが伝われば、リピーターになってもらえる」という父の言葉に、香さんも「常連さんに支えていただき、一緒に成長しているという感覚があります」とうなづく。

 カフェ103の店名の由来は、香さんの誕生日10月3日と「103=とうさん」の語呂合わせ。2人の思いがこもったこの店で、父娘の絆はこれからも深まっていくことだろう。

(日平勝也)



プロフィール

かかず・きよし
 1948年生まれ、那覇市識名出身。東京の大学を卒業後、本土で就職するが、1972年の本土復帰を機に帰沖。いくつかの異なる業種の仕事を経験した後、30歳で「有限会社 三光食品」を設立し、代表取締役に就任。旅行や料理など、趣味・関心も広い

いけはら・かおり
 1983年生まれ。東京の大学を卒業後、日本航空に3年間勤務していたが、「カフェの店長をやってみないか」という父・清さんの呼びかけに応じ帰沖。2年間県内のカフェで修業を積んだ後、2012年7月、南風原町新川に「カフェ103」をオープン。同年結婚、翌13年には長女が誕生。今年の6月には長男が誕生し、現在子育てに奮闘中

カフェ103
南風原町新川6−3
☎098(888)6060
営業時間:11時半〜16時(LO=15時)
定休日:火曜

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嘉数清さん 池原香さん
「カフェ103」にて、同店で提供するスペアリブとステーキ用の肉を手にする嘉数清さんと池原香さん。カフェ103で調理する肉はすべて、清さんが経営する精肉卸業者「有限会社 三光食品」から仕入れている 
写真・村山 望
嘉数清さん 池原香さん
1984年5月、香さんが1歳の時
嘉数清さん 池原香さん
カフェ103の名物料理、スペアリブ。水曜と土曜の朝、朝7時から3時間かけて清さんが自ら焼き上げる限定メニュー
嘉数清さん 池原香さん
カフェ103店内。木の床や家具に心が安らぐ
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