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[No.1606]

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「表紙」2016年02月04日[No.1606]号

母娘燦燦

母娘燦燦 — おやこ さんさん — 43



沖縄そばと郷土料理の店 悠愉樹庵
代表 島袋 清子さん 天願 彰子さん 島袋 有美子さん

家族で守る伝統料理

 中城村屋宜にある沖縄そばと郷土料理の店「悠愉樹庵(ゆうゆじゅあん)」。新鮮な県産食材を使用した「てびち定食」や「沖縄そば」など、伝統料理が味わえる人気の店だ。代表の島袋清子さん(68)は、沖縄の食文化が失われていくことに危機感を感じ、JA沖縄中央会を退職後に同店をオープンした。「娘たちがいなければこれまで続けてこられなかった」と語る清子さん。開店当初からサポートしてきた4女の天願彰子さん(30)や5女の島袋有美子さん(29)をはじめ、5人の娘が母を支え続けてきた。手間暇かけた母の料理を家族全員で守っている。



沖縄の食文化守りたい

 「木々に囲まれた自然の中で、のんびりゆったり愉(たの)しく食事をしてほしい」。そんな思いを込めて名付けられた「悠愉樹庵」。古民家を改装した隠れ家のような同店には、観光客や地元住民など、県内外から沖縄の伝統料理を味わいに人々が訪れる。

 1男5女、6人の子どもを夫の一良さん(68)と二人三脚で育てながら、JA沖縄中央会に約30年勤務した清子さん。農協婦人部で料理教室の管理などの活動を通して「食育」に携わってきた。 手軽に作れるインスタントやレトルト食品などがスーパーに並び、食生活も変わってきた現代。便利になった一方で、本来の沖縄の食文化が衰退していくのではと懸念していた清子さんは、沖縄の食文化に関わりたいと考え、仕事を退職し、店をオープンすることを決意。

 退職から開店までの準備期間は5年間。「趣味の日曜大工ができる」と清子さんの挑戦に賛成した一良さんが、仕事が休みの週末を使い、持ち家を改装。手作りの店が完成した。



地産地消を大切に

 清子さんが目指すのは「地産地消」。料理には地元で採れた新鮮な食材を使用している。化学調味料や冷凍食品も一切使わず、みそも手作り。定食に付けるあえ物にも季節の野菜や家庭菜園から摘んできたツルムラサキやハンダマ、ツルナ、雲南百薬(ウンナンヒャクヤク)などの島野菜を使っている。

 地元の野菜を無駄なく使いたいという清子さんの思いは、幼少の食卓で培われた。母親は自ら育てた野菜や地元の食材を調理していた。虫下しとして知られてきた、海人草(ナチョーラ)などを食べた記憶もあるという。母の姿や食育の仕事を通して生活に根付いた先人の知恵や食の大切さを実感していった。

 手間暇をかけてこそ伝わるという信念のもと料理をする清子さん。てびちの煮込みは下ごしらえを合わせると2日がかり。「モヤシのひげも一本ずつ、時間をかけて取っている」と5女の有美子さん。それは、有美子さんが小さいころから変わらない。「子どものときのお弁当にも冷凍食品やインスタントの料理が入ることはなかった」と振り返る。

家族の交流の場に

 店に通い続けてくれる客とのつながりが清子さんの一番の宝だ。「おいしかった」という客の言葉はやりがいにつながっている。疲れたときや経営が厳しく辞めようかと悩んでいたときも、偶然かけられた「頑張って」という言葉に何度も救われた。

 中城村屋宜にオープンして7年目。開店当初から5人の娘たちが、仕事や子育ての傍ら、料理をする母を交互に支えてきた。

 朝から晩まで働き続ける母に、「無理をしないようにしてほしいというのが姉妹みんなの思い」と4女の彰子さんは言う。有美子さんも「何でも自分で済ませてしまうので心配。甘えるところは甘えて、頼ってほしい」と思いやる。

 そんな母のたゆまぬ努力と夫の一良さんや娘たちの協力があってこそ成り立ってきた店。「娘たちがいなければ、ここまでこられなかった」と清子さんは感謝する。

 「悠愉樹庵」は家族のコミュニケーションの場でもある。作業の合間に娘たちと親子の会話ができたり、孫の様子が聞けたりと、家族をつなぐ大切な場所だ。清子さんの味付けを間近で見てきた娘たちに味も引き継がれつつある。二女の睦子さんはすでに料理を任せられるまでに成長した。若い世代ならではの工夫やレパートリーもあり、清子さんも新しい発見や学びがあるという。

 地産地消を大切にした沖縄の家庭料理。母の思いのこもった味を今日も家族で守り続けている。

(坂本永通子)



プロフィール

しまぶくろ・きよこ
 1947年那覇市小禄生まれ。小禄高校(1期生)卒業。JA沖縄中央会に30年勤務後、平成2003年に退職。2008年11月に「悠愉樹庵」をオープン。同じく小禄出身の夫、一良さんとの間に1男5女と9人の孫に恵まれた。今月10人目の孫が誕生予定

てんがん・あきこ
 1985年那覇市首里生まれ。高校卒業後、アルバイトを経て、21歳で結婚。上は7歳から下は2カ月まで、2男2女の母。コンビニエンスストアに勤務する傍ら店を手伝っている

しまぶくろ・ゆみこ
 1986年那覇市首里生まれ。高校卒業後、航空業界の専門学校に入学。旅行会社勤務を経て、2011年から2013年まで悠愉樹庵の手伝いに3年間専念。現在は宝飾業界で接客を担当。仕事の傍ら、店を手伝っている

沖縄そばと郷土料理の店 悠愉樹庵
中頭郡中城村屋宜824-1
☎098-895-2280
営業時間:平日11時30分〜17時 / 土・祝日11時30分〜18時 
定休日:日曜日
(売り切れ次第閉店)



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悠愉樹庵
人気の「てびち定食」を前に、メニューについて話をする島袋清子さん(写真中央)、四女の天願彰子さん(写真左)、五女の島袋有美子さん=中城村屋宜の悠愉樹庵 
写真・喜瀬守昭(サザンウェイブ)
悠愉樹庵
孫の誕生日に家族で集まった時の写真。2007年
悠愉樹庵
閉店後の店内でテーブルを拭く天願彰子さん(写真右)と島袋有美子さん
悠愉樹庵
てびち定食の盛り付けをする島袋清子さん
悠愉樹庵
自慢の「てびち定食」(1000円)。国産のショウガを使用して、香りがよく、体も温まる。臭みもなく苦手な人も食べられるという
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