沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1590]

  • (金)

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「表紙」2015年10月08日[No.1590]号

母娘燦燦

母娘燦燦 — おやこ さんさん — 28

color’s café kitchen C-style
シェフ 眞喜志 エミ子さん  カラーコンサルタント兼代表 穐山 由香さん

色と料理 母と娘のコラボ

 豊見城中央病院近く、かわいらしい赤い看板が目を引く「color’s café kitchen C-style(カラーズ・カフェ・キッチン・シースタイル)」。ドアを開けると赤と黄色を基調にした明るい空間が広がる。店内の色彩設計を手掛けるオーナーの穐山由香さん(42)は「訪れるお客さまにとってこの空間が癒やしになれば」と話す。母の眞喜志エミ子さん(67)は琉球料理40年の腕前と、同店オープンのために学んだイタリア料理の知識と技術を併せて家庭的な味でもてなす。色がもたらすメンタルケアのサロンと、こだわりの料理店を兼ね備えた母と娘の夢の形だ。



自然と癒やされる色彩空間を

 もともと料理が好きだったというエミ子さん。母や料理人だった母のいとこに昔ながらの琉球料理を教えてもらい20代後半で食事処を開く。

 代々商売で成功した家系に育ったというエミ子さんは、自らの店も繁盛させるが、離婚を機にわずか2年で閉店。当時、小学校低学年だった長男と長女・由香さんを育てていくために、母親に子どもを預けてクラブで働くことを選ぶ。

 勘が鋭く気配り上手なエミ子さんは、妹とミニクラブの共同経営に乗り出し売り上げを伸ばしていった。帰宅するのはいつも夜中。それでも朝は必ず早く起きて子どもたちを学校に送り出した。

 「隣近所に„夜の女“だからって、いろいろと言われるのが嫌でした。子どもたちにも申し訳ないという気持ちもあったし、母親がだらだらしている姿なんて見せたくなかったんです」と振り返る。一方、由香さんは夜になると働きに出る着物姿の母を、祖母と一緒に見送った。そんな暮らしが10年ほど続いた後、エミ子さんは夜の仕事に区切りをつけ、念願だった琉球料理の店を始める。 



色で人生が変わった

 由香さんは県内の専門学校を卒業後、ツアーコンダクターとして働いていたが、結婚を機に退職。一時期、夫の転勤に伴い沖縄を離れて専業主婦をしているころ、エミ子さんから「テレビドラマにはまったりしないで、その時間を勉強に当てなさい」などと言われていたそう。それは結婚していても自立した女性であれ、という母の教えだった。

 由香さんは色の勉強を始めた。色には意味があり、心理的作用が働くということに興味を持ったからだ。

 23歳で結婚した由香さんは、披露宴のために選んだドレスと着物の色が黒だった。そのころ着ていた普段着も黒が多かったという。どれも無意識に選んだ色。そのことがなんとなく心に引っ掛かっていた由香さんは、書店で色に関する本を手にする。黒には「閉じこもり、反抗」などの意味があることを知り、まさに自分の心理状態だと思ったそうだ。なれない土地での暮らし、家にこもり孤独を感じながらの子育て…。いつしか心が病んでいたという。

 本を読んで、気持ちをすぐに切り替えることは難しいけれど、着る服を変えることはできると思った由香さんは、自分に似合う色や、人に良い影響を与える色を選ぶようになった。「徐々に気持ちに変化が表れ、外へ羽ばたこうと思えるようになった。大げさかもしれませんが、色で人生が変わりました」と目を輝かせる。

 その後、パーソナルカラーアナリストなどの資格を取得し、セミナーを開催するなど活躍の場を広げていく。そんな中、ここにいるだけで自然とメンタルケアになるような„色彩空間“をつくりたいと考えるように。「その空間は飲食店がいい。もちろん、料理担当はお母さん」。娘の言葉にエミ子さんは喜んだ。

2人の思いは1つ

 由香さんが店の構想を練っている間、琉球料理の店を12年で閉めたエミ子さんは、経営能力と料理の腕を買われ、あちこちから声が掛かり知人らの店舗の立ち上げに関わっていた。そうしながらもイタリア料理を学んだ。

 5年の歳月を経てようやく完成したカフェは、創作イタリアンと昔ながらの琉球料理を味わえる店。開店にこぎつけるまで「四苦八苦」と口をそろえる母娘。時には意見が合わず、ぶつかったこともある。それでも2人の目指していたものは1つ。「娘が学んだ色の知識と母が受け継いできた料理」のコラボだ。

 「夜はランチに比べて一段とグレードアップした母の琉球料理が味わえる」と誇らしげに話す由香さん。母からは、経営的な知識や考え方を学んできたが「もっともっと見習わなければ」と力を込める。

 店は間もなく1周年を迎える。母娘は思いをあらたに、前を向く。

(𥔎山裕子)



プロフィール

まきし・えみこ
1948年、恩納村生まれ。20代後半から飲食店(食堂、ミニクラブ、琉球料理の店)を経営。昔ながらの琉球料理にこだわり、亡き母の味を守り続けている。エミ子さんの長年のファンも多く、天然素材を生かしたソースやスープも好評

あきやま・ゆか
1973年、那覇市生まれ。19歳でツアーコンダクターとして働き始める。同時期に、母の経営する琉球料理の店を手伝い飲食店のサービス業について学ぶ。“魅せる技術”であるパーソナルカラーアナリストを取得し、サロンを立ち上げセミナーなどを展開。2014年、“色彩を楽しむ”「color’s café kitchen C-style」をオープン。高校3年生と中学1年生の2人の息子の母でもある

color’s café kitchen C-style
豊見城市宜保401 シャトレTKⅡ1F
☎098-856-2108



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color’s café kitchen C-style
眞喜志エミ子さん(右)と娘の穐山由香さんは仲の良い母娘であり、夢や仕事について語り合うビジネスパートナーでもある=豊見城市宜保 
写真・村山 望

color’s café kitchen C-style
由香さんの長男・剣(つるぎ)君の中学校の卒業式。右は次男の刃(じん)君
color’s café kitchen C-style
彩り豊かな「切り身魚のハーブグリーンソース」。心も体もリラックスしてバランスを整える、をテーマに配色
color’s café kitchen C-style
体力、気力を高める赤色ソースで彩る「鶏肉のトマトジャンソース」
color’s café kitchen C-style
color’s café kitchen C-styleは、赤と黄色を基調にした明るく落ち着いた店内
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