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[No.2020]

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「島ネタCHOSA班」2024年01月25日[No.2020]号



 沖縄県民なら、誰もが毎日目にするガジュマルの木。でも、その花って見たことがあ りますか? ガジュマルにもちゃんと花があるのですが、そこにはあっと驚く仕組みが隠 されているんです。島ネタCHOSA班が調べてきました。

ガジュマルの花、どこにある!?

 話のきっかけは、調査員仲 間の雑談から。「そういえばガ ジュマルの花って見ないよね」。 言われてみれば…!

花があるのはどこ?

 というわけで、調査員は琉 球大学博物館「風樹館」へ。 学芸員の佐々木健志さん(助 教)にお話を聞きました。

 ガジュマルにもちゃんと花が ありますよ、と佐々木さん。 えっ、実はよく見かけても、 花が咲いているのを目にした ことはないのですが…。

 調査員の疑問に対して、実 のように見えるのは、実際は 「花嚢(かのう)」と呼ばれる 部分という返答。花軸が肥大 して袋状になり、その内側に 小さい花をたくさんつけるの だそうです。ええーっ、外から 見えない内側に花 !?

 ちなみに、ガジュマルはクワ 科のイチジク属。私たちがイ チジクの実と思っている部分 も、実は花嚢が熟した果嚢 (かのう)と呼ばれる部分で、 イチジクのつぶつぶは、一粒一 粒が、もともとは花だったの だそう。

コバチと共生

 しかし、なぜわざわざ外か ら見えない場所に花を咲かせ ているのでしょう。さらに「ど うやって受粉するの?」という 疑問が調査員の頭に浮かびま す。そこには、驚異の仕組み が隠されていました。

 鍵となるのは、「ガジュマル コバチ」という昆虫の存在。

 ガジュマルコバチは、体長数 ㍉程度の小さなハチの仲間。 羽のあるメスが、花嚢の先の 小さな穴から中に入り込ん で、花粉を媒介します。

 ガジュマルの花嚢には、おし べだけの雄花とめしべだけの 雌花があって、花嚢に潜り込 んだメスバチは、雌花の花柱 の先から産卵管を差し込み子 房に産卵します。

 ここで少々複雑なのが、雌 花には花柱が長いもの、短い ものの2種類あること。花柱 が長いと産卵管が子房までと どかず、その雌花には種がで きます。一方、花柱が短いと、 子房に卵を産むことができ、 ふ化した幼虫は大きくなる 子房を食べて成長できるのだ とか。

 「つまり、ガジュマルの花嚢 の中には花粉を運んで くれるガジュマルコバチ の幼虫を育てるための 花と、種をつけるため の花の両方が咲くんで す」と佐々木さん。

 幼虫は花の中でさな ぎになり、雄の方が少 し早く羽化して出てき ます。雄は、雌が閉じ 込められてる花に穴を 空け雌と交尾します。 交尾をすませた雌は、雄花の 花粉を身体につけて花嚢の外 へと出て、別の花嚢へと飛んで いきます。雄には羽がないの で、花嚢の中で一生を終える のだそうです。

 「熟した果嚢を鳥が食べ、 樹上などで糞をするとそこで 中の種が発芽します。そこか ら気根を地面に伸ばし、やが て元の木を絞め殺してしまう ため、ガジュマルは絞め殺しの 木と呼ばれます」。なるほど、 そういうわけでしたか。

 「イチジク属の植物は、全 てポリネーター(花粉の媒介 者)と植物が1対1の関係に あります。ガジュマルの場合 は、ガジュマルコバチという相 手がいて、お互いがいないと種 をつけることも、繁殖もでき ません。こういう関係を『絶 対共生』といいます」。日本に はイチジク属の仲間が 16 種、 県内には 13 種(アコウ、イヌ ビワ類など)があるそうです が、それぞれ対応するコバチ がいるとのこと。

 身近なガジュマルにもこん な複雑な自然の仕組みが働い ていたことに驚いた調査員。 いや〜、勉強になりました。 皆さんも身近な方にぜひ伝え てみてください!



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“ガジュマルの花、どこにある!?"
佐々木健志さん
“ガジュマルの花、どこにある!?"
ガジュマルの花嚢の断面写真。花嚢の内側に小さな花 をたくさんつけており、ガジュマルコバチのオスとメ スが確認できます(写真提供/佐々木健志さん)
“ガジュマルの花、どこにある!?"
ガジュマルと同じイチジク属の木・ アコウと絶対共生関係にあるアコウ コバチ。花嚢の上で、穴の様子をう かがっています(写真提供/村山望)
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