沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1987]

  • (水)

<< 前の記事  次の記事 >>

「島ネタCHOSA班」2023年06月08日[No.1987]号



 イボイモリはイモリなのに、大人になると陸上で生活すると聞きました。 名前は知っているけど、なかなか出合える生き物ではないので、どんな暮ら しをしているのか知りたいです。

 (沖縄市 アンダーソン公園)

陸上で生活する両生類、イボイモリってどんな生き物?

 イボイモリ、新聞やテレビ などで名前を見かけることは ありますが、何を食べて、どん な一生を送っているか、見当 もつかないですね…。仮に山 中などで見つけたとしても、 国内希少野生動植物種と沖縄 県指定の天然記念物に指定さ れているため、触れたり、捕獲 することはできません。一般 の人が長時間観察する、とい うのは難しいのです。

 ということで、調査員は沖 縄の両生類を長年にわたり調 査するエキスパートに話を聞 くことにしました。元県立博 物館・美術 館副館長の 千木良芳範 さんです!

太古のグッドデザイン

 まずは、名前の由来でもあ る体の”イボ“について尋ねて みました。

 「あれは肋骨のできそこな い、いわば『未完成の肋骨』な んです」

 楽しげにそう説明する千木 良さん。人間を含めた哺乳類 や爬虫類などは、背骨からカ ーブを描いて肋骨が延びてい ます。主な機能は、内臓の保護 であり、これは、陸上に生息す る脊椎動物に共通しています。 一方、カエルなどの両生類に は、肋骨がありません。

 イボイモリの近縁にあたる 先祖は、古生代のデボン期(4 億1600万〜3億5920 年前)に、水中から地上に進出 した生物だといわれています。 カーブを描かず、横方向に張 り出した肋骨は、陸上で生活 を始めたばかりの原始的な生 物に見られる特徴なのです。 千木良さんはこの特徴が、デ ボン期の環境に適応した「グ ッドデザイン」であり、現在で も問題なく通用するものであ ると考えています。昼間は落 ち葉の下や穴の中に隠れ、じ っとしていることが多いイボ イモリのスローなライフスタ イルも、種が存続してきた一 因のようです。

幼生以外は陸上に

 動きもゆっくりなイ ボイモリ。食べ物もカ タツムリやミミズなど 捕獲に苦労しないもの で、消化も時間をかけ て行うそうです。

 イボイモリのもう一 つの大きな特徴が、水 中で暮らすのは幼生 (オタマジャクシ)の時 のみ、という点。成体 は基本的に水に入らず、産卵 も陸上にするそうです。卵は、 水たまりや沢の周辺などに産 みつけられます。雨に合わせ て孵化し、幼生は水場まで跳 ねていくのだとか。「孵化した 幼生が一番最初にするのはジ ャンプです」と千木良さんは 説明します。

 ところで、沖縄島でのイボ イモリの生息場所ってどこだ と思いますか?

 世界自然遺産に登録された やんばるをイメージする人も 少なくないと思うのですが、 実は中南部の小規模な森でも 見つかるのだとか。千木良さ んは「中南部で生息するイボ イモリは、かつて沖縄島全体 が豊かな自然に覆われていた 時の名残だと考えられます」 と教えてくれました。

 イボリモリを通して、身近 な場所にも豊かな自然がある ことや、それを育む生物多様 性にも気付いてほしい̶。そ んな思いを伝えて、千木良さ んは、話を結んでくれました。



※記事中の「イボイモリ」という和 名は、沖縄島と周辺離島に生息す る「オキナワイボイモリ」を指して います。国内に生息するイボイモ リは1種類だとされてきました が、昨年、奄美大島・徳之島に生息 するものと沖縄島と周辺離島のも のは別種であると発表されまし た。現在は「オキナワイボイモリ」 と「アマミイボイモリ」の2種類に 分かれています



このエントリーをはてなブックマークに追加


陸上で生活する両生類、イボイモリってどんな生き物?
千木良芳範さん
陸上で生活する両生類、イボイモリってどんな生き物?
イボイモリの成体(14~20 ㌢)。体の横にある“イボ”は、 背骨から横に張り出した肋 骨の先端が皮膚に浮かび上 がったもの。原始的な生き物 の特徴です。寿命や、産卵期 以外はどう過ごしているの か、などまだまだ謎の多い生 き物です(撮影・村山望)
陸上で生活する両生類、イボイモリってどんな生き物?
孵化間近のイボイモリ の卵。直径5㍉ほど
陸上で生活する両生類、イボイモリってどんな生き物?
卵から生まれたイボイモリの幼生には、頭の横に外鰓 (がいさい、体の外に飛び出したエラ)があり、ウーパー ルーパーを思わせます(撮影・村山望)
>> [No.1987]号インデックスページへ戻る

↑このページの先頭へ戻る

<< 前の記事  次の記事 >>