沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1805]

  • (木)

<< 前の記事  次の記事 >>

「島ネタCHOSA班」2019年12月05日[No.1805]号



 いよいよ今年もクリスマスシーズンですね。島ネタCHOSA班でも、何かクリスマスらしさを感じさせる話題を…ということで、今回は県出身作家が描いた宇宙を思わせる点描画をご紹介します。

点描で宇宙を描く画家?!

 ある日、クリスマスらしい話題を探していた調査員のもとに、ある県出身作家の個展の案内が届きました。

 12月下旬に沖縄市で開催されるその個展のタイトルは「禅タッチ! 宇宙点描画展」。”宇宙点描画“という不思議な名称にひかれ、絵を確認してみたこところ―。

 宇宙空間を思わせる闇の中に、渦を巻く銀河や星雲が浮かび上がる幻想的な絵。光のもやのように見えるものは、拡大してみると、すべて細かい点で出来上がっています。描いたのは、水華(すいか)さんという県出身作家。絵に引かれた調査員は、那覇市内にある水華さんのアトリエを訪れました。

ボールペンのみで描く

 現れたのは、ニコニコとした笑顔の男性。自ら豆をひいたコーヒーで調査員を温かく出迎えてくれました。何はともあれ、まずは絵を近くで見せてもらうことに。

 絵を間近に見ると、画像では見えなかった細部がはっきり見え、まるで絵のなかに宇宙が浮かび上がっているよう。眺めていると、まるで宇宙空間を漂っているような感覚に襲われます。

 エアブラシを使って描いているいるようにも見えますが、画材について訪ねてみると、「ボールペンだけです」との答え。太さ、色の異なる15種類ほどのボールペンを使い分け、ひたすらキャンバスに点を打ち続けるという描き方をしているそう。

 「昔は黒い紙に描いていましたが、今は白いキャンバスに描いています。背景の黒もすべて黒い点」。ボールペンだけでこんな絵が描けるなんて、驚きです!

 実際にルーペで拡大してみると、無数の細かい点が重ねられていることが分かります。点の色数は限られていますが、重なり合うことで遠目には複雑な濃紺やグラデーションが生み出されてくるから不思議です。

ライトを当てると…

 「この絵にはもう一つ秘密があるんです」といたずらっぽく笑う水華さん。部屋の明かりを消し、真っ暗な状態からブラックライトで絵を照らすと―。通常の明かりの下で見たときとは違う、神秘的な色彩が浮かび上がってきました! まるでプラネタリウムのような輝きに、調査員もびっくり。

 「たぶん、ボールペンのインクに含まれる蛍光塗料が光っていると思うんだけど…」と水華さんはコメント。自身でも、この効果に驚いているのだそうです。

 調査員がいろいろ聞いてみたところ―。じつは水華さん、美術学校などに通ったことはなく、それどころか、約7年前に点描画を描き始めるまでは、絵を描いたことがなかったそう。

 県出身で、現在は県内を拠点に制作を続ける水華さん。絵を描き始めたのは、人生の苦難の最中、神秘的な体験をしたことがきっかけで、どこからともなく聞こえる「描け」という声に従って制作を始めたとのこと。頭の中に浮かぶビジョンに従って手を動かしており、下描きはせずいきなり描き出すのだとか。

 水華さんの点描画は評判となり、全国各地で次々と個展を開催。8カ月かかって仕上げた新作は、年明けに東京六本木の国立新美術館での展示も予定しています。

 今回、沖縄市で開催される個展は、水華さんの原画を近くで見られるチャンス。暗闇に絵をライトで照らした展示も行うとのこと。点描で描かれた宇宙の輝きを感じてみてください!



「禅タッチ! 宇宙点描画展」
12月21日(土)〜29日(日) 土日11時〜21時、月〜金19時〜23時。21日(土)の13時半〜16時半は予約のみ。会場=沖縄市知花サンエー食品館敷地内「レンタルスペースDELL」。入場無料。問い合わせ☎080(1745)0330(新垣)
※オープニングイベントとして「ディジュリドゥ音浴瞑想&アーティストトーク」を21日(土)13時半〜16時半に開催。参加費3千円(税込)、要予約

このエントリーをはてなブックマークに追加


点描で宇宙を描く画家?!
キャンバスの上にボールペンで1つずつ細かい点を打つ作業を繰り返し描いています 写真提供:水華さん
点描で宇宙を描く画家?!
今回の沖縄での個展で展示される水華さんの点描画のうちの一枚。細かい点で描かれた光の渦は、星雲のようにも粉雪のようにも見え、クリスマスシーズンにもぴったりの幻想的な雰囲気 写真提供:水華さん
点描で宇宙を描く画家?!
暗闇の中でブラックライトを当てると、本物の星空のような輝きが。 写真提供:水華さん
>> [No.1805]号インデックスページへ戻る

↑このページの先頭へ戻る

<< 前の記事  次の記事 >>