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[No.1786]

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「島ネタCHOSA班」2019年07月25日[No.1786]号



 去年の夏頃、ショッピングセンターで昆虫の標本の展示会があり、カブトムシや、クワガタムシなどに触れ興味深い経験ができました。主催していた「オキナワカブトムシ研究所」について調べてください。

(南城市 ビートル・ジェネレーションさん)

「オキナワカブトムシ研究所」って!?

 夏といえばカブトムシやクワガタムシですよね。調べたところ「オキナワカブトムシ」とは沖縄在来のカブトムシと判明。さっそく、研究所に連絡を取り、所長が経営するという南風原町大名にある理容室「Cure(キュア)」に向かいました。

 出迎えてくれたのは「オキナワカブトムシ研究所」所長の神谷吉久さんと当真嗣也さん。理容室の待合室にはさまざまな種類のカブトムシやクワガタムシの標本が並び、昆虫好きが喜びそうな空間です。ここに当真さんが月1〜2回散髪に訪れ、会議をしているそうです。

子どもたちへの啓蒙活動

 オキナワカブトムシ研究所について尋ねると、「趣味の範囲内でやっている任意団体です。現在仕事の都合で大阪に住んでいる1人を合わせて計3人で活動しています」と当真さん。子どもの頃からカブトムシやクワガタムシが好きだったという2人は、地元・南風原町の先輩後輩の間柄。以前所属していた「沖縄クワカブ同好会」が解散したのを機に、2007年に立ち上げたそうです。

 「オキナワカブトムシは主にやんばるに分布している沖縄固有の亜種です。個体数が少ない上に、本土産カブトムシなど外来種との交雑化が疑われています。そのため、オキナワカブトムシの認知度を高め、買ったカブトムシは野外に放さないでほしいという啓発活動を行っています」と神谷さん。

 沖縄在来で固有のカブトムシやクワガタムシがいることを初めて知った調査員。ホームセンターなどで流通しているのは主に本土産カブトムシ。野外に逃がしたりしてしまうことが問題で、在来種との交雑により、本来の在来種の繁殖の機会が減少してしまうことが懸念されています。

 当真さんは「活動し始めてから、本土産カブトムシを野外で捕まえたとか、本土産のものとオキナワカブトムシの雑種と疑われるものが発見されたという情報が入ってくるようになりました。人間のせいで将来大変なことになるのではないかと危惧しています」と語ります。

 自然の環境の中では起こり得なかったことが起こっているのですね。同研究所は啓発活動の一環として子ども向けのイベントを開催したり、オキナワカブトムシなどの調査を実施したりしているそうです。

本土産との違いは

 実物が見たいということで、本土産カブトムシとオキナワカブトムシ(標本)を見せてもらいました。

 「オキナワカブトムシは本土産のものより一回り小さく、弱肉強食の自然界では本土産カブトムシに勝てません」と神谷さん。並べてみるとオキナワカブトムシの方が小さくて角も短く、角の先端のY字型の凹みも浅いです。

 「沖縄は樹液が出る木も少なく、オス同士が樹液を独占しようとけんかすることがあまりないので、進化の過程で角が発達していないようです」と説明してくれました。

 「両前足を大きく広げて威嚇するのもオキナワカブトムシの特徴。メスは羽の裏をこすることによっていわゆる『鳴き声』を頻繁に上げます」と当真さんは続けます。

 今までたくさんのカブトムシやクワガタムシを飼育してきたという2人。ピーク時は当真さんは千匹、神谷さんは数百匹飼っていたといいます。「外国産の大型のものなども含めてあらゆる種類を飼育してきてたどり着いたのが原点の沖縄のカブトムシたち。地元固有のものだし、大切にしたいですね」と当真さんは言います。

 大人になった「昆虫少年」は、これまで培ってきた知識を生かし、貴重な種の保存や環境保全の大切さを伝えています。調査員もオキナワカブトムシのことを知れば知るほどいとおしくなってきました!

 秋にカブトムシの幼虫飼育教室を企画中とのこと。日程などの詳細が決まった際は、弊紙「あまくま情報局」で紹介します。お楽しみに!



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「オキナワカブトムシ研究所」って!?
神谷吉久さん(右)と当真嗣也さん
「オキナワカブトムシ研究所」って!?
(左から)オキナワカブトムシ、本土産カブトムシ(オス)。「沖縄のカブトムシ」(新星出版)より
「オキナワカブトムシ研究所」って!?
イベントの様子。将来研究所に入りたいと熱望する子もいるそう!  画像提供:オキナワカブトムシ研究所
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