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[No.1705]

毛色が美しい沖縄在来犬

　それがいるんです。沖縄在来の犬が。その名も「琉球犬（りゅうきゅういぬ）」。沖縄の言葉では「トゥラー」と言います。虎毛模様という意味です。１９９５年に県の天然記念物に指定されています。

　絶滅の危機から救おうと、90年には「琉球犬保存会」が設立され、当時18頭しか認められていなかった琉球犬をその後の10年間で１２００頭以上に増やしました。

　今回はその保存会の初代会長である獣医師の新垣義雄さん（78）に、琉球犬について教えてもらうことにしました。

気になる特徴は？

　調査員が向かったのは与那原町にある新垣さんのご自宅。敷地内には「琉球犬ヘルス＆ブリーディングセンター」を併設しており、飼育や繁殖を通して琉球犬の保存・普及に寄与しています。

　２０１７年12月14日現在で、子犬も合わせて約20頭を飼育。子犬たちはここで、引き取って名前を付けてくれる飼い主を待っています。17年10月27日に生まれた子犬は17年中に中部農林高校に引き取られる予定です。

　さっそく琉球犬の特徴を聞いてみたところ……。琉球犬は、体高が約50㌢㍍の中型犬。イヌの祖先とされるオオカミの特徴である、後ろ足のオオカミ爪や舌斑（ぜっぱん）を名残として残している個体もいます。顔の段差は浅く、まれに段差がゼロの場合もあります。狩猟犬として飼われてきたため、山を駆け抜けるスタミナを維持するため肺活量が大きく、胸部の厚みがあるのも特徴。しっぽはピンと立っており、狩りの時のバランスを取るかじの役目を果たしているとされます。

　さらに注目のポイントは、毛色。琉球犬は、毛色によって「白トゥラー」「赤トゥラー」「黒トゥラー」など、10の種類（毛色のタイプ）に分けられます。

　黒毛の単色は「黒」、白毛の単色は「白」と分類され、白黒の毛色が混ざったものは「ゴマ」と呼ばれています。赤毛の琉球犬は鼻の黒いのが「マスク」、鼻が茶色で瞳が金色なのが「ゴールド・アイ」です。白と茶の中間のような毛色の琉球犬はその毛色の濃淡で「アイボリー（濃）」「アイボリー（淡）」と分類されるのだとか。なるほど〜。

縄文犬の遺伝子残す

　「保存会を作って16年目で、初めて10種類（の琉球犬）に出会えた」と語る新垣さん。交配などによる種の保存に向けた努力を物語ります。

　琉球犬は、縄文時代に人間に飼われてきた「縄文犬」の遺伝因子を残していることに特徴の一つがあります。北海道のアイヌ犬とは遺伝子的には「ほとんど同じ」（新垣さん）だそう。

　主人に従順でありながら狩猟本能が強く、昔から本島北部と八重山地域では狩猟犬や番犬として人間とタッグを組んできました。

　新垣さんは、「人間とのコミュニケーション能力はもう抜群。２、３回教えると何でも覚える頭の良さもある。敏しょう性もあって数頭で追い込んでイノシシも狩りますよ」と優秀なハンターであることをアピールします。

　その一方で「人間に対してはかみ付かない。琉球犬に携わってきて今まで、人がかまれたという話は一度も聞いたことがないです」とのこと。「自分からの先制攻撃はしないですよ。沖縄の空手と一緒。琉球犬もその（「空手に先手なし」の）文化を持っているみたいですね」と笑います。

　もう一つ、人間との相性の良さを物語るエピソードも。「笑い話があってね。琉球犬が逃げ出した猿を追っていた時に、追い詰められた猿が二本足で立ち上がって威嚇したそうです。そうするとその猿を人間と勘違いしたのか、急に尻尾を振り出して喜び出したみたいなんですよ」。うーん、琉球犬は、よほど人間が大好きなんですね（笑）。

従順にして優秀なハンター

琉球犬を後世へ

　新垣さんが琉球犬を守り継承しようとするきっかけは、愛犬家である知人の一言でした。「今のうちトゥラー（琉球犬）を保存しないと絶滅するよ」。30年ほど前、県動物管理所（現在の動物愛護センター）で所長を務めていた新垣さん。その一言で心に火がつき、やがて動物管理所に連れて来られる犬の中から、年に数頭ほど琉球犬を見つけ出します。

　「保存会を作らんと、数年後には絶滅していただろうね」と振り返ります。保存会の活動はいったん停止していますが、新垣さんと同じように琉球犬の保護に取り組んでいる場所が５、６カ所はあるといいます。今後は人々に癒やしを与えるセラピー犬や、緊急時の救助犬や探索犬としての活躍も模索していきたいそう。

　縄文時代にルーツを持ちながら、「琉球犬」という名前が付いたのはほんの30年近く前。新垣さんは琉球犬を「最も古い犬で最も新しい犬の名前」と一言で言い表してみせました。

　毛色が美しく、超優秀なハンターにして、人間に従順。沖縄にそんな在来犬がいることにうれしくなった調査員でした！