沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1695]

  • (火)

<< 前の記事  次の記事 >>

「島ネタCHOSA班」2017年10月19日[No.1695]号

県民はなぜこぶしが得意

 沖縄に移住して2年ですが、沖縄の人って、なんで皆こぶしを入れて歌えるのですか?

(岐阜県出身・おせっかい叔母さん)

県民はなぜこぶしが得意!?

 沖縄出身で沖縄在住40年近くの調査員(って、年齢がバレますね)、全くそんなことを考えたことがないため、沖縄の人がこぶしを入れて歌っているというイメージが湧きません。ということで、できるだけ素人さんが自然体でこぶしを入れて歌う現場に潜入調査です!

豊かな音楽環境が影響

 時は夜10時ごろ。到着したのは、うるま市石川の民謡スナック「ジントーヨー」。ここでは、お客さんやスタッフが夜な夜な沖縄民謡を歌って楽しんでいるそうで、今回は特別に店のほうに許可を取り、調査員も客になりきって入店しました。

 店のドアを開けると、店いっぱいのお客さんが沖縄民謡を歌う姿が目に入ります。お客さんたちは、今か今かと自分のカラオケの出番を待っています。皆が歌うのは、もちろん沖縄民謡です。

 スタッフに「何飲みますか?」と聞かれ、調査員は大好物の冷たいうっちん茶を頼み、一口飲んで落ち着くと、次から次へと煮物や魚の唐揚げが出てきます。しかも、ぜんぶおふくろの味でうまい。隣席に座る男性客らが、石川地区の話や沖縄の方言をいろいろ教えてくれるなか、片耳はお客さんが歌うカラオケや生歌ライブに耳を傾けます。

 聞いていると、老若男女問わず、誰がどの歌を歌っても、確かにこぶしが入っています! しかも、こぶしを入れて歌う箇所が何とも情感を呼び、心地よくなります。

 店のスタッフで福岡県出身・沖縄在住13年の民謡歌手、倉富昭子さんは、「沖縄の人が自然と抑揚を入れて歌えるのは、沖縄で生まれ育っているから。誰に習わなくとも、日頃から周りから聞こえてくる音楽を聞いて覚えて、自然と歌えるようになります。歌=生活ですから」と話します。

 「沖縄は周りを海で囲まれている土地柄だからこそ、沖縄ならではの音楽の基盤が守られてきました。私がどれだけ店内外で民謡のステージを重ねても、沖縄の人にはかなわないですね。沖縄の人は圧倒的に歌を聞く機会が多いし、歌がうまい!」

 続けて倉富さんは、本土出身者や外国人などが沖縄の人のように抑揚を入れて歌いたいなら、とにかく沖縄の人とコミュニケーションを増やして方言を習得するのがコツだと笑顔で教えてくれました。

 小さいころから近所で三線の音が流れ、お祝い行事などで親戚のおじさんやおばさんが三線を弾いたり歌ったり踊りを舞っていた風景は、とても貴重なものだったのだと気付いた調査員。週末は、おじいちゃん・おばあちゃんに会いに行こうと、心がほっこりしたのでした。

上達のコツは?

 さらに何人かの専門家に話を聞いてみることにしました。

 東京音楽大学卒で沖縄と東京を行き来するミュージカル女優・岩井萌さんは「こぶしの抑揚は、沖縄の人が歌う時の大きい特徴ですよね。沖縄の人はプロアマ問わず、歌う時に押し(歌い込む)と、引き(語ること)が自然にできていて、メリハリがあります」とコメントします。

 琉球音楽協会会長で島唄ライブ「結い唄」(名護市)の店主・松田末吉さんは「沖縄の人の歌のこぶしは、まさに情感。気持ちを入れるのに欠かせないものです」と解説。

 「自分が聞いてきた歌や育ってきた環境でこぶしを入れる場所やレベルは違うと思いますが、私の弟子の中には小学生からこぶしを入れて歌える子もいました。こぶしがうまくなりたかったら、とにかく人の歌をきくことです」

 沖縄の人がこぶしを入れて上手に歌える理由が分かってスッキリした調査員、名護市から那覇まで国道58号を南下しながら、はりきって大きく歌を歌いながら帰路についたのでした。



このエントリーをはてなブックマークに追加


県民はなぜこぶしが得意
倉富昭子さん
県民はなぜこぶしが得意
うるま市石川の民謡スナック「ジントーヨー」。三線や太鼓の音に合わせてお客さんたちがステージで歌える生歌ライブでは、皆こぶしを入れて歌っていました!
県民はなぜこぶしが得意
岩井萌さん
県民はなぜこぶしが得意
松田末吉さん
>> [No.1695]号インデックスページへ戻る

↑このページの先頭へ戻る

<< 前の記事  次の記事 >>