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[No.1635]

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「島ネタCHOSA班」2016年08月25日[No.1635]号

練習しないピアニスト

 楽譜初見ですぐに曲が弾ける、練習用ピアノがない…。珍しいエピソードを持つ「天才ピアニスト」が、那覇市内で演奏していると耳にしました。詳しく調べてもらえませんか。

(那覇市 クラシック畑さん)

練習しないピアニスト!?

 子どもの頃からピアノ教室に通い自宅でも毎日稽古を続けるのが、調査員がイメージするピアニストの姿。同じ曲を何度も練習して努力を重ね、才能も持ち合わせた人が演奏家や指導者としてピアノ界で活躍すると思っていました。  ところが投稿者の情報は、そのイメージと全く異なります。一体どんな人物? ピアニストと認めていいのでしょうか!?

10歳で先生超え!?

 ネット検索や聞き込み調査を進めた結果、”珍しいエピソードを持つピアニスト“は「那覇市在住の川原朗裕(かわはら・あきひろ)さん」と判明しました。県立芸大ピアノコースを卒業した川原さんは、熊本県出身でお姉さんの影響でピアノを始めたそうです。

 「姉が習っていたので家にピアノがあり、演奏を聴いていた僕もレッスンに通うようになりました」

 ごく普通にピアノに出合いお稽古ごとの一つとして始めましたが、6歳から5年間程度しか続けなかったとのこと。

 「でも実は、高校3年生の頃まで教室に遊びに行っていました。先生の歌に合わせて僕が伴奏をすることもあり、おしゃべりする時間も長かった。生徒として教わったのではなく、友達に会いに行く感覚でした」と笑う川原さん。

 ピアノ演奏の技術は先生を上回り、クラシック談義に花を咲かせていたとか!? わずか10歳余りでそんな立場になったとは、川原さんの実力と知識に驚かされます。

 クラシック音楽に詳しいのは、親戚がプレゼントしてくれた大量のレコードが家にあり、聴き込んでいたので自然に覚えたから。そして当時の先生は、素質を伸ばすべく導いてくれたのでしょう。大学進学を迎えた川原さんは、「ピアニストになろう!」と決めたそうです。

聴くことが勉強

 大学でピアノを学ぶために沖縄に来た川原さん。「県立芸大のピアノコース教授は全員が県外出身者。古いつながりがなくても入学のチャンスを得られて幸運でした」と語ります。

 恩師と慕う佐久間龍也教授と出会い、「レッスンには出ていましたがピアノはあまり弾かず、教授とCDや相撲の話ばかりしていました」と、子どもの時からのスタンスを貫いていたようです。

 そして練習道具だった電子ピアノが故障し自宅では弾けなくなりますが、成績は優秀。オーケストラ定期演奏会では在学生代表となりオーディション受賞も果たした後、リサイタルや教室を開き現在まで活躍を続けています。

 十分な練習をこなしているとは思えない川原さんですが、どうやって腕を磨いているのですか?

 「才能があるとは思っていません。楽しんでピアノを弾き、クラシックが好きなので情報を記憶しているだけ。子どもの時から練習せずに初見弾きが多かったのが、訓練になったんでしょうね。練習量や時間を課して、音楽を続ける人はかわいそうに思えます。ピアノを弾くのは人に聴いてもらうため。同じ曲でもたくさんの人がそれぞれの方法でピアノを弾いています。いろいろ聴いて参考にすることが、大切ではないでしょうか」

 音楽は聴いて上達すると考える川原さんはクラシックファンとしての気持ちを持ち続け、また機械好きな面をライブ録音に生かすなど、楽しく活動しています。天性のものもありますが、「好きこそ物の上手なれ」を体現している人なのかもしれません。

 楽譜初見で多数の曲を弾き、筋肉に頼らない演奏方法を探りながら「80歳を過ぎた頃に一番うまく弾いていたい!」と目標を掲げる川原さん。

 ドビュッシーの名曲「月の光」を目の前で演奏してくれましたが、美しいピアノの音色と優雅な姿にうっとり。秋の夜長にゆっくり川原さんの演奏を聴いてみたいと思いながら、編集室に戻った調査員でした。



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練習しないピアニスト
聴くことが音楽の学びと考える、ピアニストの川原朗裕さん
練習しないピアニスト
川原さんの演奏や講義は、那覇市山下町の「カフェ・ド・ロレーヌ」(☎098-858-2778)にて聴けます
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