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[No.1626]

  • (金)

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「島ネタCHOSA班」2016年06月23日[No.1626]号

2階の風呂場にカニ現る

 家の2階のお風呂場に、よくカニが出現します。つい最近も、小さなカニが2回連続で出現しました。一体どこからやってきて、何という種類のカニなんでしょうか?

(豊見城市/H・Sさん)

2階の風呂場にカニ現る!?

 カニが2階の風呂場に?  調査依頼のメールには、現場の状況が書かれていました。  それによると、現場は豊見城市内の報得川のそばに建つ一軒家だそう。もっと詳しく話を聞こうと、調査員は依頼者のH・Sさんに電話でコンタクトをとることにしました。

カニの身柄を確保

 「風呂場には窓はあるのですが、高い位置にあり開けっ放しにすることはありません」と話すHさん。

 となると、考えられる侵入経路は、排水管しか考えられません。でも、カニが排水管を2階まで登ってくるなんて、不思議です。

 さらに話を聞くうち、Hさんから「じつは、そのうちの1匹を保護していて、今手元にいるんです」との情報が! これは見に行くしかありませんね!!

 待ち合わせ場所に現れたHさんから、小さな容器を受け取った調査員。中を見ると…。体長1〜2㌢のカニが(写真①参照)。思ったよりずっと小さいですが、ちゃんとはさみも脚もついています。かわいい!!

 が、生き物に詳しいわけではない調査員。何という種類のカニなのかは、まったく見当がつきません。

 そこで、カニの身柄(?)を預からせてもらうことに。調査員は、カニが元気なうちに、車を走らせ、専門家のもとに急ぐことにしました。

専門家の鑑定結果は…

 鑑定をお願いしたのは、沖縄の海の生き物、しかも甲殻類となればこの人。「しかたに自然案内」の鹿谷法一さんです。

 「ああ、これは思っていた通り『モクズガニ』ですね」とひと目見るなり種類を言い当てた鹿谷さん。

 聞けば、調査員が事前に伝えてあった現場の状況から、ある程度推測はついていたそう。さすがですね〜。

 でも、なぜ現場の状況だけでこれがモクズガニだと推測できたのですか?

 「モクズガニは、産卵を海で行い、大きくなるにつれて川を上流へと移動していく生き物です。ですから、とにかく水の流れを上へ上へとさかのぼっていく習性があるんです」

 なるほど、それで水が流れてくる排水管を川の上流と勘違いしたんですね!

 「はい。沖縄ではこのカニは12月頃から産卵のため川から海に下り、産卵を行います。ふ化した卵は、2〜4月ごろにかけて稚ガニとなって河口域に現れます。その後は、大きく成長しながら川を上流へと向かっていきます」

 最終的にはなんと甲羅だけで7〜8㌢もの大きさにまで成長し、川の上流域などでよく見かけるそう(写真②参照)。

 「カニが現れた現場は、海からそう遠くない報得川のそばとのことですから、今年の春ふ化して川をさかのぼり始めたばかりだったんでしょうね。まだ大きさが1〜2㌢なのも、そう考えるとつじつまが合います」

 ふむふむ。でも、排水管を2階まで登ってこられるものなんでしょうか?

 「モクズガニは少し湿った場所を進んでいきます。滝などでも垂直に登っていきますから、水が流れていないタイミングで排水管を伝って風呂場に侵入したんでしょうね。でも、頑張ったと思いますよ」

 なるほど〜。ちなみに、モクズガニはイワガニ科モクズガニ属に属し、珍味で有名な上海ガニもモクズガニの仲間なのだそうです。

 国内では北海道から琉球列島、小笠原諸島まで広く生息し、ゆでたり蒸したり、汁や炊き込みご飯にしたりと、各地で食用にも供されているとのこと(ただし、寄生虫の問題があるため生食は厳禁)。

 そう聞くと、思わずヨダレが…。しかし、2階まで頑張って登ってきたカニに敬意を表し、調査終了後は再び報得川に放流することにしました。

 頑張って川をさかのぼり、大きく育ってくれるといいな〜、と心に願いつつ、レキオ編集室へと帰路を急ぐ調査員でした!



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2階の風呂場にカニ現る
鹿谷法一さん
2階の風呂場にカニ現る
これが風呂場に出現したカニ。体長は1〜2㌢程度(第5脚は欠損)
2階の風呂場にカニ現る
辺野喜ダム付近で撮影したモクズガニ。こちらは甲羅の幅が7〜8㌢ほどにまで成長しています。はさみ脚にびっしり毛が密生しているのが特徴=国頭村辺野喜
(写真撮影・村山望)
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