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[No.1566]

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「島ネタCHOSA班」2015年4月23日[No.1566]号

音楽を奏でる道路

 本土には走行時に音楽を奏でる道路があるそうなのですが、沖縄にもそのような道路があると聞きました。どこの道でどんな音楽が流れるのでしょうか?

(ごきげんドライブママ・40代 女性)

音楽を奏でる道路!?

 メロディーロードといって、本土の観光地のドライブルートなどでは時折見かけますが沖縄にもあったんですね。

 インターネットで検索すると名護市二見の県道331号の旧道にある「二見情話の里ミュージックライン」だと分かりました。実際に走ってみないと分からない。まずは行ってみよう!

二見への愛着が歌に

 二見情話の里ミュージックラインが敷設されているのは名護市の東海岸の二見地区。県道329号を北上すると、東海岸に沿う形でトンネルや大浦湾をまたぐ橋が架設された二見バイパスがあります。その橋の下を通る旧道の県道331号にその道路はあります。

 実際に走ってみたところ、鮮明に音楽が奏でられています! 感激してしまった調査員は1回のみならず3回も通ってしまいました。

 詳しい話を聞こうと、二見公民館の宜寿次聡(ぎすしさとし)区長を訪ねることに。

 宜寿次区長、実は二見情話の里ミュージックライン計画の発起人でもあるそうです。

 走るだけで音楽が流れる仕掛けについて、「路面に溝を切り込み、走行する車のタイヤとの摩擦で音が発生します。この溝の幅や深さによって音階を作り出しているんですよ」と、宜寿次区長。

 二見情話の里ミュージックラインは平成24年11月に完成とのこと。それにしても運転しながら耳に心地いいあの曲、琉球民謡のようで、歌謡曲にも近いメロディー。癒やされますね。

 「沖縄で長く歌い継がれている『二見情話』という島唄です。

 戦時中、本島南部から避難してきた人々で北部は急激に人口が膨れ上がりました。終戦の6月に、首里出身の照屋朝敏さんをはじめとした大勢の人々が二見に避難したそうです。戦後の一時期、二見市が誕生することになり、照屋氏が市長となって二見の戦後復興に努められました。

 情勢が落ち着き照屋氏は帰省することになりました。その際、二見の人々と苦楽を共にしたことや、行政の長となったことに感謝して、首里に帰る時に作られたのがこの二見情話なんです」

 あの胸に染み入るような哀愁を帯びた旋律は、二見の人々の人柄や自然への思いがあふれた曲だったんですね。このミュージックライン沿いから大浦湾を眺めることができ、照屋朝敏氏はこの海を思い浮かべて曲を作ったといいます。

日本初の技術で敷設

 この二見情話の里ミュージックライン、ものすごい技術が採用されていることが分かって驚き。それは日本初の二重奏。左右のタイヤそれぞれが別の音を発生させるというのです。驚きの事実を尋ねると「左のタイヤでは三線の音色を、右のタイヤでは男女混声を再現した音が流れています。全長 ㍍の道路に1万400本の溝が切り込まれているんですよ」と、宜寿次さん。通行するときは、このステレオサウンドに注意深く耳を傾けてみてください。

 ほかにも観光資源としてもさまざまな仕掛けがなされています。

 「耳では音楽、目では大浦湾を楽しめます。また道の脇には日本一大きな蝶であるオオゴマダラが好むホウライカガミが植栽されています。近くの公民館に蝶が越冬するためのビニールハウスがあり、暖かくなると放してあげるのですが、ミュージックラインに蝶が集まるんですよ」

 その他、植栽されているアセロラの実も自由に取ってよいとか。二見情話の歌詞の通り、心優しい二見の人々の人柄がにじみ出ています。

 ところで、二見情話の里ミュージックラインの法定速度は時速40㌔㍍。この速度は原曲のテンポに合わせて設定されており、曲のテンポが速く聞こえたら、走行速度も速いということなので、気を付けましょう。



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音楽を奏でる道路
宜寿次聡さん
音楽を奏でる道路
琉装の男女をイメージした標識
音楽を奏でる道路
道路脇の横断幕と植栽
音楽を奏でる道路
大きなト音記号が起点の目印
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