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[No.1541]

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「島ネタCHOSA班」2014年10月23日[No.1541]号

謎の建物の正体は

 沖縄自動車道の那覇向け、石川インターと沖縄北インター間に、緑の中にポツンと建つ何かの隠れ家や実験場のような怪しい建物があります。まるで仮面ライダーに出てくるショッカーの秘密基地みたいで気になります。

謎の建物の正体は!?

 というわけでさっそく調べてきました。まずは場所の確認も兼ねて沖縄自動車道を走ってみると、確かに怪しげな建物を発見。ただし、高速道路は駐停車禁止なので、車を停車させることなく通り過ぎ、今度はその場所へ行く目印となる建物を探します。すると、青い屋根と煙突のゴミ焼却場(三島環境クリーンセンター)が見えたので、沖縄北インターで下りて国道329号の石川バイパスを走り、青い屋根と煙突の建物を目指しました。

勘頼りの場所探し

 高速道路を下りて5分ほど走ったところで目印を発見。そこからさらに車を進め、後続車の邪魔にならないよう、緑の多そうな脇道を出入りしながら探していると、楚南交差点にたどり着きました。長年のCHOSA班の勘がここだ!というので左折してしばらく道なりに下っていくと、緑に囲まれた盆地のような一帯があり、その一画に目的の建物がありました。

 これだこれだ! とつぶやきつつ樹木が生い茂る道を通り、建物に近づいていくと「立入禁止」と書かれたボードのぶら下がった、鎖の車両止めがありました。車から降りて建物のほうを見ると、何やらブーンと機械音が聞こえてきます。「これは確かに怪しい」と思いつつボードをよく見ると、「管理者:県企業局石川浄水管理事務所」とあり、電話番号も書かれていたので、調査目的を伝え取材をお願いしました。

 後日、石川浄水場管理事務所へ行くと、県企業局石川浄水管理事務所浄水管理班班長の山内健司(たけし)さんが取材に応じてくれました。そこで山内さんに「あの怪しい建物を調査したところ、企業局の施設ということはわかったのですが、何か秘密の研究でもしているのですか」と疑問をずばり聞いてみました。すると山内さんは「いえ、あれは山城ダムの取水ポンプ場なんですよ」と笑顔で答えてくれました。

天願川の源流にあった

 山城ダム(通称・天願ダム)は1967年完成。山城取水ポンプ場は79年に石川浄水場の原水を導水する施設として建設されていました。今の場所に建った理由は「資料が残っていないので不明ですが、一般的に取水ポンプ場は水を引く際に、ダムよりも低い位置に設置されるので、盆地のような現在の場所になったのではないでしょうか」

 それから現場へ移動して実際にポンプ場の建物の中へ入ってみました。中は天井が高く壁には防音が施され、3機のポンプが稼動。取水した原水はポンプで高い圧力をかけ、山を越えて石川浄水場と北谷浄水場へと送られています。

 取材前に見えた謎めいた建物の周辺は緑に覆われ、トンボやチョウが飛び交う静かな田園風景が広がっていました。そして怪しげな隠れ家ではなく、沖縄県民の飲み水を作るために働いている立派な施設だったのです。



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謎の建物の正体は
確かに謎めいて、見るからに怪しげな建物。ちなみに高速道路からでは危険なので撮影はとある建設会社の資材置き場から行った
謎の建物の正体は
青いパイプが今回の秘密のカギか
謎の建物の正体は
立入禁止の車止め。建物の中から低い音が聞こえる
謎の建物の正体は
建物の中は天井が高く3台の取水ポンプがけなげに働いていた
謎の建物の正体は
山内健司さん
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