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[No.1518]

  • (金)

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「島ネタCHOSA班」2014年05月15日[No.1518]号

「もしもし かめよ」で地名

  小学校で社会の授業の時、「もしもし かめよ」の歌に乗せて都道府県を覚える替え歌がありました。友人に聞くと知らないそうです。これって沖縄だけなんでしょうか?   (浦添市 Yさん)

「もしもし かめよ」で地名?

 「もしもし かめよ」は、童謡「うさぎとかめ」の歌い出しですね。沖縄市出身の調査員も、歌った覚えがあります。しかし同僚は「聞いたことがない」「子どもが歌ったのを初めて聞いた」との答え。

 さっそく県教育庁義務教育課を訪ねました。指導主事の稲嶺盛久さんに、「私もネットで調べてみたんですよ」と手渡された資料には、東北、関東、近畿など地方ごとに「もしもし〜」で始まる地名が並んでいます。

 九州を例に挙げると「もしもし 九州 福岡県 佐賀県 長崎 熊本県 鹿児島 宮崎 大分県 海のキレイな沖縄県」。沖縄は特徴も盛り込まれていてうれしいですね。

 「でも、これは沖縄だけのものではないようですよ。数や地域は把握できていませんが、全国各地に散らばっていて、実践されているようです」

 各教材研究の過程で、かけ算九九や元素記号を覚えやすくするための替え歌も、存在したそうです。

県内市町村版も存在

全国バージョンはあるものの、県内の市町村を覚える歌はないの? ネットで検索すると一件ヒットしました。加持(かもち)岳志さんがアップしているブログです。

 宮古島市在住の加持さんがなぜ? 電話で聞きました。

 きっかけは何ですか? 「息子が持ってきたプリントが発端です。県内41市町村を覚える『うさぎとかめ』の替え歌なんですが、かなりの町村が抜けていたんです」

 そこで自分で作ろうと思った加持さん。作詞・作曲の経験があったんですか?

 「いえいえ。長年デイサービスに勤めているので、子どもたちだけではなく、施設に通う方たちにも聞かせてあげたいなと思ったんですよ」

 曲名は「おきなわ市町村おぼえ歌」。宮古を紹介する一番は、市町村を超えて島の名前も盛り込まれています。

 「もしもし 池間 池間島大神 伊良部 下地島 水納 多良間 来間島 宮古島には自然がいっぱい」

 旅行気分で楽しい。

 加持さんが勤める「デイサービス来間」のお年寄りの前で、三線に合わせて披露したところ大好評だったそうです。

 「宮古島のそのまた離島ですからね。宮古から出たことがない、またなかなか出ることがない方が多いんです。皆さん喜んでね。『沖縄ってこんなにたくさん市町村があったんだねー』『行ってみたいさー』と言ってもらいました」と加持さんは話します。

さまざまに工夫

 なるほど。この替え歌、いつごろからどの地域で実践されているのかは謎のままです。では、今の子たちは、どんな風に地名を覚えているんでしょう。

 訪ねたのは、那覇市立石嶺小学校。校長の三田井裕さんは、県小学校社会科教育研究会会長とのこと。替え歌をご存じですか?

 「いいえ、聞いたことがないですね。以前は、暗記することに重きを置く時代もありました。でも今は、『自ら学んで自ら考える』ことを重視していますから、丸暗記型は、あまり歌われなくなったのかもしれませんね」

 5年生の社会科の授業にお邪魔すると、ちょうど地理を教わっています。担任の下里和也さんが黒板に貼り出したのは、日本地図と全国各地のサクラまつりのポスター。興味津々の子どもたちは、一気に集中します。開花時期と地図を比較したり、サクラの特徴と照らし合わせたり。

 途中、下里さんが取り出したのは「iパッド」。取り込んだ画像をモニターに映します。「3ヒントカードやジグソーパズルなども使い、遊びの要素も取り入れて子どもたちが理解しやすいようにしています」と下里さん。

 学習教材としてスタートした「もしもし かめよ」の替え歌。今の子どもたちにとってはアナログだけれど、久しぶりに口ずさんで優しい気持ちになれた調査員。また見直される時が来ればいいなと思ったのでした。



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「もしもし かめよ」で地名
稲嶺盛久さん
「もしもし かめよ」で地名
加持岳志さん
「もしもし かめよ」で地名
社会科の授業中の下里和也さんと5年2組の子どもたち
「もしもし かめよ」で地名
三田井裕さん
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