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[No.1448]

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「島ネタCHOSA班」2013年01月01日[No.1448]号

ヘビはめでたい話ない?

 今年は巳(み)年。県外では、「白いヘビを見たら金運に恵まれる」「神社のご神体がヘビ」など、ヘビにまつわるおめでたい話をよく聞きます。沖縄にはヘビにまつわるおめでたい言い伝えはないのでしょうか?(那覇市 Kさん)

ヘビはめでたい話ない?

 確かに、「白いヘビ=金運」という話は、調査員も聞いたことがあるような…。沖縄でヘビといえば、大蛇が夜な夜な出てきて悪さをしたなんていう迷惑な話はよく聞きますね。でも、おめでたい話というのは聞いたことがないような気がします。これは調べてみなくては。

 一目置く特別な存在

 というわけでヘビに詳しい沖縄市照屋の「高田爬虫類研究所沖縄分室」室長の大谷勉さんに聞いてみました。「古くからヘビは信仰の対象になってきたという説がありますよ」と大谷さん。手足がないのに自在に動いたり、自分の頭よりも大きなものを飲み込んだり、脱皮してきれいに生まれ変わる(ように見えたのでしょう)ヘビの存在が、身近な自然の中で一目置くべき存在と思われ畏れられていたようです。そこへ稲作が広まり、米を食い荒らすネズミを捕食してくれるヘビを特別な存在とあがめるようになったのではないかといわれているそうです。

 ヘビへの信仰が転じて、「神社のしめ縄はヘビが交尾する姿を模した」「ご神体とされる神鏡の原型はヘビの目」という考え方もあるそうです。

 ヘビに似たまっすぐな幹の形からビロウの木を神木として葉などを祭事に使うようになったという説もあるそうです。ビロウはクバ。なるほど、沖縄でもクバの木は神様が降りてくる木とされていますよね。

 幸運呼ぶ安波の「ハイ」

 でも、なぜ沖縄にはおめでたい話が残らなかったんでしょう。何かないかと大谷さんにヒントをもらって調べてみたら、国頭村安波区にありましたよ、縁起のいい話が。

 「ハイ」と呼ばれるとても美しいヘビがいて、めったに見ることがないので、「目にするといいことがある」といわれているそうです。まさに県外の「白いヘビ」と同じじゃないですか。

 早速、村役場に問い合わせたところ、安波区長の渋井登志代さんがその話を聞いたことがあるとのこと。渋井さんの母の山城京さん(87歳)によると、昔からハイが姿を見せることは珍しく、「見ると運がいい」といわれているそうです。山城さんの家の石垣は、ヘビの通り道になっているそうで、「ハブがよく通るけれどハイも通ることがありますよ。最近見たのは2カ月ほど前かね」と話していました。

 大谷さんによると、「沖縄では、ハブへの恐怖が強すぎて、ヘビがおめでたいとか神聖という考えが残らなかったんじゃないでしょうか。でも、ハイもハブとは違うコブラ系の毒ヘビなんですけどね」

 ひぇ、怖いじゃないですか。「いや、ハイはとてもおとなしいヘビですよ。ヘビは生態をよく知れば、むやみに怖がることはないんですけどね」。そりゃそうでしょうけど…。

 「そういえば、ハブが通る石垣を拝むという話を聞いたことがありますよ」と大谷さん。10年以上前に、沖縄市の旧松本地区在住の老人に聞いた話。家の石垣にハブが住み着いていて、お正月は、元旦に何よりもまずその石垣を拝むそうです。今では、その老人も亡くなって、この習慣について覚えている人はいなくなってしまったようです。沖縄に残る数少ないヘビのポジティブな話。何か聞いたことがある人は、ぜひ教えてください。

 

 宮古島の方言で、虹を天蛇(ティンパウ)と呼ぶのは、宮古島に怖いハブがいないからでしょうか。そういえば、宮古島の張水御嶽にまつわる話でも、神様がヘビの姿で現れたような。毒があるかないかで言い伝えや習慣にも影響が出ていたということなのでしょうか。「毒さえなければヘビもなかなかかわいい」と発言して、変人扱いされている調査員なのでした。


ヘビはめでたい話ない?
現在の沖縄市松本地区に残る石垣。実際に拝んだという石垣は現在特定できません
ヘビはめでたい話ない?
カラフルな縦じま模様に横じままで入ったおしゃれな(?)「ハイ」(写真提供・高田爬虫類研究所沖縄分室)
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