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[No.2031]

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「表紙」2024年04月11日[No.2031]号

地域の米で酒造り
米農家 朝井 信行さん
やんばる酒造株式会社 代表取締役池原 文子さん

泡盛「まるたホワイト」ができるまで

 地元産の米を原料に、米農家自身も参加したユニークな泡盛造りが行われている。 大宜味村田嘉里のやんばる酒造株式会社と国頭村奥間の米農家・朝井信行さんの 取り組みだ。もろみの仕込みや蒸留など、主要な工程に記者も立ち会った。試行錯誤し ながら酒造りをした関係者たちの姿をリポート。完成した泡盛「まるたホワイト」の味わい も紹介する。

 2月上旬、やんばる酒造の 工場に朝井信行さんの米が 運びこまれた。昨年 11 月に収 穫したひとめぼれ。無農薬で 栽培された、今回の主原料で ある。

 朝井さんの米を使った酒 造りは2度目。昨年の「まる たホワイト」も好評で、すぐに 完売している。前回はやんば る酒造の社員だけで製造し たが、今回は朝井さんも工程 に関わることになった。人手 のいる作業には、朝井さんが 所属し、伝統食に関する活動 を行う「スローフード琉球」の メンバーも参加した。

人の手で仕込む

 酒造り初日は、もろみの仕 込み。米を浸水させ、蒸し、黒 麹(くろこうじ)を加え、保温 する。

 米の扱いは微調整の連続 だった。粘り、硬さを抑えて均 一に蒸す。蒸した後は混ぜるな どして 40 度近くまで冷ます。 塊になった米は、黒麹が入り やすいよう手でほぐす。数人 がかりでも一苦労だったが、話 し合いながら、和気あいあいと した雰囲気で作業は進んだ。

 今回の泡盛は日本米を使 い(一般的な原料はタイ米)、 50 ㌔という小ロットで仕込む ため、やんばる酒造にとって も難しい部分があるそうだ。 肌感覚を頼りにした工程が 多くなったことで、昔ながら の酒造りをうかがい知ること もできた。

 「小さな酒造所だからでき る、実験的な試みです」

 そう話したのは、やんばる 酒造代表取締役の池原文子 さん。わくわくとした心境が 伝わってきた。

米の味わい光る

 3月下旬、もろみの状態を 見極めて蒸留が行われた。こ の工程では、もろみの入った タンクに蒸気を注入。アルコー ル分を分離して、純度の高い 酒を得る。やんばる酒造が一 昨年に導入した「単式蒸留 器」が使われた。味や香りを 細かく調整できる特注仕様。 従来とは違う酒造りを後押 しする設備だ。

 蒸留中は成分の測定を何 度もする。蒸留前半と後半 で、酒の味わいが変化するた めだ。試飲もした結果、前半 に出た酒と後半に出た酒を ブレンドする「無加水」の手法 で完成させることが決まっ た。蒸留後半まで良質な酒が 出なければできない手法であ り、原料の良さも示している。

 そうしてできあがった「ま るたホワイト」。米の香りとま ろやかな甘みが持ち味だ。後 味はすっきり、日本酒にも似 ているという。

 「みんなで造ったから、今回 はさらにおいしいね」

 出来上がったボトルを手に 朝井さんがほほ笑んだ。生産 者のつながりと、手作業を大 切にした酒造りはまだ始まっ たばかり。稲や古酒を育てる ように、じっくり続けていきた いそうだ。

(津波 典泰)



泡盛「まるたホワイト」ができるまで

〈商品情報と問い合わせ〉
「まるたWHITE」(3000円)。やんばる酒造直売所と通販サイトで数量限定、予約販売。
本日から予約可能。
問い合わせ:☎0980-44-3297(やんばる酒造株式会社)

泡盛「まるたホワイト」ができるまで

やんばる酒造通販サイト





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泡盛「まるたホワイト」ができるまで
国頭村で無農薬栽培されたひとめぼ れを使った泡盛が今月発売される。 その名も「まるたホワイト」。酒を仕 込んだのは大宜味村田嘉里のやんば る酒造株式会社。代表取締役の池原 文子さん(左)と、米農家の朝井信 行さんが完成したボトルを手に笑顔 を見せた。後ろに広がるのは朝井さ んの田んぼ。先月植えたばかりの稲 が風になびいていた=国頭村奥間
写真・村山 望
泡盛「まるたホワイト」ができるまで
酒造り初日、もろみにする 米を準備する(2月5日)
泡盛「まるたホワイト」ができるまで
もろみの確認をする 朝井さん。保存容器を 開けると甘い香りが広 がった(2月17日)
泡盛「まるたホワイト」ができるまで
やんばる酒造の池原静さん(右から2人目)が酒精計を使い、蒸留中 のアルコール度数を測定する。蒸留で出た酒かすは、朝井さんが譲り 受け、田んぼの肥料として再利用する(3月27日)
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