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[No.2030]

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「表紙」2024年04月04日[No.2030]号

地域の未来につなげる 喜如嘉翔学校
合同会社キノボリトカゲ 代表 山上 晶子さん

「寓話」の世界観感じてほしい

 廃校になった大宜味村喜如嘉の旧喜如嘉小学校を活用した複合施設が2022年 6月から始動している。「喜如嘉“ 翔” 学校」としてテナントの運営や体験プログラムの提 供、イベント開催などを行っており、今年中には宿泊施設とカフェも加わる予定だ。同施設 を運営する「合同会社キノボリトカゲ」は、かつての小学校のように再び活気のある場所に しようと挑んでいる。代表の山上晶子さんを取材した。

 やんばるの豊かな自然に 恵まれた環境の中にある旧 喜如嘉小学校跡地。2016 年に村内4小学校の統合に 伴い、127年の歴史に幕を 閉じた学校が、 22 年に「喜如 嘉翔学校」として生まれ変 わった。。

 運営するのは「合同会社キ ノボリトカゲ」。代表の山上晶 子さんにとって喜如嘉小は思 い入れのある場所だったとい う。「子どもたちもここに通っ ていたんです。自然豊かな所 に学校があるなんて、ぜいた くだなと思っていました」。

 東京都出身の山上さんは、 結婚後、栃木県で陶芸家の夫 の工房の手伝いをしていたが、 2004年に旅行で魅了さ れた沖縄に移住した。 17 年に 山原工藝店をオープン。 19 年 から 21 年までは田嘉里共同 売店の店主も務めた。共同売 店の契約期間を終えた頃に、 旧喜如嘉小学校跡地活用事 業の募集を知り、自然豊かな 環境を生かして何かできない かと思った山上さん。「合同 会社キノボリトカゲ」を設立 し、公募に応募。 22 年6月か ら跡地で事業を始めた。

ものづくりの拠点へ

 指定管理ではなく、使用賃 貸契約で運営しているため、 当初は経済的な負担ものし かかった。廃校後の約6年間、 手つかずだった校舎は全ての トイレが流れず、修理が必要 となった。それでも「マイナス からのスタートでしたが、全部 自分たちでやらないといけな いので工夫もするし、内容自 体は干渉されないから、自由 にできます」とポジティブに受 け止める。昨年末には 12 室の テナントは全て埋まり、「よう やくスタートラインに立った という感じです」と言う。空き 教室には山原工藝店の他、書 店、ハンモック・陶芸・木工 工房、サウナ、映像作家など が入居している。

体験型プログラムも

 敷地内で育つ月桃を使った 草編みや箸作り、ハンモック編 みなどのものづくり体験プロ グラムの他、「土中環境改善 体験」やネイチャーガイドツ アーなど、自然を体感できる コンテンツも提供している。

 イベントの企画なども行い、 豊年祭などの地域文化を発 信する「HONEN Fes!!!(ホ ウネンフェス)」や表現したい ことを形にするイベント「芸 術縁日」などを開催。4月に は、大宜味村の工芸市「いぎ みてぃぐま」の開催時期に合 わせた工芸やアートのイベン ト「オクラレルカフェア」と、足 元の土壌から地球規模の環 境を学ぶ「アースデイ」イベン トを予定している。

 コンセプトは「寓話」だ。や んばるの空気が心地よく流 れ、フクロウの親子が樹上に たたずむなどおとぎ話のよう だった学校の物語の続きを、 行き来する人や生き物たち で紡いでいく場所を目指す。 「寓話という異次元の設定に 身を置いて喜如嘉翔で時を過 ごすことによって、窮屈な世 界から離れて自分らしくふる まう機会を自分でつかみとる ことを後押ししたい。そのた めにも宿泊施設とカフェの完 成が待ち遠しいです」

(坂本永通子)



アースデイ@喜如嘉翔
4月21日(日)
喜如嘉翔をフィールドにした土壌改 良ワークショップ、身近な土木セミ ナー、地球環境セミナーなどを開催

合同会社キノボリトカゲ 代表 山上 晶子さん

喜如嘉翔学校
大宜味村喜如嘉2083
☎ 0980-43-0898(山原工藝店)



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合同会社キノボリトカゲ 代表 山上 晶子さん
喜如嘉翔学校を運営する「合同会社キノボリトカゲ」 代表の山上晶子さん。敷地内には旧喜如嘉小学校の面 影も残り、レトロな雰囲気も魅力だ
合同会社キノボリトカゲ 代表 山上 晶子さん
校舎は当時のまま。敷地内には、掲示板や校歌の石碑などが残る 元職員室にある山原工藝店。宿泊施設とカフェができる別棟への移 転を予定している
合同会社キノボリトカゲ 代表 山上 晶子さん
元職員室にある山原工藝店。宿泊施設とカフェができる別棟への移 転を予定している
合同会社キノボリトカゲ 代表 山上 晶子さん
校庭にある、ぶながやの像。 今年中に完成予定の宿泊施 設はぶながやの棲み処(す みか)がテーマになっている
合同会社キノボリトカゲ 代表 山上 晶子さん
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