沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.2014]

  • (木)

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「表紙」2023年12月14日[No.2014]号

馬と心を通い合わせて
あおぞらニライカナイ牧場

馬具を使わない乗馬体験を提供

 南城市玉城。百名ビーチの近くを車で走らせていると、サラブレッドからポニーまでさまざまな馬たちがく つろぐ様子を目にしたことがある人もいるだろう。ここは「あおぞらニライカナイ牧場」。気軽に乗馬体験ができ るこの牧場の大きな特徴は、鞍(くら)やハミなどの馬具を一切使わない“はだか馬”に乗れる「オールフリー 乗馬」だ。まさに人馬一体となって馬の体温をじかに感じることができる。玉城真代表(61)は「全国的にも ほぼ例がありません。馬になるべくストレスを与えず大きなサラブレッドも馬具なしで乗りこなす玉 、信頼関係を築いて一緒に前に進む乗馬です」と話す。

 あおぞらニライカナイ牧 場では全部で7頭の馬を 飼っている。間近で見ること のできる馬の瞳は、まん丸 としていていとおしい。ゆっ くりと歩みを進める様子 は、堂々としている一方、大 らかで優しさも感じる。

 玉城代表が乗馬を始め たのは 47 歳の時。何かに打 ち込もうというきっかけで 始めてみると、その爽快感 やスリル感、まるで空を飛 んでいるかのような感覚に 一気に魅了された。

 「馬は、乗り手の心拍数 や精神状態も感じ取るんで すよ。なので、自分自身をコ ントロールして上手に馬の 能力を引き出すために、自 分で馬を飼った 11 年前から お酒を飲んでいません。お 酒で失敗することもあった のですが、人生を立て直す ことができたので、これか らは馬に恩返しという気持 ちです」と、オールフリー乗 馬の普及を進めている。

 牧場を手伝う久高正光 さんは、世界硬式空手道連 盟の理事長であり範士八 段。空手を追求する中で馬 と触れ合い出した。「空手 に『騎馬立ち』という立ち方 があるのですが、実際に馬 に乗ったことがある人は少 なく、形だけのものになって いるんです。ここでは原点 に戻る体験ができます」

記者が初めて馬に乗る

 牧場からほど近い放牧 場には、アオゾラルフィと奥 さんのアオゾラシズカが2 頭仲良く草を食べてい た。「乗ってみますか?」と 玉城代表。筆者の人生初 乗馬が始まる。

 乗馬の基本は大きく3 つだという。①背筋を伸ば して重心をお尻に②目線 は水平に③かかとを下げ て内ももを締める―。なる ほど。この3つさえ守れば ひとまずどうにかなりそ うだ。

 筆者が乗ったのはシズ カ。馬具がないので横から そのままジャンプして手を つき、体をぐっと持ち上げ て背中に乗る。馬の背中は 思ったよりも温かい。「体温 は人間よりもだいたい 1・5度ぐらいは高いです よ」と玉城代表が話すよう に、このポカポカ感が心ま で温めてくれるようだ。肌 馬具を使わない乗馬体験を提供 や毛の質感は思ったよりも しっかりしていて、頼りがい がある。手綱などがない 分、安定を保つために片手 でたてがみをつかむのだ が、嫌そうなそぶりはなさ そうだ。

 馬の一歩一歩は見た目以 上に揺れるため、バランス 感覚が大事なのだが、これ も意外と慣れてきた。一度 乗れるともうそこまで意 識しないでよくなるように なるのは、自転車に初めて 乗れた時に似ているかもし れない。目線が高くなって、 ケンタウロスにでもなった 気分だ。

 足で軽くおなかをポンっ と蹴ってやると前進する。 蹴ってみたのはいいものの、 ストップのさせ方を習う前 にやってしまった。「止める 時は『おーほー』と言いな がら重心を後ろに向けた ら止まりますよ」。筆者が 「おーほー」を連発すると、 シズカも止まってくれた。心 が通い合ったなぁと、その 楽しさや奥深さに触れら れたような気がした。

古里の自然・文化を大切に

 玉城代表自身は那覇で 生まれたものの、母の故郷 が牧場のある南城市玉城 百名だ。子どものころに、 当時百名区長だった叔父 の座波健次郎さんによく こう言われていた。「大切な 百名を、大人になっても美 しい場所であるようにして いきなさいよ」。玉城代表は その気持ちを忘れずに、牧 場の入り口に「美しい古里 の自然・文化を大切に守ろ う!」のメッセージを掲げて いる。

(長濱 良起)



あおぞらニライカナイ牧場は2024年3月20日にリニューアルオープンを予定しており、同4月から1年間、年6回の「はだか馬ビーチ乗馬教室」の一期 生を募集している。
問い合わせ先は080‐6490‐4794 (玉城代表)



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あおぞらニライカナイ牧場
馬具を使わない乗馬「オールフリー乗馬」が楽しめるあおぞら ニライカナイ牧場の玉城真代表(右)と久高正光さん
写真・村山 望
あおぞらニライカナイ牧場
大きなサラブレッドも馬具なしで乗りこなす玉城代表
あおぞらニライカナイ牧場
アオゾラルフィに乗る久高さん。 奥はアオゾラシズカに乗る筆者
あおぞらニライカナイ牧場 あおぞらニライカナイ牧場
牧場で乗馬を楽しむメンバーは、 定期的にビーチクリーンも行って いる(玉城代表提供)
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