沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.2002]

  • (木)

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「表紙」2023年09月21日[No.2002]号

笑顔生み出す懐かしいケーキ
のぼりや製菓

61年の歴史を受け継ぐ

 沖縄市中の町にある「のぼりや製菓」。長年地域に愛されてきた老舗製菓店だ。 店内には洋菓子、和菓子、焼き菓子、沖縄菓子など、約100種類の商品が並ぶ。 創業者の故・登(のぼり)弘道さんは多くの商品を生み出し、弟子も輩出してき た。従業員はもちろん、地元の人たちに支えられ困難も乗り越えてきたのぼりや 製菓。創業者の長女で現社長の與座美香さんに話を聞いた。

 甘い香りに包まれた店 内には、ジャーマンケーキや 黒糖ケーキ、生クリーム ケーキなどさまざまなス イーツが並ぶ。「のぼりや製 菓」は、故・登弘道さんが妻 の故・マツさんと共に19 62年に創業。米軍基地内 のベーカリーで働いていた 経験を生かし、当時では珍 しいケーキを販売した。

 弘道さんが作るのは、 沖縄の人の口に合うよう にアレンジしたケーキ。滑 らかな舌触りのクリーム を使用した甘さ控えめの バターケーキは評判を呼ん だ。本土復帰後には、和菓 子などの製造も開始。 80 年代の全盛期には、県内に 7店舗を展開。従業員も 30 人の職人を含む 80 人を 抱えるほどに成長した。

 弟子の育成にも力を注 ぎ、独立を推奨した弘道 さん。サポートも惜しま ず、「オヤジ」と呼ばれ慕わ れてきた。弘道さんが育て た弟子の中には、有名店 のパティシエも多くいる。

応援に背中押され

 経営者ながら、経理か ら配達、県内外のイベント 出店、地域の活動などに 忙しい美香さん。店を手 伝い始めたのは約 20 年前 にさかのぼる。「経営が大 変だと聞いたので、親孝行 としてちょっと手伝おうか という気持ちで始めた」。 父に「社長になってほしい」 と言われたものの反発。O Bたちからは「お店をなく したら許さん」とも諭さ れた。「のぼりやのおかげ で今がある」と言ってくれ る弟子や業者から当時の 話を聞いていくうちに、の ぼりやの存在は大きく なっていき、再建にも尽力 した。

 「ずっと頑張ってほし い」「のぼりやのケーキで 育ってきた」と声をかけて くれる常連客の言葉も励 みになる。美香さんは「こ こまで続けてこられたの は、地域のお客さまあって こそ」だと話す。

 2012年には 50 周年 のパーティーを開催した。 これまで携わってくれた従 業員たち約100人に加 え、近隣の人や業者も招 き、約200人が集まっ た。弟子たちもお菓子の 家やチョコレートの銅像な ど、特別に作品を作って感 謝を表した。当時健在 だった両親は「『よくやって くれた』と大喜びしてくれ た」と振り返る。

沖縄の味 県外で人気

 現在の一押し商品は創 業当時から販売してい る「ジャーマンケーキ」だ。コ ロナ禍に県外の物産展や 展示会に出品したとこ ろ、好評を得たのがきっか けで、通信販売にも乗り 出した。利用者の声を反 映し、お土産に便利な個 包装タイプも展開してい る。「 60 年以上の歴史は強 み。今後は復帰以前にあっ た商品の復刻版なども企 画していきたい」と美香さ んは話す。やりたくないと 思ってきた社長業。今は 「両親が頑張った証を伝え ていくのが私の使命だと 思う」と笑顔を見せた

 (坂本永通子)



のぼりや製菓
通販サイト

のぼりや製菓
沖縄市上地1-11-1
☎ 098-932-7895
営業時間 10:00~21:00(日・月曜は18:00まで)



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のぼりや製菓
代表取締役社長
與座美香さん
さまざまなスイーツが並ぶ店内に立つ與座美香さん。 手に持つのはジャーマンケーキの個別包装タイプ。パッ ケージには店の車に乗る創業者の写真を使用してい る。ザラメの触感が特徴の黒糖ケーキやジャーマンケー キなども人気だ=沖縄市上地の「のぼりや製菓」
写真・村山 望
のぼりや製菓
バターケーキで作った6 段のウエディングケーキ。 1960年代に作られたも の。バターケーキは現在 予約制
のぼりや製菓
個包装タイプのジャーマンケーキ。たっ ぷりのココナツフィリングやチョコバ タークリームが特徴
のぼりや製菓
創業者の登弘道さん
のぼりや製菓
創業当時の店舗の様子。今と同じ場所から始まった (写真は全てのぼりや製菓提供)
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