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[No.1997]

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「表紙」2023年08月17日[No.1997]号

伝統の音を支える 太鼓職人

新崎太鼓三味線店 屋良祐輔さん

エイサー太鼓の音色響け

 旧盆が近づき、県内各地でエイサーの練習に励む太鼓や三線の音が聞こえてくる季節。多くの 人がその響きを心待ちにしている。そんなエイサーや古典芸能に欠かせない太鼓と三線を作り続 けるのが新崎太鼓三味線店。県内外からの製作や修理の依頼に対応している。3代目の屋良祐輔 さんはネット販売やオリジナル商品「めで太鼓」の開発にも乗り出し、太鼓の魅力を発信している。

 沖縄市泡瀬にある新崎太鼓 三味線店では一年で一番忙しい 時期を迎えている。太鼓と三線 の製作や修理などを請け負っ ている同店では、代表で3代目 の屋良祐輔さん( 37 )と、初代 で祖父の新崎松雄さん( 85 )が 沖縄の伝統の楽器作りを続け ている。

 6〜 10 月の繁忙期は県内外 から修理や製作の注文が増え る。青年会や県人会、サーク ル、国内外で活躍する太鼓集 団、運動会でエイサーを披露す る学校、時には同業者からの依 頼にも対応している。

 創業は1975年。大工だっ た新崎さんが、その技術を生か し太鼓と三線を作り始めた。 優秀な技術・技法を持つ「県工 芸士」にも認定されている新崎 さんの三線の型を好む人は多 い。主に太鼓を製作・修理をす るのは3代目で孫の屋良さん だ。

 太鼓の製作・修理を行う店 は県内で数軒しかなく、革作 りまでこなすのは珍しいとい う。太鼓製作を始めて 10 年にな る屋良さん。「作っているのは 基本的にパーランクー、締太 鼓、大太鼓の3種類」と話す。 太鼓の作り方は、初代や現在 は別の仕事に就いている2代 目の叔父・新崎律雄さんから 学んだ。

牛の皮から太鼓作り

 胴作りと革張りが太鼓の工 程だが、重要なのは音を左右す る革張りだ。「革が切れるか切 れないかという、ぎりぎりのと ころまで思い切り引っ張らな いと、たたいたらすぐにたるん でしまう」。胴に鋲(びょう)を 打ち込んで革を固定し、余分 な革を切ると完成する。

 2年前から革作りにも取り 組み始めた屋良さん。太鼓の 胴に張る革は、牛皮をなめし、 太鼓の革に仕上げていく。皮や なめし方でも音は変わるとい う。「いろいろな先輩たちから なめし方を教わった。牛の皮を なめす作業から全部やるよう になっているので、自分が好き な好みの音が作れるようになっ エイサー太鼓の音色響け た」と語る。

 屋良さんが職人の道に入っ たのは2013年。同店がネッ ト販売に乗り出すことになり、 ネットの知識があった屋良さ んが同店で働き始めた。もの作 りが好きだったこともあり「結 局楽器を触る方が好きになっ て、すぐに製作するようになっ た」。7年前からは代表を任さ れるように。「(太鼓の技術は) 抜群です。三線もやがてやりま すよ」と祖父の新崎さんも太 鼓判を押す。

次の世代へつなげたい

 ネット以外にも、新しい試み を取り入れた。7年前には屋 良さんが考案した「めで太鼓」 の製作・販売を開始。太鼓の胴 に写真などを印刷した生地を 張った飾り太鼓で、商標登 録も認可された。100日 記念や100歳記念など の記念品や贈り物として 展開しているという。

 「壊れた太鼓の修理をし て、お客さんがそれを喜ん でくれるのがありがたい」とい う屋良さん。社会科見学に来 た小学生が後日メッセージを 送ってくれたり、近隣の小学生 や保育園園児が通りがかり に「頑張ってください」と声を 掛けてくれたりすることも励 みになる。

 「僕が一番若くてその上が 50 代。どうにか下をつくっていか ないと、沖縄で革を張れる人や 太鼓を作れる人がいなくなっ てしまう」と技術の継承にも思 いをはせる。

 エイサーの響きを聞くのは 毎年の楽しみだ。職人によって 釘の打ち方や革の質などが違 うといい「自分の太鼓は見れば すぐ分かる」とほほ笑む。引き 継がれた伝統の音がまもなく 街に響きわたる。

 (坂本永通子)



新崎太鼓三味線店 屋良祐輔さん

新崎太鼓三味線店
沖縄市泡瀬6-4-28
☎098-937-9400
営業時間10:00~18:00
定休日 日曜日
https://www.arasakitaico.jp/



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新崎太鼓三味線店 屋良祐輔さん
大小さまざまな太鼓が並ぶ店内に 立つ屋良祐輔さん。初代で祖父の新 崎松雄さんが製作した太鼓の修理 を手掛けたことも=沖縄市泡瀬の 「新崎太鼓三味線店」
写真・村山 望
新崎太鼓三味線店 屋良祐輔さん
工房で三線の弦を巻く「カラクイ(糸巻き)」を製作中の新崎松雄さん。 闘牛の骨を用いたオリジナルのもの
新崎太鼓三味線店 屋良祐輔さん
(上)天日干しされる牛の皮 (下)エイサー用の大太鼓の胴は、木材 を張り合わせて接着した後、旋盤機や紙やすりなどで形を整える。木 材は軽くて丈夫なものを使用( 提供写真)
新崎太鼓三味線店 屋良祐輔さん
屋良さんが開発した「めで太鼓」
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