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[No.1986]

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「表紙」2023年06月01日[No.1986]号

伊江島の作物で作る郷土料理
ウムガムチ

やわらかくスイート
島の知恵が生み出した一品を知る

 本部港から船で 30 分。伊江島は気軽に訪れることのできる離島だが、島外ではなかなか 目にすることができない郷土料理があるのをご存じだろうか。その名はウムガムチ。紅芋 やサツマイモで作った餅で、えんどう豆やそら豆のあんを包んだお菓子だ。島内で製造を する2業者を取材。そのおいしさや作り方、昔から伝わるお菓子への思いを聞いた。

 芋を練り込んだ餅で、あん をたっぷり包んだウムガムチ。

 軟らかい食感、上品な甘さ、 一緒に蒸されるサンニン(ゲット ウ)の優しい香りが魅力だ。現 在、購入することができるウム ガムチは3つのタイプに分けら れる。紅芋を使い、鮮やかな紫 色のもの。サツマイモを使った 白いもの。同じく白だが、ひと 回り大きめに作ったものは、行 事の際に重箱に詰めたり、仏壇 に供えるという。

 ウムガムチは、かつては島内 の各家庭で盛んに作られていた。作り手ごとにレシピが少 しずつ違い、その家ならではの 味があったようだ。しかし近年 では、餅をこね、あんを作り、大 鍋で蒸しあげる作業の煩雑さ から、作られる機会は減少して いる。そのような状況で郷土の 味を残し、伝えているのが今回 取材した2業者だ。

断面にタッチュー

 「伊江島農産物加工株式会 社」のウムガムチは、半分に カットすると、断面に伊江島 のシルエットが現れる。平坦な 島と中心にあるタッチュー(城 山)をイメージする形にあんが 詰められているのだ。餅のなめ らかな食感も魅力。紫色の餅 には紅芋「ちゅら恋紅」、白色 の餅にはサツマイモ「ちゅらま る」と、使用する品種にもこだ わっている。島産の紅芋をお菓 子用のペーストに加工するた め立ち上げられた同社は、その ノウハウを生かし、ウムガムチ 生産も始めたという。

 餅の成形作業は、機械を導 入して効率化する一方、生地の やわらかくスイート 島の知恵が生み出した一品を知る 配合や蒸しの工程は、熟練した 従業員たちの「職人技」に頼る 部分が大きいそうだ。

 近代的な設備を使いながら も材料は無添加。賞味期限は 1日なので「伊江島に来ないと 食べられません」と従業員・山 城美智子さんが笑顔でアピー ルしてくれた。

3世代で手作り

 「おばあのてづくり あん こもち」という商品名でウム ガムチを製造するのは、「大城 もち屋」。大城久子さんが約2 5 年前に立ち上げた製造所だ。 現在は嫁の春美さんが代表と なり、孫の嫁である彩さんも加 わり、3人で作業をしている。

 久子さんのレシピは、自身 の家族が作っていた餅を見て 学んだもの。「うちの両親は明 治生まれだけど、その年代の 人たちも小さいころから親し んでいた。もっと古い時分か ら作られているものだはず ね」。ウムガムチの歴史をうか がい知る情報を、さりげなく 教えてくれた。

 大城もち屋ではほとんどの 工程が手作業。紅芋やサツマ イモも自前の畑で収穫したも のだ。久子さんは「こんなに めんどくさいから、若い人た ちが作らんわけよ(笑)」と冗 談を飛ばすが、完成した餅に は、手間ひまかけたからこその 温かみを感じた。

 芋や豆など、島で取れる材 料を使い、先人たちが作り出し たウムガムチ。そのことを思い 浮かべ、春美さんは「伊江島の 昔の人たちはすごいと思うよ」 と感服する。歴史や暮らしの 知恵も混ぜ込まれた一品を味 わいに、島を訪れてほしい。 

(津波 典泰)



伊江島農産物加工株式会社
☎ 0980-49-2185
※「うむがむち」の販売場所は、伊江島物産センター、城山お土産品店、島村屋観光公園、工場直売

大城もち屋
※ウムガムチは「おばあのてづくりあんこもち」の名称で、伊江島物産センターで販売中



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ウムガムチ
ウムガムチとは芋を使った餅で、えんどう豆など のあんを包んだお菓子だ。島の外ではなかなか入 手できない一品を紹介しようと、ウムガムチを製 造販売する伊江島農産物加工株式会社の従業員 たちが集まった。(右から)山城美智子さん、下門 綾乃さん、知念鮎美さん、大城あゆみさん
写真・村山 望
ウムガムチ
伊江島農産物加工株式会社で製造されるウムガムチ。 紫のものは紅芋を、白色のものはサツマイモを餅に混 ぜ込み作られている。ひと回り大きいウムガムチ( 右 奥)は、島の伝統行事や法事に用いられるもの。同社で はカーサムーチー(左)の製造も行っている
ウムガムチ
大城もち屋「おばあのてづくり あんこもち」

家族でウムガムチ製造を行う大城もち屋。(右から)大城久子さん、春美さん、彩さん。 久子さんがウムガムチには「シブヤムチ」という別名があると教えてくれた。シブヤとは 絞る、の意味。豆のあんを絞り、水分を抜いていく作業から名付けられたようだ
ウムガムチ
ウムガムチを成形する大城春美さん の手元。餅を小判形にしてから、あん を包むのが、きれいな球形に仕上げ るコツなのだとか
ウムガムチ
伊江島農産物加工株式会社「うむがむち」

伊江島農産物加工株式会社の「うむがむち」 は、断面に伊江島のシルエットが見える。伝統 的なウムガムチは豆を使ったあんを使うが、同 社のサツマイモを使った餅(右)は独自にアレン ジ。紅芋を使ったあんで、見た目と味に変化をつ けている
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