沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1966]

  • (木)

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「表紙」2023年01月12日[No.1966]号

グルクンかまぼこの照屋 當山礼子さん

懐かしい母の味を求めて

 揚げたてのグルクンかまぼこを口に入れると、魚のうまみと香ばしさが口いっぱい に広がっていく…。那覇市の太平通り商店街にある「グルクンかまぼこの照屋」は、昔 ながらの製法でかまぼこを製造している。母の照屋ミツさん(76)が創業した同店を 継ぐのは四女の當山礼子さん(39)。一時は休業していたが、母から技術を学び、約2年半前に再開。多くのファンに愛されるかまぼこの味を守り続けている。

 まだ薄暗い早朝。明かりのと もる作業場を訪れると、當山 礼子さんが一人でグルクンかま ぼこ作りを始めていた。「お魚 はグルクンだけしか使っていな いのがこだわり」と言う礼子さ ん。ミンチにしたグルクンに少 量のつなぎを加えて練り、成型 したら、蒸して高温でさっと揚 げる。一つ一つの工程を手間暇か けて重ね、かまぼこの姿に変 わっていった。

休業を経てかまぼこ復活

 母・照屋ミツさんの始めたか まぼこ店を引き継ぎ約2年 半。「母の味を出すのに苦労し てきたけど、味はやっと落ち着 いてきました」と話す。久米島 出身のミツさんが同店を創業 したのは約 35 年前。久米島の 特産品、グルクンかまぼこを 作ってきた姉から技術を習得 し、子ども5人を育てながらか まぼこ作りに励んだ。四女の礼 子さんも子どもの頃から母の 仕事を手伝っていたという。ほ とんど手作業だった当時は「久 米島から運ばれてきた魚を家 族総出でさばいたりしていま した」と振り返る。

 2015年にミツさんが体 調を崩し、長年親しまれてきた店を約5年間休業した。そ の間、親戚に使ってもらってい た店舗が空いたことが転機に。 父・浩世さんが亡くなった後 で、ミツさんが落ち込んでいた 時期でもあった。経営業をいつ かやってみたかった礼子さん は、母に元気を出してほしいと いう思いも重なり「私がやるか ら一緒にやろう」と復活に乗り 出した。

 再開当初はミツさんが作っ ていたが、約半年後に一時入院 したことをきっかけに 礼子さ んが一人で作るように。「その時 期に食べたお客さんからは 『ちょっと違う』と言われまし た」。失敗を何度も重ねた。完 全に数値化されたレシピはな い。「母が目分量で続けてきた 意味がやっと分かってきて、奥 が深いなと思います」。グルクン の脂がどれだけ乗っているかで 入れる水の量も変わってくる。 でも目指すものは分かってい た。味や食感はもちろん、練る ときの音、揚げたときの油の音 も覚えている。「音が母の時と一 緒だったら、大丈夫だな」と確 信できた。そのうちに新規の客 が増え始め、気付いたら昔の客 も戻ってきてくれた。

 厳しい中にも優しさを感じ るという常連客にも支えられている。「『このかまぼこ作るの にどんなに大変か分かっている から、値段は気にせず頑張って ね』と言われたときには、見て くれている人もいるんだと涙が 出ました」。子どもの発熱や行 事で休業する時も「今は子ど もが一番。ゆっくりでいいから 頑張りなさい」と理解を示して くれる。

作るのも食べるのも好き

 金武町で田芋農家を営む実 さんと結婚した礼子さん。現 在は金武町に住み、畑作業も 行う。7歳と5歳の息子の子 育て真っ只中だが、夫・実さん や家族の協力のおかげで続け 懐かしい母の味を求めて てこられた。店頭には夫の畑で 取れた田芋の唐揚げも並ぶ。 母の作る惣菜も人気だ。「田芋 もかまぼこに似ている。どちら も沖縄独自のもので手間暇が かかるけど、こんなに良いもの だよというのを伝えたい」と話 す。

 子育てが一段落したら、営業 日を増やし、新商品を生み出 していきたいという。かまぼこ の魅力を聞くと「地味だけど 本物。体にも良いものだし、昔 から飽きられないで食べられて いるのも魅力。でも何よりも作 るのも食べるのも好きなんで す。難儀もしている分、喜ばれた らうれしい」と笑顔で話した。

(坂本永通子)



【イベント 出店情報】金武町物産展
日時:1月18日(水)~20日(金)11:00~19:00(最終日は18:00まで)
場所:パレットくもじ前広場

グルクンかまぼこの照屋
那覇市壺屋1-1-1(太平通り商店街内)
☎ 080-6494-9240
営業日:金曜・土曜
営業時間:12:00~15:00
※金武町並里区売店でも販売(冷凍)

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グルクンかまぼこの照屋
店頭に立つ當山礼子さん。田芋の唐揚げや玄米 ジュース、母・照屋ミツさんの作った総菜も並 ぶ=那覇市壺屋太平通り商店街の「グルクンか まぼこの照屋」
写真・村山 望
グルクンかまぼこの照屋
ミンチ状のグルクンを機械で練る。機械は 母の代から約30年使い続けている
グルクンかまぼこの照屋
指の腹で表面をさっとなでて一つ一つ成型する
グルクンかまぼこの照屋
蒸して少し冷ました後、高温でさっと揚げ 色付けする
グルクンかまぼこの照屋
かまぼこは皮入りと皮なしの2種類。魚の うまみがより強い皮入りは一番人気だ。冷 めたら両面に少し焦げ目が付く程度に焼 いて食べるのがお勧めだという
グルクンかまぼこの照屋
店頭には、礼子さんお手製の玄米ドリ ンクや田芋の唐揚げも並ぶ。母の作っ た総菜も人気
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