沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1964]

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「表紙」2023年01月01日[No.1964]号

Kafuu(カフー)のある年を願って
HY

新年号特別対談 HY

 うるま市東屋慶名の地で結成され、日本の音楽シーンの第一線 で活躍するHY。全国的に有名になった現在も、メンバー全員が 沖縄に居住し、地域に根差した音楽を発信している。昨年は新ア ルバムを発表し、新年もフェス開催など話題の絶えない4人。イ ンタビューを通して、沖縄愛にあふれ、多くの人に親しまれる彼ら の魅力に迫った。

ーHYにとって2022年は どんな年でしたか?

新里 2022年の大きな出 来事は、コロナ禍で延期にな っていた『HANAEMI』ツア ーがやれたこと、そしてアル バム『Kafuu』をリリースし たことですね。ツアーは動員 制限がかかってお客さんが半 分しか入れないし、早く元に 戻ってほしいなというもどか しい中でライブをやってきま した。ただライブは週末だけ なので、その分沖縄にいる時 間が長く取れたんですよ。普 段の生活をしながら曲が作れたから沖縄愛の強いアルバム ができたのかなと思います。 僕たちにとって特別なアルバ ムになりましたね。

仲宗根 最終的にはHYらし い、沖縄が大好き! という 沖縄に対する愛情が出ている 曲も多くて。出来上がってか らみんなで、沖縄から幸せや 愛を届けるアルバムにしたい と話していましたね。

ー沖縄方言をタイトルにする のも初めてですよね。

名嘉 そうですね。沖縄では ホテルとか食堂の名前とか、 いろんなところで見かける言葉。"果報は寝て待て“の果 報のことを沖縄方言で„カフ ー“というんですけど。調べ たら、良い知らせを運ぶとい う意味もあるのでいいなと思 った。今は世界情勢も不安定 だし、悲しい出来事も多かっ たりする。コロナもまだ収ま っていない中でHYの曲を通 して幸せを共有したり、届け ることができたらという想い でこのタイトルにしました。

ーHYは、結成から地元沖縄 で生活しながら、沖縄から音 楽を発信しています。なぜ島 を離れずに、沖縄から音楽を 届けているのでしょうか?

新里 沖縄にはすごい魅力が あって。僕たちが生まれ育っ た、世界に誇れるぐらいの美 しい海や美しい自然に囲まれ た沖縄のことを歌にしていき たいと思っているので。この 沖縄の魅力を、地元に暮らし ながら表現していきたいって いうのは、HYを始めた時か らずっと変わってないです ね。

名嘉 音楽って音を楽しむも のなので、好きな場所で音を 作り続けるのがミュージシャ ンとしていちばん大事な部分 かなと思っているんです。沖 縄じゃなくて、東京に住んで 音楽を作るとなったら、たぶ ん誰かすぐに逃げ出すはず (笑)。

仲宗根 沖縄にいる意味というか、いたくなる理由は、も ちろん家族とか友だちがいる こともあるし、沖縄時間じゃ ないけど、ナンクルナイサー の時間というか、緩い時間も あっての緩い会話が好きだか らだと思うんです。それに犬 の散歩をしながら細い路地に 入ると、今でも子どもの頃の 冒険心が蘇ってくる。この道、 沖縄っぽいなとかね。そうい う時間の使い方とか時の流 れ、県外にいたら多分自分の 心の中でそういう感情は湧き 起こらないと思う。前に3、 4カ月レコーディングでみん な一緒に東京に滞在したこと があるけど、どうしても自然 が恋しくなるし、人が恋しく なってくる。やっぱり曲を作 ることも活動することも沖縄 が活力になっているなと思い ます。

ー沖縄で生活するからこそ生 まれる曲、音楽がある。それ がHYらしさに繋がっている ということですね。

仲宗根 もちろんです。県外 に行ったら音楽を作ることが 多分できないと思う。それは カバが水浴びしたいのに、水 がないから、どんどん干から びていって皮が硬くなってく ようなもの(笑)。

許田 なにカバって(笑)。

仲宗根 カバって水浴びして いる時、生き生きしているで しょう。今まで当たり前にあ ったものがないっていう環境 になると、多分相当苦しくな って曲も作れないような息詰 まった状況になると思う。

ーこれからも沖縄から発信し 続けるということですね。

仲宗根 はい。コロナになっ て、日常に触れる時間も多く なったから、娘と向き合う時間もできたし、散歩やドライ ブしながら山に行ったり、今 までやってなかったダイビン グとか、今まで沖縄にいたの にやらなかったこと、見てこ なかったものを吸収するよう になったので、またそれを曲 に還元したいなっていう風に 思っていますね。

ーHYは、沖縄の子どもたち に何を伝え、何を残していき たいと思っていますか? H Yが続けているHeartY活動 も次の世代に繋げたいメッセ ージのように思うのですが?

名嘉 HeartY活動は、いろ いろな活動をしているんです けど、例えばビーチクリーン のプロジェクトは、もっとも っときれいな沖縄を残してい こうっていうことから始めま した。子どもたちは生まれた 時から沖縄の青い空、綺麗な 海は当たり前にあるものだか ら、何で誰かが捨てたゴミを 拾わないといけないのかって いうのもあるはず。前にイズ が言っていた「誰かのゴミを 拾うっていうポジティブな気 持ちで拾っていったら、もっ と豊かな気持ちになれる」と いう話を聞いて、自分も最近 はビーチクリーンの時に子ど もたちにその話をするように しています。楽しく教えてい けたらいいなと思っています ね。

ー次の世代に繋げるという意 味では、「SKY Fes」もそうだ と思うんです。県外のアーテ ィストの音楽に触れる機会に なるフェスだと思うから。3 月に行われる「SKY Fes 2023」 への想いを聞かせてください。

新里 HYは 23 年目になるん ですけど、ここまで続けてき たからこそ自分たちの強い土台ができたんだと思う。作り 上げてきた確かなものがある から、自分たちの憧れのアー ティストさんに声かけた時に 快諾してくれたと思うんです ね。沖縄の子どもたち、そし て沖縄のみんなにすてきなア ーティストを見て喜んでもら える窓口を作れたことがすご く嬉しいですね。クオリティ ーが高いすてきなバンドを見 てもらうのが夢だったので。 いつか内地からも世界からも たくさんのアーティストが 「SKY Fes」に出たいと言っ てもらえるようなフェスにし ていきたいと思っています。 自分たちの生まれ育った沖縄 の伝統芸能も、そこに取り入 れてやっていきたいというの も僕たちらしいフェスだと思 うから。親も子どもも、世代 を超えて思いきり楽しめるフ ェスを目指したい。そして今 回新たに、子どもたちが参加・体験できる企画にもチャレン ジします。HYにしかできな い、温かくてアットホームな、 元気になれるフェスにしたい と思っています。

許田 僕も今まで見たことな いアーティストの皆さまがい らっしゃるので、そのステー ジが本当に楽しみですね。世 界一クリーンなフェスでやっ ていこうというテーマもある ので、もちろんゴミのポイ捨 てはNGです。本当に参加し てくれるアーティストの皆さ んも楽しんでもらえるような フェスになったらいいなと思 うのと、あとイズさんの飾り 付けも楽しみにしています。 自腹でやってくれているの で。

仲宗根 会場の装飾はほぼや ります。それが自分でも楽し み。会場に来たら、それが伝 わるかなって思います。

ーHYにとって沖縄とは?

仲宗根 HYにとってという か、私にとって沖縄は、母親 のような存在。母体というか、 そこから生まれ、そこがない とやっていけないというか、 そういう存在ですね。

名嘉 (かぶせて)僕も母で すね。冗談です(笑)。一言で 言うのは難しいけど、かけが えのない自分が自分らしくい られる大切な場所ですね。

新里 (さらにかぶせて)母 ですかね(笑)。大好きな沖縄 の歴史を知ることによって、 もっと深く好きになれるのか なと。沖縄には悲しい事実と かもあったので、歴史を勉強 しながら、大切にしていきた いって思う島ですね。

許田 自分を作ってくれてい る場所なので、母ですね、や っぱり(笑)。すごくリフレッ シュできる場所でもあります し。都道府県いろんな所に行 ったんですけど、沖縄しかこ んな長く住んだことないの で。なんでしょう、宇宙規模 では地球といいますか…。

全員 それってデカすぎるだ ろ!(笑)

信介 だから、ほんと、なく てはならない場所です。

ー最後に、2023年はどん な年にしたいですか?

名嘉 2022年は、どのア ーティストも行動が抑制され ていた分、ハングリーだと思 うんですよ。HYも、めちゃ くちゃやりたいことがたくさ ん出てきているので。いろん な分野、いろんな角度からエ ネルギッシュに突き進んでい きたいです。2022年以上 に、沖縄にラブを届けていき たいし、楽しい2023年に なれたらいいなと思っていま す!

( 取材・文/伊藤博伸)



HY

【profile】
 2000年の結成から今年23年目を迎える沖縄を代表するロックバンド。バ ンド名は、出身地・うるま市東屋慶名の地名(Higashi Yakena)の頭文字から 命名。メンバーは新里英之(Vo&Gt)、名嘉 俊(Dr)、許田信介(Ba)、仲宗根 泉 (Key&Vo)。2003年に2nd AL『Street Story』をリリースすると、インディーズ としては史上初のオリコンチャート初登場&4週連続1位という偉業を達 成し、ミリオンセラーに。以後、2022年9月の新作『Kafuu』まで15枚のアルバ ムをリリースし、累計で600万枚超のセールスを記録している。これまで4度 の全国47都道府県を回るライブツアーや全国アリーナツアーを敢行。2007 年からは海外ツアーもスタート。カナダ、アメリカの主要8都市、台湾、韓国 でも実施。また2011年からは地元・沖縄でHY初の主催イベント『SKY Fes』を 開催。2023年3月で4回目を迎える。「More Local,More Global」をテーマに、 HYは地元から県外、海外へと音楽を発信している。

HY SKY Fes 2023 & 前夜祭
会場:沖縄県総合運動公園 多目的広場
【前夜祭】2023年3月17日(金)
開場16:00(キャンプ利用者のみ12:00)/開演18:00
【DAY1】2023年3月18日(土) 開場10:00/開演12:00
出演:HY/青山テルマ/ORANGE RANGE/スキマスイッチ/當山みれい/ナオト・インティライミ/FUNKY MONKEY BABY’S/MASA MAGIC
【DAY2】2023年3月19日(日) 開場10:00/開演12:00 出演:HY/あいみょん/OAU/肝高の阿麻和利/Def Tech/Hilcrhyme/緑黄色社会/MASA MAGIC
(問い合わせ) BEA 092-712-4221(平日 12:00~17:00)
PM AGENCY 098-898-1331(月~木 11:00~14:00)

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HY
新年あけましておめでとうございます!  新年号の表紙を飾るのは、県出身のロックバンド、 HYの皆さん。今年で結成23年目。エネルギッシュに 活動を続ける4人のインタビューをたっぷりとお届け します。【写真右から】名嘉俊さん(ドラム)、新里英 之さん(ボーカル・ギター)、仲宗根泉さん(キーボー ド・ボーカル)、許田信介さん(ベース)
※カフーとは方言で「果報」のこと。HYが昨年発売したアルバムのタイトルになっている
撮影協力・デポアイランド  写真・喜瀨守昭
HY
ボーカル・キーボード 仲宗根 泉さん(左) ボーカル・ギター 新里 英之さん(右)
HY
ドラム 名嘉 俊さん(左) ベース 許田 信介さん(右)
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