沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1949]

  • (木)

<< 前の記事  次の記事 >>

「表紙」2022年09月15日[No.1949]号

レジェンドバンドの軌跡が映画に!
『紫 MURASAKI~伝説のロック・スピリッツ~』MURASAKI

ドキュメンタリーが上映される幸運に感謝

 結成から52年の間に、幾度かのメンバーチェンジや解散を経て、2007年に現在のメンバーで 再結成した紫。本土復帰前の沖縄で活動を始めた背景やメンバーの個性、また演奏技術やパ フォーマンス力の高さ、ブリティッシュハードロックを感じさせる楽曲の魅力で、注目を浴びて きた。日本を代表するヘビーメタルバンド、LOUDNESS(ラウドネス)や聖飢魔II(せいきま つ)らのメンバーにも大きな影響を与えてきたという。そんな証言や刻んできた歴史を記録した 映画のこと、また思い出について、6人の話を聞いた。

 活動を記録した映画の完成 を喜ぶ6人のメンバー。

 「子どものころ住んでいた沖 縄市八重島、通称ニューコザの 街をロケで訪ねました。戦後は 繁華街で、お店のジュークボッ クスから流れる外国音楽を聴 いて僕は育ったんです。今では 思い出の場所が消え残念です し、我々の活動も忘れ去られる かと思うと寂しい。でも映画と して残ることを、うれしく思い ます」(チビこと宮永英一さん)

 「映像を見ると懐かしくて 涙が出そう。初めて人前で演奏 した高校の時のエレキ大会、サ ラリーマン時代も思い出しま した。1978年に一度解散し たので、その後約 30 年は音楽か ら離れていたんです。紫に戻っ て、またギターが弾けるのは喜 びしかありません」(下地行男 さん)

 「 70 歳過ぎても音楽を続け ているとは思ってもいませんで した。有名ミュージシャンが出演 してくれたドキュメンタリー映 画ができて、本当にうれしいで す。今年は復帰 50 周年で、母校・ 宮森小学校の米軍機墜落事故59 年)も思い出しました。一瞬 のタイミングで自分は命拾いし ましたが、友達は亡くなってい るんです。運が良い人生だと感 じます」(比嘉清正さん)

 「高校時代を過ごした久場 崎ハイスクールを訪ねたら、当 時弾いていたピアノがまだあっ たんですよ。卒業前に植えたモ クマオウの木も残っていました し、 50 数年ぶりの再会でした。 そのシーンや数々の思い出を映 画に記録でき、感動と誇らしい 気持ちでいっぱいです」(ジョー ジ紫さん)

活動や思い出を記録

 2007年に新メンバーと してJJさんとChrisさんが加 入。現在の6人の形となった。 「ジョージとチビとは別のバン ドで活動をしたので、 40 年以上 の付き合いです。紫の曲は激し いロックで僕の声には合わない と思っていましたが、『MOTHER NATURES PLITE』を聴 き、こういう曲なら歌いたいと 思い入りました。バンドの歴史 を追う映画は楽しいですし、た くさんのサポーターに支えら れラッキーです」(JJさん)

 「僕にとって5人はお父さん のような存在(笑)。でも音楽 界の大先輩であるラウドネス さんやデーモン閣下さんたち が紫に憧れたと話すので、その バンドに在籍する自分のポジ ションを不思議に思います。5 人の何気ない会話からもいろ んな話題が出てくるので、生き た歴史と思えメディアに残す 必要性を感じてきました。映 画に記録でき大満足です」 (Chrisさん)

 今回のインタビューでは、他 にも興味深い話が飛び出した。

 高級ホテルに宿泊した東京 でのレコーディング秘話、本土 では外国人アイドルのように 黄色い歓声があがった事、沖縄 市のライブハウスには未成年を 取り締まるため機動隊が駆け 付けた事…。楽器は国内で調 達するより安価な香港で購 入。だが電気楽器のハモンドオ ルガンは電圧や周波数の規格 が異なり、調整に苦労した話 も聞いた。沖縄を出て活躍して いた、彼らだからこその貴重な エピソードだ。

全国ツアーの前に映画上映

 今後についても聞いた。

 「6年前、アルバム発売記念 のツアーの時に北海道でオフの 日をつくりました。メンバー全 員で次にいつ来られる か分からない、特別なオフになったと思います。現在 ニューアルバム制作中ですので、 完成後にツアーを計画したい と思います」(Chrisさん)

 「デビュー当時、沖縄に次い でレコードが売れたのが北海道 でした。気候が良い時期に行っ て快適に過ごしたので、また行 きたいですね」(ジョージさん)

 「昔ライブに来てくれた方に もあいさつできる、全国ツアー を開催するのが夢です」(下地 さん)

 「まずは映画をご覧になって ください。音楽界やバンド活動 の角度から戦後の沖縄を映し 出す作品です」(宮永さん)

 本作を鑑賞することで紫世 代のファンは青春を重ね、若い 世代はコザロックの魂を感じ る、そんな機会になりそうだ。

(饒波 貴子)



レジェンドバンドの軌跡が映画に!紫

『紫 MURASAKI~伝説のロック・スピリッツ~』
2022年/日本/©株式会社エコーズ
監督:野田孝則/出演:紫/特別出演:高崎晃・二井原実・山下昌良(LOUDNESS)、PATA(X JAPAN)、影山ヒロノブ(アニソンシンガー)、デーモン閣下、BEGIN他
http://murasaki-movie.jp
16日(金)からシネマQ、ミハマ7プレックス、シネマプラザハウスで上映
※17日・18日・19日・25日は舞台あいさつを予定。詳細は公式サイトを参照。



このエントリーをはてなブックマークに追加



レジェンドバンドの軌跡が映画に!紫
1970年結成。県内中部のコザ市(現沖縄市)のクラブなどを中心 に演奏し、活動を広げていったロックバンド「紫」。70年代後期には 本土進出も果たし、日本のロック界に新風を吹き込んだ。2007年 に現メンバー6人がそろい、結成から50年を超えた現在、ニューア ルバムの制作に取り掛かるなど活動中だ。そんな彼らの軌跡を 追ったドキュメンタリー映画が完成。県内を皮切りに全国上映を控 えている=沖縄市・ライブハウス「セブンスヘブン」
(写真右から)比嘉清正(ひが・きよまさ)さん・ギター/下地行男(しもじ・ゆきお)さん・ギター/宮永英一(みやなが・えいいち)さん・ドラム
ジョージ紫(むらさき)さん・キーボード/JJ(ジェイジェイ)さん・ボーカル/Chris(クリス)さん・ベース
ヘアメイク・小渡 あかり 写真・村山 望
レジェンドバンドの軌跡が映画に!紫
(左)ジョージ紫さんと宮永英一さん
レジェンドバンドの軌跡が映画に!紫
(左より)Chrisさん、JJさん、下地行男さん、比嘉清正さん
>> [No.1949]号インデックスページへ戻る

↑このページの先頭へ戻る

<< 前の記事  次の記事 >>